嫌いになるわけない
少しだけダイエットしようと、今夜の食後のデザートをフルーツにしてもらった。
そして夜、支度をしてカイル様の部屋に行った。
恐ろしいことに、今日に限ってお茶だけでなくブラウニーまで準備してあった。
「カイル様、これは?」
「今日は、あまり食べなかっただろ?」
「…今日は、遠慮します。」
「腹が減らないのか?元々、少食なんだ。もっと食べなさい。」
どうして今日に限って、準備するんですか。
ブラウニーとお茶を前にして、カイル様が私をソファーに座らせる。
いや、座らせると言ってもカイル様の膝の上に乗せられている。
「オーレンも心配してたぞ。今日はアフタヌーンティーもあまり食べなかったと聞いたぞ。何か、悩みでもあるのか?」
「言っても、嫌いになりませんか?」
「嫌いになるわけないだろ。」
どうせ、この態勢じゃ逃げられない。
きっと言うまで離さないよね。
「…実はですね、…たんです。」
「なんだ?」
「…太ったんです。」
「…ルーナのどこが太っているんだ?」
そう言いながら、カイル様は腰やお腹をさすってきた。
私は、さすってきたカイル様の手を抑え抵抗している。
「お腹ではなくてですねっ…」
もう、勢いに任せて言ってしまおう!
「む、胸だけが大きくなって、ウェディングドレスがキツかったんです!」
うぅ、きっとカイル様は呆れていると思う。
カイル様の顔が見れず、両手で自分の顔を隠したまま言っていた。
「それは、何か問題があるのか?」
「ドレス直しをすることになりましたし…嫌いになりませんか?」
「全くないが…」
全くない?
ということは、カイル様は大きい方が好きということかしら。
「カイル様は、胸が大きい方がいいのですか?」
「何をいい出すんだ。何を。おかしなことを言ってないで食べなさい。」
そう言いながら、カイル様はブラウニーを取り食べさせようとしてきた。
「半分こして下さい。」
「ダイエットは止めるんだぞ。」
「大きくなってもいいですか?」
「問題ない。」
カイル様の好みがよくわからないまま、ブラウニーを食べさせられた。
何故か、食べるとカイル様は満足そうな笑顔を見せた。
「半分は食べて下さいね。」
「食べさせてくれるなら食べよう。」
顔が近いです!顔が!
「目を瞑って下さい!」
「何故食べるのに目を瞑るんだ。」
「何か、色々無理です。」
だって近いんです!
カイル様は、グイッと益々抱き寄せるし、夫婦になってもまだまだカイル様にときめいている自分がいる。
「…カイル様、すみませんっ」
そう言いながら、ブラウニーの半分を勢いよく自分の口にパクッと入れた。
「…食べさせてくれるんじゃないのか?」
「む、無理でした…」
カイル様は、横を向いて少し笑っていた。
「週末に夜会に招待されている。一緒に来てくれるか?」
「は、はい。」
「ダイエットもするんじゃないぞ。」
「わ、わかりました。」
そのまま、カイル様はご機嫌でベッドに入った。
結局、一度もダイエットはしないまま、週末には夜会に行くことになった。




