戦場の悪魔
少しでも面白いと感じてくれたら幸いです。
ちょくちょく編集します。
2/27 ※主人公の容姿に触れていなかったので無理矢理ねじ込みました。(6行目)
3/2 ※速度表記の変更。時速○○km→○○km/h
「アッハハハハハハハハハハハハ!!」
少女の嗤い声が戦場にこだまする。
「戦争はいいなぁ!獲物がたくさんいてぇ!!」
エルガルド王国軍独立魔法実験大隊隊長エア・ウインド少佐は現在、友軍を置き去りにして単独で敵駐屯地に乗り込み、敵兵を血祭りに上げていた。
スノーホワイトの髪をなびかせながら戦場を駆け巡り、瑠璃紺色の瞳が敵を捕らえる。
「血の匂いのする戦場は生きていると実感できるなぁ!!お前達の命を持って私の欲求を満たしてくれよぉ!!」
彼女の突然の襲来に慌てながらもレアリオン王国軍の兵士達は必死に応戦する。
ある者は魔法で、またある者は銃器で。
しかしどんな攻撃も、彼女には届かない。
飛来する魔法や銃弾をすべて彼女は回避しているのだ。
「いいのかぁ?速く私を殺さないと大事な家族の元に帰れないぞ!」
エアは一瞬のうちに敵兵との距離を詰め、
「ほぉらぁ、お前もいい声で鳴いて見せろぉ!!」
四肢を斬り落とした。
兵士達の悲鳴が次々と上がり、鮮血が舞う。
「敵は一人だ!包囲しろ!」
指揮官の物と思われる指示に魔法士達が飛行魔法を使って上を取ろうと飛び上がると、突如首が飛び絶命する。
エアが一瞬のうちに首を斬り落としたのだ。その最高移動速度は800km/h。100m圏内ならば0.5秒もかからず間合いを詰めれてしまう程の速度だ。
「やる気あるのかレアリオンは!!お前達が始めた戦争だぞ、やりたくてやってる割に楽しんでるのが私一人だけなんて可笑しな話だなぁ!!」
「隊長!」
(……チッ。ここまでか……)
上空から飛んできた部下の声に仕方なく後退する。
エアは飛行魔法を使い部下達の元に合流すると、不機嫌そうに文句を言う。
「予想より速かったね、もう少し遅れて来てもよかったんだよ?」
「あまり遅れると隊長が殺り過ぎてしまいますから急がせました」
「やだな、まだちょっとしか殺ってないよ」
ちなみに今エア達が暢気に会話出来ているのは今話をしているラインハルト中尉が障壁魔法で攻撃を防いでいるからだ。
「隊長はもう少し加減を知るべきだと考えます」
「勝手に考えてなさい」
多少の物足りなさを感じてはいたが、やらなければいけないことは既に終わっているのでエアは帰投の指示を出すことにした。
「さて、帰投するよ。いい機会だし、鬼ごっこでもしながら帰るとしよう。いい訓練になるしデータも取れる。鬼は私一人、捕まったやつは私の相手でもして貰おうかな」
兵士達の顔が青くなる。もし捕まれば待っているのはサンドバッグにされる未来だけだ。今回の任務に参加していない者達は運がよかったといえるだろう。
「大ハンデだ。10分待ってあげる」
現在地から駐屯地まで約400km。
「よ~い」
全員がおなじ方角を向き、
「スタート!」
私の合図とともに9人の兵士達が一斉に進発する。
敵からの攻撃を避けながら思考する。
(装備の試験任務も問題なく終わったし今回の新装備は良かった)
今回、エアに与えられた任務は新型飛行装備の試験運用に過ぎない。
本来であれば長距離飛行や簡単な決闘でもして装備の使用感などをレポートすれば終わるところを、エアは装備の実戦テストと評して自分の欲求満たさに敵駐屯地を襲撃したのだ。
(かなり機動性も向上して個人的にはとても戦いやすかった。実戦データも取れたし、あとは耐久性かな……)
ポケットから懐中時計を取り出し時間を確認する。
「あと八分ぐらいか……。もう一暴れしてから追いかけようか」
八分間、再び地獄が始る。
「さぁ、喜べ!八分と少々短いが第二ラウンド開始だ!」
エアは突如急降下し真下にいる敵兵の後頭部に踵落としを喰らわせ、足下で痙攣している敵兵の首に剣を突き立てた。
「ひと~つ!」
そしてすぐさま次の標的に急接近し、四肢を斬り落とし心臓を貫く。
「ふた~つ!」
近くにいた手頃な獲物を見つけては殺していく。
「みっつ!」
3人目は首を斬られ体を人混みの方に蹴り飛ばされ牽制として使われる。
「クソがッ!」
エアを捉えることが出来た兵士が悪態と共に発砲し銃弾が放たれるが、乱戦状態でむやみに発砲すれば味方にも危険が及ぶのは自明の理。
「ガッ!?」
案の定一人の兵士が流れ弾をくらい倒れる。
「無闇に攻撃するな!味方にあたるぞ!」
「味方を攻撃するなんて酷い奴もいたもんだなぁ!」
敵指揮官とエアの発言が重なるのとほぼ同時にエアの姿が消える。
次の瞬間には、味方を撃ってしまった兵士の目前に突如現れ、その兵士の両足を斬り落とし、喉を斬り裂いていた。
「かっ、……ヒュー、……ヒュー」
喉を斬られた兵士が喉を押さえながら苦しみ出す。
それをエアは心底楽しそうに見下ろしながら、
「ほ~ら、速く治癒してやんないとこいつ死んじまうぞぉ~」
わざわざ敵の衛生兵に声をかける。
するとエアが動きを止めたことを見逃さず、兵士達が一斉に発砲する。しかしエアは足下に落ちている兵士を盾にして銃撃を防ぐ。
「なッ!この外道めッ!!」
「ククッ。残念」
嗤いながら吐き捨てると、盾にした兵士を移動魔法を使って発砲してきた兵士達の元へ吹き飛ばす。
「衛生兵!得意でなくてもいいから治癒魔法使える奴、応急処置しろ!」
騒ぐ敵兵達を無視し、上空に飛び上がる。
すると先ほどまで撃つのをためらっていた兵士達も一斉にエアめがけて発砲を始める。
ライフル、自動小銃、迫撃砲、軽機関銃、重機関銃、歩兵砲と選り取り見取り、大量の弾頭がエア目掛けて殺到する。
しかしエアに届く前に突如弾が空中で静止する。
「いいぞ、このまま5分間待っててやる、好きなだけ撃ってこい」
エアが空中で静止していると、好機とばかりに銃弾砲弾ばかりでなく大量の魔法も押し寄せてくる。
さすがのエアも魔法を静止させることは出来ないのでおとなしく回避する。
「鬱陶しいんだよ、ハエ共が!!」
集ってくる魔法士達が次々と殺されていく。
ある者は首を落とされ。
またある者は四肢を斬り落とされる。
心臓を貫かれる者、腹を斬り裂かれ内臓を抉り出される者、バラバラに斬り刻まれる者。
祖国のために勇猛果敢に戦おうとした戦士達は一人の少女の欲求に屈し、血と肉の雨に姿を変えていく。
「さて、最後の仕上げだ」
エアの目前には大量に打ち込まれた銃弾と砲弾が空中で静止している。
「プレゼントを貰ったら当然、お返しが必要だよなぁ」
性格の悪い笑みを浮かべながら、エアは魔法を発動させる。
「私からのほんの些細な気持ちだ、受け取ってくれ」
空中に浮かぶ数千にも及ぶ銃弾と砲弾達が一斉に4500km/h程の速度で地上に向かって飛んでいく。
大量の悲鳴と爆音が響き渡る。
「アハハハハハハハハハハハハハ。そんなに喜んでくれるなんて、嬉しいなぁ」
狂気の滲んだ笑みで嗤い、悪魔のような呟きを漏らす。
「さて、そろそろ10分だ。名残惜しいが引き上げるとしよう、アイツらを追いかけんといかんしな」
部下達を追いかけようと踵を返すと。
「あぁ、そうそう」と思い出したように呟き、足下で這っている敵兵達に向かって大声で言った。
「レアリオン王国軍衛生兵諸君、せっかく仕事を用意してやったんだ、私に感謝しろよ!」
そう吐き捨て、エアは部下達を追いかけるため全速力でその場を後にする。
「悪魔……」
一人の少女によって滅茶苦茶にされたレアリオン王国アアルコナ駐屯地に一つの呟きが消えていった。
その後エアは見事に部下達を全員捕まえたが、研究員達に「まだ使うから壊さないでくれ」といわれ彼らは一命を取り留めたのだった。
読んでくださりありがとうございます。
なるべく矛盾など起きないようにするつもりですが、素人に何処まで出来るか……。
設定グチャグチャになる可能性も……。(^_^;