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殺戮の狂想曲(旧題:軍人少女の日常)  作者: 麻婆カレー寿司
4/11

入学式



3/3 ※ルイス先生の担当を一年生だけでなく全学年に変更しました。



「グッ。……むち打ち症になるって、これ」

突如、壇上の演台に現れたアーデルハイトは首を押さえながら呻く。

どうやらエアは、アシュティンに言われた通りアーデルハイトの慣性を十分に消さなかったようだ。

突然の登場に新入生達がどよめく。

ちなみに、アシュティンは舞台裏に送られ、エアは気付かれないように、人と少し離れた席に着いた。

「あ、あ。静かに」

拡声魔法を使いアーデルハイトが指示を出し、

「これより、入学式を始める」






「まずは学長である私から。長話もあれなのでなるべく手短に」

少し溜めて、言い聞かせるように話し始めた。

「250名の新入生諸君まずは入学おめでとう。話のついでに、この学園について話しておこうと思う。この学園は個々の能力を延ばすため様々な授業を実施している。例えば、魔法実技ならば各種五属性の授業に加え今年度からは無属性も追加された。魔導工学や魔法薬学にしても最新の機材を取り入れることで力をつけられるようにしている」

最新機材については先ほどアシュティンに取らr……献上したので、新しく購入しなくてはならなくなったのだが……。自腹で。

そして、本題に入る。

「つまり、環境は整っている。後は君たちの努力次第だ。怠け者が報われることは無い。……君たちが将来、この国の発展を支える存在になることを願っている。……以上だ」

生徒達が座ったまま礼をして、それに合わせて登壇者が変わる。

「名乗る必要は無いと勝手に判断して早速本題に入らせて貰う。……諸君、ここがどこだか分かるか?…………そう、学園だ。ここに居る限り君たちは生徒でしか無い。平民だろうと貴族だろうとここでは皆生徒だ。もちろん教師とて例外では無い」

突然の大物の登場に講堂内にざわめきが走るが、アシュティンが話し始めると、瞬く間に落ち着いていく。

「しかし、貴族というのは醜い生き物で、自分より弱い者を虐げて気持ちよくならないと生きていけないという残念生物だ」

アシュティンが重度の貴族嫌いなのは周知の事実なので、酷い物言いにも反応する者は少ない。

「どうせ今も変わらず平民が貴族連中に虐げられているんだろう?経験者が言うんだ間違いない」

アシュティンが背後に立っているアーデルハイトに目線をやる。

アーデルハイトは苦い笑いを返すしかなかった。

貴族による平民いじめは何年も前から問題になっているが解決できていないのが現状だ。3年前、アーデルハイトが学長に就任してから現在に至るまでに、減らすことは出来たが、無くすことは出来ていない。

「やっぱりな。……と、いうことで平民同胞諸君に私から一言」

アシュティンは貴族連中にゴミだと宣言した上で、同胞である平民達だけにエールを送った。

「学長氏が「努力次第だ」と、言ったな?色々な努力の形があるが、私は、好きな物をより好きになることも努力だと考えている。嫌いな物を極めろと言われれば辛いが、自分の好きな物ならば今よりも愛することは簡単だろ?」

アシュティン本人も好きだから魔法の研究しているのだ。嫌いな物をわざわざ仕事にする馬鹿も居まい。

「とはいえ、これもあくまで一例だ。まずは、自分なりの努力の仕方を見つけてみることだ」

話を終わらせアシュティンが演台を後にし、舞台裏に去る。

次は、新入生代表のスピーチだ。

「さて、次は新入生代表のスピーチな訳だが、実は代表はまだ決めていなくてね。誰に任せようか考えていたんだが……」

エアとアーデルハイトの視線がぶつかり、アーデルハイトが笑みをこぼす。

「エa、ムグッ!?」

突如、アーデルハイトの口が強制的に閉じられ開かなくなり、声を発せなくなる。

エアが唇を動かし黙らせたのだ。

アーデルハイトが両手を挙げ、降参の意を示す。

何事かと困惑していた生徒達をエアから解放されたアーデルハイトが宥める。

「すまない、驚かせてしまった。じゃあ、スピーチは無難に……」

講堂内に居る誰もが今、今年からこの学園に入学し、現在この場に居る第一王子殿下の顔を思い浮かべていた。

もちろん、エアも例外ではなかった。

「エア・ウインドさんにお願いしようか」

「……」

思わぬ不意打ちを食らい、エアは少し自分に呆れていた。

(実戦なら致命傷かな?……ほんと私って駆け引きに弱いな……)

実戦では負け知らずのエアでも、こういった話し合いでの駆け引きには弱い。実戦で考えるのであれば先手で黙らせたエアに軍配が上がるだろうが、エアの中では仕留め損ねた感覚のようだ。

意地の悪い笑みをアーデルハイトがエアに向けて飛ばす。その顔には分かりやすく「諦めろ」と書いてあった。

(博士の気持ちが分かった気がする……)

エアは大人しく演台へ向かった。






「クク、がんばれ。ティアも楽しみにしてるだろうからさ」

大人しく演台に立つ。最早、ため息すら出なかった。




「え~、なぜ無難に私なのか意味が分かりませんが、晴れて代表に選ばれてしまった、哀れな平民、エア・ウインドです」

特に話すこともないので、手短に終わらせようと話し始める。

「この学園での目標を上げるとするなら、貴族連中に嫌われないようにすることですかね。理由は……」

あえて挑発するように語りかける。

「貴族って口だけで大したことないじゃないですか。だからもしもの時、手加減できるか分からないので、殺してしまわないか心配だから、ですかね。……目標目指して頑張ろうと思います」

そして、「他には特に何も思いつかないのでこれで終わります」と宣言して、自分の座っていた席に戻る。

道中、少なくない視線を感じながら。





「さて、最後に新任教師の紹介を。ルイス・マーティン先生、前へ」

アーデルハイトの台詞に応じて一人の女性が壇上に現れる。

「初めまして。今年度より、全学年の魔法実技無属性科を担当することになりました、ルイス・マーティンといいます。よろしくお願いします」

「ルイス先生は魔道具なしの魔法発動に長けていて、かなりの技術を有している方だ。無属性だからと侮らず、是非授業を受けてみて欲しい」

無属性魔法は魔力を扱える者なら誰でも使える魔法だ。一部の無属性魔法が生活魔法とも呼ばれているほどに。無属性科が不人気授業になるのは簡単に想像が出来た。

「では、これにて、入学式を終わりとする。明日から授業が始まるので自分の受けたい教科と実施場所を確認しておくこと!……解散!」

随分と緊張感なく、式は終了し、生徒達が次々と講堂から出て行く。

その流れに逆らって、エアが舞台に向かって歩いて行くと、

「エア~、帰り頼んでいいかい?」

「自分で飛んでください」

抱きついてきたアシュティンに迷惑そうに答える。

「装備無いと疲れるんだよ……」

「知りませんよそんなこと」

「ほんと仲いいね。まるで親と子だね」

アーデルハイトからすれば、ほんの冗談だったのだが……。

「当然じゃないか!エアは私の自慢の娘だぞ!」

「娘だと言うなら扱き使うのやめてくださいよ」

「……」

「どっちが親なんだか……」





こうして、ちょっとした陰謀と、エアに向けられた厭悪と共に入学式は終わりを迎えた。


アーデルハイトのキャラが安定してない気がする……。

……ま、いっか。

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