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五分はあっという間

マシューさん達を病院に送り、付き添いの為ハンナさんも一緒に行ってもらった。


カイル様を待っている間、リーマスという方のご令嬢とご子息が謝罪してきた。

話を聞くと、リーマスという方は元筆頭公爵の一人だったが失脚し、カイル様を恨んでいたらしい。


娘のアンバー様はアルベルト様の妃候補の一人だったが、アルベルト様は結婚しないと言っていた。

だが、アルベルト様が私に忍びで会いに来たり、私のデビュダントでダンスをしたりとした為、私のせいで妃候補の話がなくなったと思い込み益々恨んでいたらしい。

どうやら、私とカイル様が結婚した後、私がアルベルト様の王宮に愛妾として上がると思っていたらしい。


そんなことあるわけないのに。


「ファリアス公爵様は冷たく、女性と上手くいかない方と噂でしたので、アルベルト殿下の愛妾として上がる為の結婚だと父は思い込んでいました。ファリアス公爵が溺愛していると噂もありましたが、わざと噂を流しているのでは、と思っておりましたし…」

「私とアルベルト様はそんな仲ではありません!私にはカイル様だけです!」


思わず、声に力が入ってしまった。

カイル様は冷たい方でもないし、私を大事にして下さっている。

リーマス元公爵はそんな噂や思い込みで私達を恨んでいたなんて、信じられなかった。

でも、リーマス元公爵からしたら、娘の妃候補の話がなくなり、そんな時に私が現れ、変な噂を聞き、失脚したことにカイル様が関わっていたらそう思わずにはいられなかったのだろう。


しばらく一人になっていると、気がつけば、私達が騎士団に来てから何時間もたっていた。


執務室の外から、ざわつく声が聞こえ始めた。

カイル様が帰って来たのがわかった。


執務室のドアを少し開け、隙間から覗くとカイル様達の姿が目に入った。

無事で良かった。

そう思うと、カイル様と目があった。


「ルーナ!」


カイル様私を見つけると、周りも気にせず、真っ直ぐにやって来る。


「無事か?」

「はい、カイル様もご無事で良かったです。」

「ルーナ…?」


カイル様は、片手で私を抱き寄せ、少しだけ執務室に近付くな、と騎士の方々に言った。

すると、騎士の方がカイル様に言った。


「バーナード様もお待ちですよ!」


そうです。

バーナード様が客室で待ってますよ。


「…五分で戻る。五分だけ近付くな。」


そう言いながらカイル様は執務室のドアを閉めた。


執務室の中は二人っきりになった。


「あの、カイル様?皆様お待ちになってますよ…。」

「ルーナ、泣いていたんじゃないのか?」

「な、泣いてませんよ。」

「我慢していたのではないか?」


カイル様は、私が泣かないように我慢していることに気付いていたようだった。

抱き寄せたまま見つめるカイル様の言葉に、我慢していたものが切れてしまったように泣いてしまった。


「す、すみません、泣かないように頑張っていたんですが。騎士団長様の妻が泣いているとダメですよね。」

「ルーナ…今は誰もいない。俺の前で我慢をするな。」


カイル様が、力強く抱き締めてきて、カイル様の胸にしがみつき益々涙を流してしまった。


「…っ、怖かったんです。怖くて、」

「怖い思いをさせて悪かった。許してくれ。」

「カイル様は悪くありません。助けに来て下さって嬉しかったんです…」


カイル様は抱き締めていたかと思うと、私の頬を撫で始めた。


「頬が赤い。誰が殴ったのだ?オルセンか?髪も切ってしまって…」

「髪は伸びますし一部分ですから…カイル様の側に帰りたかったのです。」


そう言うと、カイル様は頬を撫で、頬や目に何度も口付けをしてくれた。


私はただ、カイル様にされるがままだった。


そして、きっと五分はゆうに過ぎていた。

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