夜のバルコニー
夜になり、今日は何だか眠れなかった。
カイル様が準備してくれた部屋が嬉しく興奮していたのかもしれない。
窓から外を見ると、バルコニーがあった。
この部屋にバルコニーへの扉はない。どこから出るのか不思議だった。
バルコニーを目で追うと、ウォークインクローゼットまで続いている。
そのままウォークインクローゼットに行くと扉を見つけた。
開けるとやっぱりバルコニーに出られた。
少し寒いが、バルコニーから外を眺めていた。
ハンナさんは優しい。
お母様が生きていたらあんな感じだったのかしら。
お母様の思い出もないからよくわからない。
でもカイル様はもっと優しい人だと思った。
どうして婚約者候補の方々は皆出ていってしまったのかしら。
カイル様のことばかり考えていると、私を呼ぶ声がした。
「ルーナ?どうしたんだ?」
「カイル様?どうしてここに?」
「…バルコニーは繋がっているんだ。」
隣部屋はカイル様の部屋だ。
偶然同じ時間に出て来ていたのね。
「夜風は寒いぞ。」
カイル様は自分のガウンをかけてくれた。
「カイル様が風邪を引きますよ。」
「俺は丈夫だからいい。」
「ありがとうございます。」
カイル様の匂いがする。
恥ずかしくなり、ガウンに首を引っ込めるようにしていた。
「悩みがあるのか?」
「…よくわかりません。」
「この邸は好きか?」
「はい、好きになりました。」
「使用人もあまりいないし不便ではないか?」
「よくわかりません。」
「そうか。」
「カイル様は明日はお仕事ですか?」
「あぁ、朝食べたら行く。朝食は少し早いが一緒に食べないか?」
「はい。お昼は帰りますか?」
「昼は適当に騎士団で食べるな。ルーナはゆっくり邸で食べなさい。」
「…お昼を届けてもいいですか?」
「持って来るのか?」
「ご迷惑なら止めます。」
「いや、迷惑などではない。だが俺の騎士団は男ばかりだ。入り口で待っていよう。」
「楽しみです。」
「邸の馬車で来なさい。オーレンに準備させておくから。」
カイル様と二人恥ずかしながらも会話ができたことが嬉しかった。
明日は、頑張ってカイル様にお昼を届けよう。
カイル様の為に何かしたくて胸が一杯だった。