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ぼんやり令嬢は静かに仕事がしたいようです

 気絶しそうになるのをこらえ、いろんな方々に、自分の所属がはっきりわかるように、前に、いろいろ調整してもらった礼服に着替え、最終調整に向かった。


 ……こういうと、私が行くところをあらかじめ決めて、何かしらのリーダーシップを取ったわけでもなく、ありがたいことに、ニーチェさんが、リストアップしてくれたところに行って、色々と確認するだけという……。

えぇ、至れり尽くせりですけども、なんなら、これそういう名目で行う礼服お披露目かな?といわれても、仕方がないかもなぁ、と思いながら、サロンに向かうことにした。


 「ベルバニア伯爵令嬢」


 「ルイヴィエール様、ごきげんよう」


 「話は聞いてます。それにしても似合いますね」


 

 相変わらず、ここに勤めてる皆様は、スマートに人を褒めるのが上手だなぁと思い、自分を卑下しないように、気を付けつつ、なんとか言葉にした。


 「ありがとうございます」


 お世辞だとしても、ありがたいなぁと思い頭を下げると、ルイヴィエール様が、リストを丁寧に手渡してくれた。

 

 「一応、これが、狩猟祭の時に出させていただく軽食と、こちらが、前夜祭と後夜祭の、立食パーティーでの食事です。あと、こちらが、国賓を招いての、交流会での食事内容です」


 「はい……えぇと」


 さらっと渡された割には、重量があるそれを、なんとなく流し見した後に、ルイヴィエール様に、疑問を投げかけた。


 「これって、もう確定している内容ですか?今から、私が変更を頼んでも、食材とかの確保は……」


 そんな私の質問を、予想していたかのように、けれど、どこか嬉しそうに答える。


 「安心してください。王宮には、様々な食材が保管されてます。今は、他国との貿易を活発にしている時期なので、材料の心配は、しなくて大丈夫です」

 

 流石王宮、いや、流石キャシャラトというべきなんだろうか、私の、小さな悩みなんて杞憂なのかも?と、思いながらも、聞けることは聞いておこうと、失礼だが、さらに質問を重ねてしまった。


 「大丈夫だとは思いますけど、料理人の方々って、特に、作れない料理とかは無いですよね?あと設備とかも……」


 そうきくと、ルイヴィエール様は、嫌な顔せず大丈夫だと答えた後に、世の女性は、ほっとかないだろうと言いたくなるほど、優しい笑みを浮かべ答えてくれた。

 

 「細かいところまでお気遣いありがとうございます」


そう言ったルイヴィエール様は、なぜか少しだけ、ニーチェさんや、ノージュさんに似てるなぁと、不思議な既視感に襲われた。


 「わかりました。あの、ごめんなさい。出来たら、今の王宮にある、食材のリストも欲しいです」


 「わかりました。持ってきてもらいますね。そちらにかけてお待ちください」


 「はい」


 「……それにしてもフルストゥル様のお陰で本当に助かりました 例年ここまで余裕をもてたことは無いですから」


 「えと……どういたしまして……?」

 

 一応生粋の王室派なんだから、もっと臣下として、もっと、喜んだ方がいいのかもしれないけれど、そんなことより、例年どんな感じなんだろう。

後で、ニーチェさんに聞いてみようと思っていると、ルイヴィエール様は、しみじみとした表情で、続けた。

 

 「本当に助かってるんですよ……。皆さん優秀なんですけど、いかんせん、少数精鋭すぎて、細かいところに、なかなか手が届かないというか」

 

 なるほど、たしかに王宮に勤める人って、家柄だけあればいいっていうより、かなり、有能な人じゃないといけないからなぁ。

むしろ、能力さえ高ければ勤められるけど、多分、基準が高いんだろうなぁ。

そりゃ、限られてきちゃうよねぇ、と同情にもならない感想を抱きつつ、当たり障りのない笑顔を浮かべた。

 

 「お役に立てているのならよかったです」


 そう素直に心から答えて、ようやくリストの確認をしようと向き合うと、今度は、ルイヴィエール様が、申し訳なさそうに呟いた。


 「……そこで頼みがあるんですけど……、フルストゥル様から、チェーザレ様に、首都に来るように、言ってもらえませんか?」


 「お父様に?」


 「無理とは知ってるんですけど……。チェーザレ様は、騎士としての実力もさることながら、歴史の造詣深さや、様々な知識は一般の文官のそれを超えていますし、なにより、ベルバニア伯爵家は、いまや、唯一のレウデールの流れを汲む貴族ですから、名門貴族たちも一目置いてますし……、あと、何と言っても、あの繊細な経済感覚と領地運営の手腕」

 

 なんかこう言われるとお父様すごい有能なんだなぁと、いやいや、無能っておもってたわけじゃないですけどね?

現に、領地の方々からはお館様っていわれて、それはそれは現人神の如く慕われてますけど、まさか首都の、それも王族つきの方に、こうも評価されてるとは、娘の立場として、嬉しい限りだなぁと、感動してしまった。

 

 「父のこと、評価してくださってありがとうございます」


 「いいえ、当然の評価ですから」

 

 ……うーん、ここまで言ってくれてるのなら、一度聞いてみたほうがいいのかな?と思ったが、そういえば以前、シードロヴナ様に、拠点を首都に移さないか聞かれたときも、首を縦に振らなかったんだよな……。

でもそれでようやく、渋々郊外に家は買ったんだけれどね。

 うちの家系は、元を辿ってしまうと外様貴族なせいか、古くから、キャシャラト王室に仕えている、生粋のキャシャラト貴族から、快く思われていなかったりしたこともあって、幼い時から、お父様は、首都に来るたびに嫌な思いをたくさんしてたみたいだけど、今は、どうなんだろうと思いながら、一応、聞いてみますとだけ、答えたのだった。


 「では、何かあったらお呼び下さいね」


 ルイヴィエール様は、そういうと、呼び鈴のような形をした魔道具を手渡してくれ、私は頷いたものの、内心、これいくらするんだろうなと、ぼんやり考えてしまうのだった。


 そしてさりゆくルイヴィエール様を見送って、淡々とリストを眺め、気になることをノートに書き留めていきながら、問題点などがないかを、じっくり眺めている作業を続けていると、サロンとはいえ、やはり狩猟祭前だんだんと騒がしくなってきた。


 うーん、これは場所を移動しようかな、でも、どこが空いてるだろうと考えているうちにそのざわめきは大きいものになっていった。

 どうやら、内装などに変更があったのか、最後の追い込みなのか、座って作業している私からみたら、すさまじく忙しそうで、仕事をしてるとは言え、少し、居心地が悪く感じたころに、さわやかないいお声が聞こえた。


 「あれ、フルストゥル嬢」


 「ギャラ……ハッド殿下」


 「ありがとうな なんか周囲に飲まれてるけど大丈夫か?」


 「えっとぉ……」


 大丈夫だけど、大丈夫じゃないというか、どういえばいいんだろうと、考えあぐねていると、ギャラン様は、助け船を出してくれた。


 「そこの廊下の突き当りに、資料室があるから、そこで作業したらどうだ?ここじゃ落ち着かないだろ?」


 「そうなんですか?あっでも勝手に入っても……」


 守衛さんとかに、しょっ引かれたりしないかな、なんか重要な資料とかあって、国家転覆罪とか疑われたりしないよな?と余計すぎる心配をしているも、ギャラン様はさわやかな笑顔で続けた。


 「大丈夫 俺から言っとくから」


 「ありがとうございます」


 頭を下げて、言われた資料室へ向かうと、周囲は何故か「え?本当に行くんだ」とか「第一王子に気に入られようとかはないのか」と、驚いた表情や、言葉が見えたり聞こえたりしたものの、私は、心の中で、いやいや今仕事中なのよと反論したのだった。

いつも読んでくれてる皆様、初見の方閲覧ありがとうございます。

いいね、評価してくれる方本当にありがとうございますとてもモチベーション向上につながっております。


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