ハロウィーン (時系列は気にしない)
今日は、ハロウィーンの日。
コスプレをして、街の子供達がお菓子を取りにやってくる。
騎士団でも、何ヵ所かに別れ街でお菓子を配るらしい。
私も、カイル様と一緒に参加する事になった。
私以外の騎士団員の奥様方も、参加される方はおられるが、奥様方の参加人数が少ない為女性は一ヵ所に固まらないようにそれぞれ別れて配置された。
私はヒューバート様が準備してくれた、魔女の格好をした。
カイル様は狼の着ぐるみを着る予定になっていたが、カイル様は背が高すぎてもうサイズがなかった。
結局、吸血鬼の格好に変更になった。
「カイル様、準備できました?」
「本当にこれで行くのか?」
部屋に入るとカイル様の吸血鬼姿は格好良かった。
黒いタキシードに黒いマントをスラッと着こなし、カイル様にピッタリだと思った。
でも、カイル様は何故か固まった。
「…ルーナ、足が出過ぎじゃないか?」
「ヒューバート様が魔女の格好を準備してくれていましたよ。」
(ヒューバート〰️!)
カイル様は、拳を握りしめ、何だか心の声が聞こえそうだった。
「私の魔女は変ですか?」
「変ではない。その、可愛い過ぎて他の男が寄って来るかも知れん。俺のマントに入ってなさい。」
カイル様が、バサッとマントを持ったまま私を中に入れて一緒に集合場所に行った。
「さぁ、今日はハロウィーンだ。廻ってくる子供達に菓子を配るぞ。」
用意してあったお菓子のかごを持ち、いつでも子供達がきてもいいようにしていた。
でも、子供達は全く来なかった。
何故か、逃げて行く子供もいた。
「カイル様、どうして子供は来ないのでしょうか?私の魔女が変ですか?」
「それはない。ルーナは可愛いからな。」
私達がそんな話をしている間、騎士団員達は原因がわかっていた。
「おい、団長の吸血鬼姿が迫力がありすぎなんだけど。」
「怖がって子供達が近付かないどころか、逃げて行っているぞ。」
「誰かヒューバートさん呼んで来いよ。俺達じゃ団長に言えないだろ。」
「あの吸血鬼姿を見て隣にいるルーナ様は頬を染めてニコニコなんだけど…」
まさか、騎士団員の方々がこんな話をしているなんて夢にも思わなかった。
騎士団の方の一人が、恐る恐る私を呼んだ。
「あのすみません、ルーナ様ちょっといいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「ちょっと、こちらでお話があるのですが。」
「はい。」
「ルーナに何の話だ?今ここで話せばいいだろう。」
カイル様はギラッとにらんだ。
「だ、団長!すみません!ルーナ様に話があるんです!」
「カイル様、少しだけ待ってて下さい。すぐに戻りますから、」
こちらを見ながら睨み付けているカイル様を後ろに団員の方々の話を聞いた。
どうやら、カイル様の吸血鬼姿が怖すぎて子供達が近寄れないらしい。
だから誰もお菓子をとりに来なかったとわかった。
「すみません!俺達では団長に言えません!ヒューバートさんもいませんし、ルーナ様からお願いします!」
全く気が付かなかった。
あんなに格好良いのに、カイル様が怖くて子供達が誰一人近寄れなかったなんて。
「あの、カイル様。」
「何の話だったんだ。」
確かに迫力はあるかもしれない。
「実はですね、カイル様が怖くて子供達がお菓子をとりに来れないそうです。…その牙だけでも取りますか?」
とりあえず、歯につけていた牙だけでもと、取ったがあまり変わらない気がする。
うーん、どうしましょう。
「俺が怖いなら、引っ込んでいるぞ。」
「でも、一緒にお菓子を配ってみたいです。」
「確かに、ルーナは可愛いから一人残しては行けないが。」
「い、いえ、可愛くはありませんが…」
カイル様はさっきからどうしたのかしら。
「…もしかして、不機嫌ですか?」
「…不機嫌ではないが、ルーナの魔女姿に他の男が近寄らないか気にはしている。」
それで、周りは怖いと感じていたのね。
全く気が付かなかった。
何だか頭を抱えそうになってしまった。
「あの、カイル様。」
「なんだ。」
「カイル様にくっついていますから、誰も私に声はかけませんよ。」
カイル様は一瞬、ムッとしたかと思うと、ヒョイと私を持ち上げた。
「これだけくっついているならいいな。」
「こ、これは私が恥ずかしいです!」
スカートが短いから、見えそうになってます!
抱き上げられ、カイル様の肩から頭にかけてしがみついている私のスカートの中が見えないように、カイル様がマントで隠してくれていた。
「…機嫌がよくなりましたね。」
私の恥ずかしさと引きかえに、カイル様は少し、笑ってくれた。
これでやっと、子供達にお菓子を配ることができてイベントは終了した。




