嫌いになるわけない (カイル様視点もあります)
邸に帰ると、ルーナがお帰りなさいませ、と出迎えてくれる。
あの笑顔を見ると、そのまま抱き上げて連れて行きたくなる。
それくらい、ルーナは可愛い。
正直、夜会に連れて行きたくない。
絶対に他の男が見るはずだ。
だが、仕事で頼まれ週末には夜会に出ることになった。
だが、今日はそれより気になることがある。
ルーナの食が益々少ない。
夕食後、オーレンに聞くとアフタヌーンティーもお茶だけだったと言う。
「ハンナさんが言うには、結婚式までカイル様がもう少し我慢をして下されば、とぼやいてましたね。」
「何の我慢だ。とにかく、今夜はお茶に何か菓子でも出しといてくれ。」
風呂から出ると、温かいお茶に、甘いブラウニーが準備してあった。
ルーナは甘いものが好きだからきっと食べてくれると思った。
だが、今日は遠慮します。と言った。
ルーナが言うには、太ったらしい。
だがこの細い腰のどこに肉があるのか。
「む、胸だけが大きくなって、ウェディングドレスがキツかったんです!」
ハンナがぼやいていた、というのはこれか。
ドレスは直せばいいし、大きいと何が問題なんだ。
顔を覆うほど困る理由があるのか。と思ってしまう。
こんなことでルーナを嫌うわけがない。
むしろ、可愛くて良いところしかない。
「カイル様は、胸が大きい方がいいのですか?」
「何をいい出すんだ。何を。おかしなことを言ってないで食べなさい。」
ルーナなら、大きくても小さくても、いい。
だが、この流れで、俺がルーナの大きい胸が好きと言ったら変態じゃないのか!
絶対に言わないぞ!
とにかく、ダイエットはさせん!
菓子を食べさせねば。
「半分こして下さい。」
「ダイエットは止めるんだぞ。」
「大きくなってもいいですか?」
「問題ない。」
ルーナの胸が大きくなっても可愛さは変わらん。
むしろもっと可愛くなるかもしれん。
全く問題はないな。
栄養失調になる方が困る。
菓子をルーナに食べさせると、パクッと口に入れ、その姿も可愛く見える。
可愛い過ぎて、もっと抱き締めたいくらいだ。
「目を瞑って下さい!」
「何故食べるのに目を瞑るんだ。」
「何か、色々無理です。」
何が無理なんだ。
「…カイル様、すみませんっ」
そう言いながら、ブラウニーの半分を勢いよくルーナが食べた。
「…食べさせてくれるんじゃないのか?」
「む、無理でした…」
食べさせてはくれなかったが、あまりに可愛い過ぎて、思わず笑いが我慢出来なかった。
夫婦になってもこの可愛いさは全く変わらん。
このまま離すのが惜しくなり、そのままベッドに連れて行き、二人で朝を迎えた。




