ぼんやり令嬢とレイラント皇帝と皇后と
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「メギツネ……?今、フルストゥル嬢のことを、メギツネといったのか?」
ギャラン様は、信じられないものを見るかのような表情でそう問うと、ロイエンタール皇帝は淡々と告げた。
「そうだろう?今も現に、こうやって王族に、媚び売ってるではないか」
……今の私とギャラン様の会話、みてなかったのかなぁ……。
そもそも、まぁないけど、私とギャラン様が幼馴染の可能性とか、婚約者の可能性とかもあるというのに、一体全体、どんな先入観なんだろう、と呆れて笑いがこみ上げるのを抑えていると、ギャラン様が笑い出した。
「はっはっは、フルストゥル嬢が?メギツネ?ないない、何を勘違いしているんだか」
もはや隠すことなく笑いつつギャラン様は続けた。
「俺とフルストゥル嬢は、学院では同じクラスだし、俺は、学院では皆にギャランと呼んでもらってる。なにも彼女だけが特別じゃないよ。そもそもそれを抜きにしたって、彼女は姉さんの侍女見習い。俺と親しくたって変じゃないだろう」
そこまで言われて、ロイエンタール皇帝はなるほどといった後に、もう一度私をみた。
「……けどこいつが色目を使ってる可能性も……」
「あーないない。フルストゥル嬢 婚約者いるし、そもそも俺、ほぼ授業以外で、ほとんど話したことないしな」
……うん、休み時間私席にいないしね……そもそもね……。
授業中も、意識飛ばしてるときとかに、助言してくれる程度の付き合いしかないんだよなぁ。それも最近、マオ先生の補習のお陰で、より話さなくなったしねぇと、もうもはや、それを口に出す気力もなく黙っていると、皇帝と王太子がいるせいか、少しロイヤルにあてられつつ、げんなりしてしまったが、私はいつ、仕事に戻ればいいんだろうと思っていると、ロイエンタール皇帝は、呆れたような表情をしたあとに、馬鹿にしたように鼻で笑われた。
「まぁ、お前にはその器量もなさそうだしな」
……もう好きにせぇよもう~。もう~仕事に行かせてくれよ~。
内心は方言丸出しで投げやりだが、見て、この何とも思ってないですよって表情、もうお手の物ですわ、と浅い笑いがこみ上げてくるのを何とかこらえて、ロイエンタール皇帝が去るのを見送った。
うーん、私が見極める以前の問題じゃないかな。
流石にここまで来ていや、あいつはいいやつだよと言われたら、不敬かもしれないけど大丈夫?疲れてない?話聞きましょうか?からのアイン様召喚ですけど……と思っていると、ギャラン様と目があった。
そこから恋が始まるわけもなく、私とギャラン様は、呆れた笑みしか浮かばなかった。
「ロイはああいうやつでな、女性への先入観もそうだが、思い込みが激しくて困ったもんだよ」
「ロイエンタール皇帝って、何か昔あったんですか?」
……むしろ、なんもなくてあの性格だったら大問題よ?と思いつい聞いてしまったが、ギャラン様は嫌な顔せず教えてくれた。
「あぁ、レイラントは中での争いが激しくてな 昔皇后の家門にロイの母は手にかけられ、ロイの父は公爵に失脚させられてなあいつ結構苦労してるんだよ」
ギャラン様の説明を聞いて、それは壮絶だなぁと思いながら、まぁ、そりゃ皇后に敵対心抱くのも分かるけど、女性を、何であそこまで軽視するんだろうと考えていると、とある予想が思い浮かんだ。
「もしかして……失脚には女性が関わっている……」
「ご明察。当時の王は、とある平民を気に入っていたんだ。それをそそのかして、王妃にそれをリーク……。まぁそこからは、あんまここでは言えないな」
ギャラン様がそういうってことは、結構血が流れたんだろうな。そう思うと、平和な時代に生まれてよかったなと思っていると、ギャラン様は意外そうな表情を浮かべた。
「ん?フルストゥル嬢は聞いたことないのか?レウデール復興派と保守派との争い」
「え?」
「昔、今より王都があれてた頃だけど、混乱に乗じて、レウデールを信仰する過激派が、ベルバニアに攻め込んできたことがあったらしくてな。それを、ベルバニアだけの戦力で、解決したことがあったんだよ」
「あまり聞いたことないです……」
本当、お父様そういう話お兄様にしかしないからなぁ。ちゃんと資料室に行けばあるんだけど、私にそういったことを知ってほしくないのか、当たり障りのないものしか、許可出てないんだよなぁと思っていると、ギャラン様は気さくな表情のまま続けた。
「まぁチェーザレ様のことだから、いろいろ心配かけたくなかったってのもあるだろうけど。 まぁ、平和なベルバニアにもある話なんだから変わった話ではないよ」
「へぇ……でも相当苦労されたんですね。ロイエンタール皇帝は」
そんな苦労していたら、性格もねじ曲がってしまうのもわかるけれど、それを周囲に当たり散らして、不快な思いをさせていい免罪符にはならないし。
そもそも、身分が高ければ高いほど、自分を律することが必須で、そうでなければいけないとお母様に教わったし、常識だと思っていたのに、私の目から見たロイエンタール皇帝は、あまりにも稚拙で、あまりにも幼稚で、彼のスキを突こうと思えばいくらでもつけるし、すぐに感情を露にする彼は、扱いやすいように思えた。
多分私でさえこう思うんだから、レイラントの貴族……皇后の父にとっては手玉にとりやすいだろうなぁ。
それで窮地に追いやられたら、また皇后を責めるんだろうか、と色々考えつつも、仕事を思い出し、ギャラン様の前で素に戻ってしまった。
「あっ仕事戻らないと」
「あぁ、お疲れ」
その後、ニーチェさんと合流すると、私は普段どうりにしていたつもりだったけれど、やっぱり流石ニーチェさん、顔を合わせた途端、ものすごく心配された。
「なんかしんどそうだけど大丈夫か?」
「大丈夫じゃないですぅ」
安心からか、頼りない声を出してしまったが、ニーチェさんは嫌な顔せず何があったのか、大丈夫かと聞いてくれて、あったことを全部話すと、ニーチェさんは深くため息をついた。
「フルルは狐っていうより、猫っぽいと思うけどなぁ」
「あぁ、そっちの話……あぁでも、やったぁ猫可愛いし」
「猫好きだもんなフルル……っと、にしても話は聞いてたけど、ひどい性格だなぁ」
ニーチェさんは大変だったな、となでた後に、思い出したように付け加えた。
「あぁ そうそうレイラントの皇后も王女のサロンに呼ぶように……だと」
「わかりました……あ」
「どうした?」
何か忘れ物か?とお兄様のように聞いたニーチェさんの手を見て、少し乾燥しているのに気づき、自分のポケットからハンドクリームを差し出した。
ちなみに出したのは、ニーチェさんが好きだと言っていたシトラスの匂いので、それを見たニーチェさんは、嬉しそうに眼を細めた。
「あぁ、ありがとうな。フルルは優しいな」
「いえ お役に立てて何よりです」
少し温和な雰囲気になったおかげか、あの傲慢皇帝から与えられた不快感が、少しだけぬぐえたお陰で、レイラント皇后の前でも、平然と振舞うことができたが、王女のサロンへ案内している最中、皇后はすこしぎこちなく見えた。
「なにか、心配ごとでもありますか?」
「あ……えぇと……」
「……アイン様のサロンにいる方々は、みんな優しい方ばかりですから、緊張しなくて大丈夫ですよ」
そう私が言うと、皇后は控えめにほほ笑んだのだった。
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