ぼんやり令嬢は間近で下らない揶揄を見るそうです
メリークリスマスです~
最近本当にあほみたいに寒いので体調お気を付けください~
「むしろよく小さい頃は仲良しだったよな」
「子供は無垢ですからねー」
お兄様は、遠い目をしている私に、何とも言えない表情を浮かべたあと苦笑した。
「一応俺たち、まだ大人ではないけどな」
そこまで子供でもないけれど、と付け加えた後に、お兄様はわざとらしく、ジュースの入ったグラスを傾けた。
「一応ですけどねぇ」
「さて、俺はツイ姉様探して来るよ。最近会ってなかったし」
「はぁい」
お兄様が去った後に、ニーチェさんはしみじみと呟いた。
「本当、フルル達兄弟は仲良しだよなぁ」
「よくいわれます」
主に、気性がものすごく穏やかなお姉さまは、年が離れているせいか、お兄様と私に優しくしてくれるし、お兄様と私は、年が近いからもっと喧嘩とかするかと思いきや、性格と趣味が反対すぎるのと、私があまりにも大人しすぎて、喧嘩のけの字も出てこない程、仲がいいとは思うけど、ニーチェさんは、すこし羨ましそうにつぶやいた。
「いいよなぁ兄弟、俺も親戚おおいけど、多分違うだろうしな」
「どうなんでしょうねぇ」
うちもたまにしか親戚には会わないしね。謝肉祭のときと、年越しくらいかなぁ、あと避暑に来るかとかなぁと、ぽやぽや考えていると、何やら、ちょっとした人だかりができているのが見えた。
「なんだろうな」
「はちゃめちゃ美人さんがいるとか?」
「アイン様差し置いて?」
「うーん……」
そういわれると何も言えないと思い、唸りつつ耳を澄ましていると、その先には、やや危惧していた声が、おもに、いがみ合いのような声が聞こえた。
「おやおや、ブランデンブルク侯爵じゃあないですか?奥方の調子はよろしいので?」
「そういえば、最近自慢の息子を見ていない気がしますが……」
「おや?そのスーツは以前も着てましたよね?同じ服には袖を通さないのでは?」
うわぁ、といいたくなるくらいに、それは今まで侯爵が、歯牙にもかけてなかったものたちへかけた言葉が、そのまま返ってきたのだから。
……え?なんで知っているかって?
まぁ、たまぁにパーティーにご一緒してましたからね、嫌々ですけど……。
当時は、なんで王室派であり、保守派な家柄の私を新興派の集まりに連れてくのか疑問だったけど、あれも結局、王室派の貴族を味方につけたことを、見せつけたかったのかなぁ、というのが、わかってもやもやしつつも、他のパーティーならいざしれず、国を挙げての大切なお祭りの時に、くだらない喧嘩、やめてほしいなぁ……。
ダイアン様はじっとこらえているけれども、あまりにも空気が悪すぎる。
国外の方々がこれを見て、キャシャラト人はよってたかって人を貶めるのか、なんて思われたら、とんでもないイメージダウン……。
でもここで、私やニーチェさんが間に入ると、また変な雰囲気になる。はたから見れば、ブランデンブルク破滅のきっかけですしね、私。
やったことは、証拠集めて弁護士事務所いって、正規な手続きで、婚約破棄しただけなんですよ……。
基本的には、その後レヴィエ様がしつこくて、その都度対処はしましたけどね。
逆を言えば、レヴィエ様が婚約破棄以降、何にもこちらに干渉しなければ、ブランデンブルグは少しの間、やや節約をする程度で済んだのに、やれフィリア様が、ロゼットロアのガーデンパーティーでやらかすわ、何故かレヴィエ様は付きまとうわ、そもそも、高すぎた金銭感覚のせいか、消費がそもそも抑えられなかったり、もうしっちゃかめっちゃか過ぎて、あまりにも砂上の楼閣すぎない?むしろ砂のほうが頑丈なまでない?
そこまで考えながらも、さて、この状況どうしたものかと、もう一度状況に向き直っていると、上品なため息が聞こえた。
「全く、にぎやかだと思ったら……」
にこやかな表情だがくだらない、と聞こえてきそうな口ぶりだが、それを咎めるものは誰もいなかった。
それを許してしまうくらいに、ヴィクトル・ロゼットロア様は美しかった。
それだけでなく、ロゼットロアは、キャシャラトの中でもかなり力をもっている。
流石、シャロのお兄様、圧倒的なカリスマを前に、年上の方々をも黙らせてしまっているのを見て、やっぱり争わないんだね、血。としみじみ痛感していると、ヴィクトル様は淡々と彼らに告げた。
「あなた方の気持ちもあるんでしょうけど、今日は国外の方も来ています……。この意味わかりますね?」
ヴィクトル様がそういうと、ダイアン様を揶揄っていた方々が押し黙り、今度はダイアン様に向け口を開く。
「貴方も、日ごろから発言には気を付けたほうがいいかと、いつ、足をすくわれるかわかりませんから……」
「……肝に銘じます」
そうして、ダイアン様に群がっていた悪意の渦は、あっという間に霧散し、いつのまにかそれらはヴィクトル様を賞賛する雰囲気になっているのを見て、ここの方々、手のひらくるくるどころじゃなくて、ぎゅいんぎゅいんじゃないですか……。
なんならなんか部品でも挟まっているんじゃないですか?ってつっこみたくなってしまったが、そこをぐっと堪えた。
「久しぶり、フルストゥル嬢」
「ヴィクトル様もお元気そうで」
きっとヴィクトル様的には、妹の友人に挨拶した程度なんだろうけど、お陰さまで、皆様の視線は一気にこっちを向いてきたのには、冷や汗が出た。
「そうか、伯爵令嬢とロゼットロア公爵令嬢は友人だったな」
「でも、あの気難しいヴィクトル様が、わざわざお声かけするなんて」
「確かに……」
アッーーーまずいです これはまずい流れです……。
勘違いしないでください皆様、何もないんですよここの間に、と声を大にしたいけど、できないのが辛いところ。
何が一番問題って、ヴィクトル様が、これらの視線と空気に、気づいているのかという点なのだけれど、頭も目もぐるぐるしていると、ヴィクトル様は軽くため息をついた。
「私が妹の友人に挨拶するのが、そんなにおかしいか?」
そう振り返ると、ひそひそと話していた貴族たちは一瞬にして押し黙ったが、ヴィクトル様は苛立っていたのか表情を変えずに続けた。
「そういった下卑た噂話をする前に、することがあるんじゃないか」
……はい、杞憂でしたねぇ 流石シャロのお兄様。
穏便に済まそうとか、そういう生ぬるいことはしない。徹底的に、敵は潰すってところでしょうか。先ほどまで、うわさ話に華を咲かせていた方々を一瞬で黙らせたのには、本当に、ロゼットロアの血筋をひしひしと痛感したのだった。
「すまないなフルストゥル嬢。これからも妹と仲良くしてくれ」
「ぁえ……はい。とんでもないです」
動揺のあまりかなり噛んでしまったが、それをさらっと流し、ヴィクトル様は、ニーチェさんの方へ振り返った。
「ハイルガーデン男爵子息も、私と彼女はそういった関係ではないので、彼女を疑うことは、しないでいただきたい」
「大丈夫ですよ。それより、流石ですね」
「うちは公爵家だから、ああいった手合いには慣れているんです……では」
そうして、颯爽とヴィクトル様が去った後に、私とニーチェさんは、ヴィクトル様の後姿を見て二人同時に。
「「ヴィクトル様強すぎない……?」」
と呟いたが、幸いだれにも聞かれていない様子に、心から感謝するのであった。
それにしても、流石大きなパーティーといいますか、人が多ければ多いほど、色々あるのだなぁとしみじみ思いつつ、じわじわ迫りくる胃痛の気配を、感じずにいられなかった。
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