お一人様は楽しい
今日はカイル様のお仕事もあり、泊まりで出かけることになった。
夜会にも出席することになっており、私も一緒に連れて来てくれた。
バーナード様やルーベンス様はカイル様と騎士団の管轄が近い為かよくお仕事の話の為にお会いするようだ。
今回も仕事の為お会いするようで、私は夜会まで留守番になった。
「本当に一人で来るのか?迎えに来るまで待てないのか?」
「お仕事の後に迎えに来てたら遅くなりますよ。夜会で待ち合わせした方が早く会えます。」
「なら、やはり護衛をつけるか。」
「私は王族じゃないから護衛なんていりません。」
心配性過ぎます。
馬車の手配もして下さり、準備万全なのにカイル様は心配性です。
「本当に大丈夫ですから、お仕事頑張って下さいませ。」
心配性なカイル様が行った後、私はやっと一人になった。
そして、私は初めての一人買い物に行こうと密かに決めていた。
いつもはカイル様が一人はダメだと言い、必ずハンナさん達の誰かと一緒だけど、今日はいない。
初めてのことに浮かれ気分で買い物に行った。
結婚の祝いにと、カイル様が昼寝ができる
ガゼボを下さった。
現在建設中だ。
ガゼボで昼寝が普通なのかよくわからないけど、よっぽど庭で昼寝がしたいのだと思う。
私には、あれほどのものは贈れないけど、せめて昼寝に使える枕でもお返しに贈ろうと思い一人買い物に来た。
雑貨屋にブティックに…と店がたち並び、ショーウィンドウを見てるだけでも楽しかった。
ホテルの方に教えて頂いたお店に行くと、高級そうな店構えだった。
でもカイル様が使うのだから質の良いものを選びたかった。
お店の従業員に聞きながら、一時間ほど悩み、やっと決めた。
ローズクオーツ色の枕2つと、少し長めの抱き枕を買った。
流石に持って帰れないので、家に配達を頼もうとすると、名前を記入した伝票を見て従業員は目を大きくして驚いた。
「ファリアス公爵様…?」
「はい、そちらに送って下さいませ。」
「あの、ファリアス公爵様が婚約なさったと新聞にありましたが…」
婚約期間はあっという間で、もう結婚したが、結婚のことはまだ新聞に載せないから秘密にした方がいいと思った。
「はい、カイル様と婚約しました。あの、送って下さいますよね。無理でしょうか?もしかして、配送は出来ないのでしょうか?」
私みたいな小娘が一人こんな高そうなお店にきたのはやはり無謀だったのかと、不安になった。
だが、違った。
「失礼しました!すぐにお部屋にご案内致します!」
従業員全員が、バタバタし始め、店長までやってきた。
大体お部屋って何?
急いでお茶を!とか聞こえるし。
「あの、私買い物にきただけですので。それにもうお支払いもすんでますし…」
「気付かなかったとはいえ、失礼しました!」
名乗らなければ、わからないのは当然だと思う。
そもそも、歳の差もあるし、私がカイル様の横にいて明らかに釣り合わない。
「私が偉いわけではないので、どうか皆様と同じようにして下さい。」
なんだか、申し訳ない気持ちだった。
でもカイル様の婚約は話題にはなるのだろうと思う。
「私が、カイル様のお相手と言ってもびっくりしますよね。もしかして、噂になってますか?」
「ファリアス公爵様は有名ですので。名家でございますし。」
絶対そんな噂じゃないと思う。
とにかく、配送はして頂けるので良かった。
これで、カイル様は昼寝を満足できればいいと思った。
お店を出ると、クレープを片手で持って食べている人もいてびっくりした。
カイル様のお邸では、クレープはお皿にナイフとフォークで食べる。
見てると食べたくなり、一つ買ってみた。
クレープをかじるなんて初めてだけど、美味しい。
一人で買い物し、ブラブラするのも初めてで、全てが新鮮だった。
夜会の準備の時間まで、私はお一人様を堪能していた。




