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殺戮の狂想曲(旧題:軍人少女の日常)  作者: 麻婆カレー寿司
3/11

入学式前のいざこざ

二週間ほどの時が経ち。



「さて、ついに入学式な訳だが、今の心境について率直な感想を」

「早く卒業してしまいたいです」

エアにとっては卒業してライセンスが貰えればそれ以外はどうでもいいのが素直な気持ちだった。

もちろん面白そうなことがあれば楽しくやらせて貰うが。

「……その件だが、あいつらが素直にライセンスを渡すと本気で思ってるのかい?」

「思っていません」

「じゃあ、なんで今回の入学の件大人しく従ったんだい?」

「テストです。私という人間を正しく扱えるかの」

エアがこんなにも強い態度を取れるのは少なくともこの国には自分に勝てる人間がいないと分かっているから。正規の軍人では無いというのもあるが……。

「はー、なるほどね。ちなみに不合格だったら?」

おおよその予想は付けながらも本人からの回答を聞こうと質問を飛ばす。

「もう、この国に用はありません」

エアに愛国心なんて物は当然無い。今エルガルド王国にとどまり、律儀に上の言うことを聞いているのはただの気まぐれでしかない。

とはいえ、多少、アシュティンが押さえている部分もある。

「だと思った。この国を出るとして何処に行こうか?私は何処でもいいよ?ゼルヴァギア?それともレアリオン?」

「その時に考えますよ」

「それはそうか」

会話が終わるのとほぼ同時に学園の正門に到着する。

そこは今年度から新しく入った新入生や、道案内をする教員で賑わっていた。

「相変わらずだな……」

「そういえば博士もここの出でしたね」

「そのせいで新入生にスピーチをしてくれと毎年毎年せがまれている……。まぁ、今年はエアがいるからオーケー出したけど」

「何で付いてきてるのかと思ったらそういうことですか……」

珍しく早く起きてるなと思ったら、「私も行く」と言いだして何事だと不審に思っていたエアは謎が解けて少しスッキリしていた。

普段、遅寝遅起きの人間が突然朝早くに起きて身支度をしていれば不審に思うのも無理は無い。

「私だって朝起きてることはあるだろ」

「それは寝てないだけでは?」

「そうとも言う」

そんな、たわいもない会話を門前でしていると、周囲からの視線に気付いたアシュティンがエアに移動を促す。

「……トットと中に入ろう。人混みは嫌いだ」

「有名人は大変ですね?」

「茶化すな」




正門をくぐり、エアが、案内標識を確認して講堂の場所を確認したところで、一人の教員が近寄ってきた。

「これはこれは、アシュティン博士。学長から話は……」

「案内は要らん。学園の地図なら頭に入っている」

「は、はぁ」

案内に来た教員はあからさまに不快感をあらわにして受け答えをする。

「私は講堂に行くので」

また後で、と続けようとしたところで、

「エアも来い」

「えぇ……」

明らかに不機嫌なアシュティンに引っ張られるように学長室に連れて行かれるエアであった。





「あの~、私こっちじゃ無いんですけど……」

「……」

「何で怒ってるんです?」

「……」

「……はあぁぁ」

エアは深いため息を最後に諦めることを選択した。





しばらく歩いて《学長室》と書かれたプレートが貼られている扉の前に到着する。

(絶対飛んで来た方が速かったじゃん……)

歩く意味はあったのかと、エアが心の中で抗議する。

最も今は飛行ユニットを二人とも装備していないのでアシュティンが「自分も飛ばして」と楽をしようとするのは目に見えていたのだが。

そして突如、アシュティンが扉に向かって爆裂の魔法を打ち込んだ。

爆音と共に扉が吹き飛び、部屋の中から「のわあぁぁぁぁぁぁ」と叫び声が聞こえてくる。

叫び声の主は下着姿で、肌が全体的に赤らんでいるのを見るに、おそらく風呂上がりなのだろう。

「この魔力、アシュティンだろ!なんてことするんだ!この、馬鹿!」

下着姿の女性は扉を破壊した主に向かって、罵声を浴びせる。

「エア、このブタを殺せ」

「え?いいんですか?「エルガルドの人間は殺すな」って、他ならぬ博士が言ったんですよ?」

「そいつは人間じゃない、ブタだ。殺しても問題ない」

「……なるほど」

それならば問題ないか、と魔法を発動したタイミングで、

「待て待て待て!私が何したってんだ!それに、ブタって!最近肉が付いてきて悩んでんだからやめろよぉ!」

女性もほぼ同タイミングで自身の周囲に障壁魔法を展開した。

しかし障壁魔法は高速で飛来した物体に破られ飛散する。

「ちょ!あぶな!」

ギリギリで避け床に倒れた女性に追撃が襲う。

「ひぃぃぃぃぃ」

「外した?いや、逸らされた?」

女性を襲った物体、メッサ―・ビットが女性の頬すれすれで床に突き刺さる。

メッサ―・ビットはミサイル・ビットのアイディアを元につい先日できあがった新装備で、簡単に言えば、ミサイル・ビットのナイフ版だ。

ミサイル・ビットとは違い再利用できるという利点を持っているので持久戦でも有用な代物だ。

「そいつは屈折魔法が得意なんだ、本気でやらないと軌道を逸らされるぞ」

「まっ、まって!はなしを!話をしよう!なんでそんなに怒ってるの!」

「こいつ……。私が貴族嫌いなのを知ってあの男をよこしたんだ、それ相応の覚悟があるんだろ?」

「あの男?……アッ」

女性は何かを思い出し、顔を青くする。

アシュティンの元に近づいてきた男の正体は、ニーゼネスト・アウアースバルト伯爵。根っからの貴族主義者で、一般市民からの評判はすこぶる悪い。アシュティンもかなりの迷惑を被っている。

「ち、違う!あいつも・・・・居たってだけだ!複数人に知らせたんだよ!信じてくれ!」

「……朝から嫌な(もん)、見せられた側の気持ちが分かるか?」

「た、大変申し訳ありませんでした。お、お詫びに、帝国から仕入れた最新機材譲るから許して……」

土下座して謝罪する女性の台詞にアシュティンの眉がピクッとわずかに動く。

「どんな機材だ?」

「魔道具の消費魔力を従来の物より1.5%少なくする魔力基板のテンプレートを書き出す装置です」

「……まぁ、今回は見逃してやる。よかったな、ちょうど買おうとしてた機材で」

「助かった……」

女性が安堵に胸をなで下ろす。

「……あの、博士。こちらの方は?」

「ん?あぁ、こいつはアーデルハイト・メッサーシュミット。一応同業者ってとこかな」

「自己紹介の前に服着させて……」

そう言われて、二人は大人しくアーデルハイトが着替え終わるのを待った。






「改めましてアーデルハイト・メッサーシュミットだよ。一応研究者やってます。エアちゃんだよね、話は聞いてるよ。よろしく~」

「……よろしくお願いします」

軽く自己紹介を済ませ、本題に入る。

「茶番をしていたせいで無駄な時間を使ってしまった、今日のスケジュールについて説明を求む」

「茶番……。私が避けられなかったら茶番じゃ無くなっていたんだぞ!」

「たら、れば、の話はいい。早くしてくれ」

「はあぁぁぁ」と諦めのため息を吐き、アーデルハイトは今日の話を始めた。

「私の話と、ティアの話に、新入生代表の話、そんで新任教員の紹介で終わりだ」

エアは疑問に思ったことを思わず口にした。

「……ティアって、博士のことですか?」

「え?あぁ、アシュティンだと呼びづらいからね。ティアレットから頭を取って、ティア。呼びやすいでしょ?」

エアはアシュティンのあだ名にも驚いたがそれ以上に友人がいることに驚いていた。

毎日毎日、一日中部屋にこもって魔道具(おもちゃ)作りしかしてないような人に友人がいたのか、と。

「エア、私にだって友人ぐらい居る」

「強がりはやめなって、私ぐらいしか友人って呼べる相手居ないくせに」

「アディ、貴様……」

「アディ?」

エアの指摘にアシュティンが「あっ」と呟きを漏らし、頬をうっすら染める。

「プッククク。赤くなっちゃって、可愛い~。さっきまで『こいつ』とか『そいつ』って呼んでたのに、癖ってなかなか抜けないよね~」

アーデルハイトがアシュティンを煽ったとほぼ同時に部屋の中で突然魔力の気配が強まる。

「ま、待った待った。謝るから」

許して、と続けようとしたところにゴーン、ゴーンと鐘の音が割って入る。

「「あ」」

入学式開始の合図だ。

「エア、全速力だ。こいつの慣性、空気抵抗操作は適当でいい」

「そこはちゃんとお願い」

仲いいな、と暢気に考えながらエアは飛行魔法を発動し、二人を連れて講堂目指してカッ飛んでいった。




途中アシュティンとアーデルハイトを呼びに来た教員は高速で通りすぎていった何かに戦々恐々とし立ちすくんでいた。


キャラ崩壊してそう……。尚、作者は把握できてません。(^_^;

書いてる本人が楽しけりゃいいんだよ!

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