ぼんやり令嬢と再度の謝罪
前の更新から間が空きすぎてしまい申し訳ありません・・・。
「えぇと……」
うなだれる伯爵をみて狼狽える私に、レベッカ様はいつものように優しく微笑む。
「あぁ 大丈夫ですよ」
……うん、何がかなぁ?といいたい気持ちをぐっと押さえて、レベッカ様の笑顔につられて微笑むとこれまた見慣れた人物が現れた。
「フルストゥル嬢」
「バーナード様 ごきげんよう」
「どうも」
バーナード様もレベッカ様同様、騎士服に身を包んでいたが、レベッカ様よりもやや装飾が少ないのは、動きやすさ重視といったところだろうか、それにしても、こうやってお二人が並ぶとレベッカ様が美貌の騎士、バーナード様は強面の騎士って感じで、バランスがとれてていいなぁ。なんか物語とかに出てきそう…と、ホクホクいろんな妄想を温めていると、レベッカ様は少し意地悪な笑みで、バーナード様に詰め寄る。
「あらバーナード様、大事に取っておくっていってたのに、フルストゥル様から貰ったタッセル、着けてるじゃないですか」
「……礼儀です」
少し間をおいてから答えるバーナード様は、私を見ることなくそう言い切った後、気まずそうに私をみたが、正直作った本人が気にしてないんだから、そんな顔しなくていいのに、という思いと、張りつめていた緊張感がほどけてきているせいか、自覚があるくらい、力の入っていない表情と声で受け答えた。
「おぉー、ありがとうございます」
「相変わらずですねぇ」
「はい?」
レベッカ様が、よくニーチェさんが浮かべるような苦笑をしたが、その理由が分からないまま首を傾げていると、少し時間が経ったせいか、いろんなところから気合の雄たけびが聞こえてきた。
「そろそろ ですかね」
レベッカ様がそう呟くのと同時にバーナード様も頷いた。
確かに、少し目を凝らすと、ギャラリーの方々や商人の方々、いろんな業者の方々が入っていくのが見え、視線を戻し、二人にもう一度声をかけた。
「お二人とも、気をつけてくださいね」
「はい、フルストゥル様も無理しないように」
「ありがとうございます。お気をつけて~」
レベッカ様の言葉に頭を下げつつ、少し緊張のせいか、固まっているバーナード様にもそういうと、バーナード様も丁寧に頭を下げてくれた。
えぇそれはもう深く深く、相変わらず礼儀正しいを超えて、真面目だなぁと心の中で苦笑した後に、手を振ってきた道をゆっくりと戻ろうとすると、確かに、先ほどよりも人通りが多く感じられた。
「おや 君は」
少し歩くと、木にもたれかかって休んでいたジョシュア様と目があうも、その表情は、どうして君がここにと言いたげな表情を浮かべていた。
そんな表情を浮かべているジョシュア様は、やっぱり騎士服だけれど、黒地の生地に映える装飾に、ジョシュア様の美貌とのコントラストは、流石としか言えないが、疑問に答えるべく口を開いた。
「ジョシュア様……先ほど同級生に会いにいってて……」
「そうか 門のところまで送ろう」
「ありがとうございます……でも準備とか大丈夫ですか?」
私の疑問にふわっと優しく微笑むと、ジョシュア様はまさに優しい上級生、といった感じでそこにはもう、初対面の時に向けられた敵意などは、微塵も感じられなかった。
「あぁ、丁度終わって散歩していたところだ。問題ない」
「では お言葉に甘えて」
確かに、人も多いし断る理由もないしなぁと頷いて、門まで行くことにした。
「そういえば ここで君に助けられたんだったな」
「あぁ……」
そんなこともあったなぁ、とまるで遠い過去を思い返すような気持ちだけれど一年、いや一か月もたっていないことに、驚いてしまった。
本当に、アイン様の目に留まって側で働くようになって、毎日が濃すぎる故かなぁと、しみじみしていると、急にジョシュア様が立ち止まった。
「ジョシュア様?」
「初めて会った時……。あのような態度を取って申し訳なかった」
「いやいや大丈夫ですよ。謝罪はもう受け取ってますし、もう気にしてませんし」
「……いや、あの態度は今思いだしても許されていいものではなかった……。この通りだ」
「えっとぉ……頭上げてください」
あまりにきれいすぎる礼と、その勢いに気圧されながらもなんとか声を、大分頼りない声だが絞り出した。
「君は優しいな」
ようやく頭を上げた後にジョシュア様がそういうも、反射的に言葉が出てきた。
「優しいのは、ジョシュア様です」
「え?」
意味が全く分からない、といった顔をしたジョシュア様を見て、あぁこの人は本当に真面目なんだなぁ、と納得した後に、いろんなことを思い出して、何でもないような声色で答えた。
「……もっとひどい言葉をずっとかけられてましたから」
「レヴィエにか?」
「まぁ そうですねぇ」
正直、もうどうでもいいやと思えるくらいには遠い過去だし、とっくに肩は治っているけれども、未だにこういった時に思い返してしまうのは、一度も謝罪なんてされたことがなかったからだろう。
それだけ、謝罪というものの有無は、大きいんだなと感心してしまった。
いやぁ、相手を傷つけたら謝るって大事ねぇ、と、まるで井戸端会議してる雰囲気で、心の中でつぶやいていると、またジョシュア様が黙ってしまった。
「辛くはなかったのか?」
「辛い?……うーん、まぁ全部が全部嘘でもないですし」
「え?」
ジョシュア様は、驚いた表情で、何度も瞬きしたまま私をじっと見ていたが、何をそんな驚いているんだろうと、言う気持ちで口を開いた。
「辛気臭いし、田舎っぽいとか陰気だとか、あと贈り物のセンスがないとか、人見知りなのもそうですし、頭も悪いですしねぇ」
本当、図星過ぎて怒りを超えて、悲しくもなるよこれは、と自分で言っててむなしくなり、思わず虚空を見上げてしまった。
「……そんなことは」
「あ、大丈夫ですよ?母親にもよく言われてましたし」
「大丈夫……って…」
本当にこの人は、善良な人間なんだろうなぁと感心しつつ、このまま何か、根掘り葉掘り聞かれるのもなぁ、という思いから、作り笑いを浮かべた。
「まぁ 気にしないで下さい。じゃあ、送ってくれてありがとうございました。お怪我に気をつけてくださいね」
「あ……あぁ、君も 気をつけて」
呆気にとられているジョシュア様を横目に、貴賓や王族らの休憩所へ戻ろうと、門を開けてもらおうとするも、ちょうど門番が休憩しているのか誰もいなかった。
「ふんっ…………」
頑張って門を開けようとするも、びくともしない様を見て、ジョシュア様は少し笑いかけながらも、さっと真面目な顔に戻り淡々と答えた。
「無理があるんじゃないか?」
「ですよねぇ」
「ちょっと待っててくれ」
ジョシュア様が人を呼びに行こうとしたその時、門が開いた。
見上げると、灰色の髪をした男性……。服装を見るに、おそらく門番である男性が、無言で開けてくれていた。
「……あ、ありがとうございます。すいません。休憩時間でしたか?」
「……」
男性は、口を開かないかわりに首を横に振った。
まぁ、あまり人とはしゃべりたくないお方なのかな?と気にも止めずに、もう一度頭を下げジョシュア様とも別れ、門の中へ入ると、ニーチェさんが迎えに来てくれていた。
「ニーチェさん」
「よかった。そろそろ迎えに行こうと思ってたんだ」
「心配かけてごめんなさい」
「ん、いいよ。じゃあ行こうか」
ニーチェさんがいいながら差し伸べた手を握るのを、何故か門番さんが、じっと見ていたのが気になったけれど、そのままアイン様の元へと戻った。
「……フルストゥル……」
その呟きは誰の耳にも聞こえることは無かった。
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