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銀色の鳥  作者: 汐留 縁
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1-空飛ぶ鳥


「シレスタ。ここにいてはダメだろ」


少し怒気を含んだ爽やかな声が風に乗って届いた。

その声の主は王宮近衛兵兼シレスタ付きの護衛であるレイ・ストライトだ。

爽やかな雰囲気の男性で、とても整った容姿をしている

もうすぐ18になるレイは年相応の顔つきや体型、アッシュブラウンの髪と同じように深い琥珀色の瞳が特徴的だった。

後ろ髪は首が出るぐらい短いが、前髪は目にかかるくらいに長い。

その前髪のほとんどを左に流していることで、彼の爽やかさをより引き立たたせている。


「…あ、レイ。お疲れ様」


そうして穏やかに微笑む、銀色の髪が綺麗な少女。淡い水色に染まる簡素な半袖ワンピースに袖を通し、華奢な体型を、白、ピンク、黄色の縞模様で染められたリボンで腰を結んでいた。背中まである真っ直ぐな髪はハーフアップにし、水色のリボンで結んでいる。

シレスタ・エラメンタ。空を写したような水色の瞳が特徴的な少女。水色のワンピースや、髪を結ったリボンは彼女の瞳に映え、よく似合っている。

15歳の彼女の見た目は、その年の割に童顔ではあるが、あどけない顔立ちから純朴で透明感のある印象を受ける。そのため美人と言うよりは、可愛らしいと言った雰囲気の少女だった。身長は低く、レイと並ぶと頭一つ分の身長差がある。

そんなシレスタは今、広場に(そな)え付けられた柵に手をかけ、街の風景を眺めている。彼女の髪は風に(なび)く度に、キラキラと光り輝く。

彼女のいる空間だけまるで、別の世界のようだ。

この場に、2人以外に人はいないが近くに噴水やベンチがあるため普段のこの場所であれば、市民が(いこ)いの場所として利用する。

そんな場所に彼女は霧が立ち込める早朝から今まで1人っきりでいた


「シレスタ、今日は君がいなくては行けない日だろう。今頃みんな困っている」


「ねえ!レイ見て、綺麗な鳥」


そう言ってシレスタは柵に身を乗り出し、空を旋回(せんかい)する鳥に指を指す。それは淡い黄緑色をした鳥で、ゆったりと風に乗って飛んでいる。


「シレスタ、少し人の話を、」


シレスタはレイの話には耳を貸さず、優雅に空をとぶ鳥に向けてゆっくり手を伸ばした。そして手を軽く丸めると囁くように呟いた。


「…おいで______」


鳥は空で1周旋回したあとそのままシレスタの人差し指の上に向かっておりてくる。


「はじめまして、答えてくれてありがとう。ねえ、あなたどこから来たの?」


鳥はぴょこぴょこ首を動かす。


「………そう、北から来たのね」


「なんて言ってるのか分かるのか?」


レイは柵に肘を載せ、体重をかけながら不思議そうに聞く。


「何となく。微かに音が聞こえるの」


「音?」


「耳で聞こえる音とは違って、もっと深く…」


シレスタは、生まれつき不思議な力を持っていた。


と、二人の間にふわりと風が吹いた。

その風につられるように、突風がシレスタやレイの周りで舞い上がる。シレスタもレイも、咄嗟に顔を抑えるように腕が前に出た。

シレスタの指に乗っていた鳥はその風に乗り、大空へと飛び上がると、空を飛ぶ鳥の集団に混ざって飛び去って行った。

唐突に舞い上がった風は草木を激しく揺らすとまたすぐに静まり返った。


「強い風だったな。シレスタ、大丈夫か?」


レイはシレスタに覗き込むように聞いた。

シレスタは柵に手をかけながら、空を見つめている。


「…鳥は、どこへ行ったのかしら」


レイはシレスタと同じように空を見上げる。


「さっき、あの鳥は北から来ていたと言っていたな。ここら辺では見たことない鳥だったから渡り鳥の一種かもしれない。もうすぐ北の方は寒くなるから、暖かい、南の方へと向かっていったんじゃないかな」


「そう……じゃあ、あの鳥は何処までも遠くに行けるのね…」


シレスタの声はレイにギリギリ聞こえるぐらいの声だった。

シレスタの言葉に一瞬瞳を揺らしたが、すぐに真面目な顔つきでシレスタに向き合い姿勢を正す。


「さあ、そろそろ参りましょう。王宮で皆があなたを待っています」


レイの言葉にシレスタはしばらくそっぽを向いていたが、すぐにレイの方へ向きなおると、困ったように微笑みながら上目遣いにレイを見上げた。


「あんまり、レイを困らせてはいけないわね」


シレスタはそう言うと少しため息をつく。

そうして切り替えるように姿勢を正した。


「城に帰りましょうか」


「では王宮まで、お送り致します」


レイは、規律正しく、優雅にお辞儀をする。





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