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銀色の鳥  作者: 汐留 縁
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3-不穏な風



シレスタも笑顔でレイを見送る。

そして、部屋にシレスタ1人になったことを確認すると肺に溜まった息をゆっくりと吐き出した。

そして、背中で強く握りこんだいた手をゆっくりと離す。

すると、シレスタの周りにふわりと風が吹いた。

風は徐々に強まり、風に煽られカーテンがゆらゆらと揺れる。

風は音も鳴らないぐらい静かなものだが、シレスタは祈るように胸の前で手を握り込み、風が止むように努めた。

この風はシレスタ自身が起こしているのだ。

これ以上、風が強くならないよう、心を落ち着かせる。


「大丈夫。大丈夫よ」


風の起こる原因はわかっている。

シレスタの不安な気持ちが、周りに風を起こしているのだ。

シレスタは落ち着くように精神を統一させ、風が収まるようにと強く手を握り込む。

そうすると、しばらくすれば、風は徐々に止んでいき、風でなびいていたカーテンも風で煽られた本も次第に収まり、静かになった。

シレスタは安堵のため息をつく。

額を流れる汗も拭った。

今のは、シレスタに宿る魔力の暴走だ。

シレスタの心に反応して、無意識に風を起こしてしまった。

3人で話していた時は、一瞬でも不安を紛らわすことが出来たが、いざ、その時が近づいていると思うとシレスタは急激に不安を感じてしまったのだ。

レイや周りにバレないように途中から背後で手を握り込み、必死に魔力を押さえ込んでいたのだが、今にも暴れそうになる力を抑え込むのはかなり苦しかった。

シレスタは、ただただ、不安と憂鬱感でいっぱいになった。

今、暴走した魔力もこれで一度は収まったが、次また魔法が暴走すると思うと、シレスタはより不安を感じた。

(特に今日は_______)


「コンコン」と扉を叩く音が鳴る。

シレスタは一度深呼吸をすると、

「どうぞ」

と、声の調子を戻し、招く。

扉からはそろそろだろうと想像していた、侍女達ががシレスタを見繕うために入ってきた。


「失礼いたします。レイ・ステライト様からシレスタ様の準備をするよう仰せつかりました」


その侍女は微笑みながらお辞儀をする。


「レイ…」


シレスタは去り際のレイの様子を思い出した。

あの時のレイは、何か気付いているような様子だった。


(…私の不安な気持ちが伝わってしまったのかもしれない)


レイは魔力を持たないが、どこか鋭いところがある。

あの時のレイは、シレスタの気持ちで揺れる魔力の変化に気づいたのかもしれない。


「シレスタ様、こちらに」


シレスタは煩わしい気持ちを押し出すように首を横に振り、侍女の指示に従い、今日着るべき服を見繕っていく。





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