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殺戮の狂想曲(旧題:軍人少女の日常)  作者: 麻婆カレー寿司
8/11

事件前日

可愛い女の子が、可哀想な目に遭ってるのって、興奮するよね。




エアが学園に戻り、一人遊びを始めて数時間が経ち、四限目が始まろうとしていた。

(……さすがに飽きてきたな)

何をして暇を潰そうか考えていると、人が近づいてくるのが視えた。

「あの、無属性科って、ここですか……?」

「そうだけど、あなたも受講希望?」

「は、はい……。あの、先生は、どちらに?」

「急用で不在」

「そう、なんですか……」

気が小さくて大人しい性格と言えば聞こえはいいが、声が小さく、聞こえずらいというのに加え、うじうじ、愚図愚図されるのは、エアにはストレスを感じさせる物だった。

「あの、いつ頃、戻ってくるか、聞いてますか……?」

「…………」

無言でエアが少女に近づき、首を鷲づかみにして持ち上げた。

「ガッ……グ」

「ハキハキ喋ってくれない?イライラする」

「ご……ゴベン、なザ……」

エアが急に手を離したことで、少女が地面に崩れ落ちる。

「グッ……ゴホッ、ゴホッ」

少女が苦しそうに咳き込んでいると、

「ちょっと!何やってるの!?」

ルイスの叫び声が空から降ってくる。

どうやら長話は終わったようだ。

「お姉ちゃん!」

少女が空から降りてきたルイスに抱きつく。

「思ったより早かったですね」

「あなた、私達に恨みでもあるの?」

「恨みなんてありません、だだの趣味です」

「趣味?」

意味が分からないという顔で、ルイスは呟いた。

「そう、趣味です」

「狂ってるわ」

「そんなこと無いですよ」

エアは心外だと言わんばかりに、自分の普通さをアピールした。

「よく子供が、蟻の巣に水を流し込んだり、虫の羽や足を千切って遊んでますよね?それと同じです」

「それは、10歳かそこらの子供の話でしょう。16歳にもなれば、もう殆ど、大人も同然です。同じになんて出来ません」

「じゃあ、先生はもし、妹さんが殺されて、犯人が10歳程度の子供だったら、「子供がしたことだから」って、許すんですか?」

「ソレとコレとは話が違いすぎます!」

これ以上、話をしても無意味だと理解したルイスが会話を打ち切る。

「とにかく、私にならばともかく、妹への……、生徒への暴行は見過ごせません。このことは学長に報告させて貰います」

「お好きにどうぞ」

「あなたはもう家に帰ってなさい、どうせ学園にいても学ぶ事なんて無いでしょ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて帰ります」

エアはそう言い残して学園を後にした。






「ん?」

エアは研究所いえのドアノブに触れた瞬間にあることに気付いた。

(誰もいない?)

エアは魔眼の視認範囲を広げてアシュティンを捜索する。

すると、肉屋で何やら店員と会話をしているアシュティンを発見した。

その手には、食材の入った袋が握られていた。

あり得ない物を見たという顔でエアが驚愕する。

(榴弾の雨でも降るのか……?)

もし本当に降ってきても、すべてエアによって回収され、物資が潤うことにしかならないのだが……。

そんなことを考えながら、エアはドアを開けて研究所いえに入った。





「まったく、何奴もこいつも握手だ、サインだと、鬱陶しい。静かに買い物も出来ん」

「食材を買って来たということは、リクエストでもあるんですか?」

「うおっ、え、エア、帰ってたのか」

「はい、ついさっき」

それで、とエアは続ける。

「その食材は?」

「コレは……」

何かいい誤魔化し方は無いかと、考えていたアシュティンだったが、よく考えれば、別に誤魔化す必要も無いと、思い至り、素直に口を開いた。

「は、ハッピーバースデー、エア。コレで美味しい物作って?」

「自分で作ろうという気は無いんですね」

「さすがの私も、炭は食えん」

エアがアシュティンから受け取った食材を確認する。

「ステーキ肉ですか」

「結構高かったから、それなりに美味しいはず」

「焼き加減とソースは何がいいですか?」

「……ミディアムでワインかな」

少々迷って注文を出す。

しかし、今は昼を少し回った程度、二人とも昼食は済ませてしまっていた。夕食の支度をするには早すぎる。

「夕飯も決まったところで……、実は、買い物に行く前に例の機材が届いてな、早速だが、改修するから、装備を持って工場まで来てくれ」

「分かりました、……その前にコレ、仕舞ってきますね」

アシュティンはそそくさと工場に向かい、エアは食材を片付けて、装備を取りに、自分の部屋へと向かった。









「はー、やっぱりエアの作る料理は最高だな」

「……ありがとうございます」

装備の調整が終わる頃には日も沈み、夕飯も食べ終えた頃、来客が訪れる。

「勝手に上がらせてもらったよ~」

「エア、何で追い払わなかったんだ……」

「多分ですけど、私に用事だと思ったので」

「そうなのか?」

勝手に上がり込んできた来客、アーデルハイトに、アシュティンが迷惑そうに質問する。

「そうだよ。できればティアにも聞いてて欲しいかな」

「何で私まで、エアに用なんだろ」

「そうだけど、保護者にもいて欲しいの」

「分かったよ……」

アシュティンは諦めて、この場に残ることを認めた。

「それで早速本題なんだけど、授業開始初日から被害者が二人も出ているんだけど、エアちゃん、何か言い分はある?」

「特に何も、して言うなら、この時間の無意味さを指摘します」

「エアに説教したって、何にもならんぞ」

「知ってた」

早々に諦め、アーデルハイトは一つの提案を提出する。

「うちの学園って試験さえ合格すれば進級も卒業もできるの、だから試験の日だけ登校して、それ以外は自宅謹慎をお願いできないかな」

「構いませんよ」

エアの返答に心底安心した顔で、言う。

「軍が手を焼くのも分かるわ、内に抱えた爆弾、諸刃の剣もいいところだ」

「エアがレアリオンに付いたら敵同士だな?」

「冗談やめてよホント……」

アーデルハイトはアシュティンから大体の事情を聞いて把握している。

軍に自分の運命を握られていると思うと、生きた心地がしない、アーデルハイトであった。






「さて、うるさい奴もいなくなったし、工作でもするかな」

「私も面白い遊びを思いついたので、準備をすることにします」

「面白い遊び?」

エアはアシュティンの疑問には答えず、自分の要望を伝えた。

「メッサ―・ビット、あと二基は欲しいんですけど、できますかね」

「いつまでにだい?」

「明日?」

「さすがに無理」

メッサ―・ビットは、MRSという特殊な鋼材で作られている。



MRSとは、魔力反応鋼マギ・リアクティブ・スチールという特殊な合金のことで、エアの愛剣にも使用されている鋼材だ。

この鋼材の凄いところは、魔力に反応して、分子間の結合力が強まるというところ。

その性能は、エアが約1800km/hの速度で岩壁に叩き付けても、傷一つ付かないほど。

ただし、加工が難しく、大量生産できないので、コストが高く、簡単に手に入らないという、難点もある代物だ。

なので、一晩で用意するのは、さすがのアシュティンでも無理がある。




「分かってます、六基でも十分足りるので問題ありません」

その代わりにと、エアが注文を口にする。

「ミサイル・ビット、作れるだけ作って欲しいですね」

「了解」





こうして、その場は解散となり、夜は過ぎていく。

夜空に消えていったビット達を残して。


実は料理できる系主人公のエアさん。

その腕前はプロ級…………かもしれない。


次回は、エアによる殺戮ショー(?)の予定。(予定)←念押し

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