嫉妬は空回りでした
ドアのノックの音がし、ルーナとミランダ王女がやってきた。
「お話は終わりましたか?入ってもいいでしょうか?」
ルーナに、構わないと言い部屋に入れると、アルベルト殿下からの詫びの品を持っているのに気付いた。
何故、持ってくる。
そう思ってしまった。
「兄上、ルーナに全て話ましたからね。」
「話す必要があるのか?」
「あります!ルーナが困ってしまいますわ!」
静かなアルベルト殿下はミランダ王女に押されぎみだった。
「一体何の話だ。大体何故、アルベルト殿下からの贈り物を持って来た?」
「カイル様、これは贈り物ではありませんでした。」
「詫びの品と言いたいのか?」
「違います。」
珍しくルーナが、ハッキリと言いきった。
「これは、母の形見でした。」
母の形見?
何故、アルベルト殿下のことでルーナの母の形見の話になるのかわからん。
何の話か全くみえなかった。
ルーナは、ミランダ王女から聞いた話を全て話してくれた。
アルベルト殿下を見ると、照れ隠しなのか、横を向き、お茶のおかわりしたりしていた。
「アルベルト様、すみませんでした。私が何も覚えていないばかりに…」
ルーナが、アルベルト殿下に声をかけると、やっとルーナを見ていた。
「私が持っていてもいけないものだし、いつか返したいと思っていた。覚えてないならそれでいいと思い、話せずに悪かった。」
では、アルベルト殿下は病気の為身の回りの整理をし、ルーナがただ懐かしかっただけか!?
確かに、ルーナに好きとかは言わなかったが!
ルーナとアルベルト殿下は和解した友人のように微笑んでいる。
「ですから。カイルの嫉妬は空回りですのよ。」
ミランダ王女、この雰囲気の中で何故言う!
空気を読め!空気を!
そして、空気を読んだのはグレイだった。
「ミラ、そのくらいにしておけ。カイルが困っているぞ。」
ミランダ王女は、本当かしら?と言うような顔で俺を見た。
恐らく、ミランダ王女には俺の表情が読み取れないほど、無表情だったのだろう。
それにしても、今までのは何だったのかと思うほど、ルーナには驚かされると思った。
いや、アルベルト殿下も何故言わない!
そもそもはアルベルト殿下が紛らわしいのが問題だ。
いや、俺がここまで嫉妬すると誰も思わなかったかも知れん。
「とにかく、夕食の準備をするぞ!」
皆がそれぞれ、やれやれという雰囲気で着替えに向かった。
ルーナの着替えの時間を見計らい、部屋に行くと、ちょうど髪を結っていた。
「どうされました?」
「いや、色々誤解が解けたようだからな。…母のものは嬉しいか?」
「よくわかりません。でも、不思議な気持ちです。母の思い出がないと思っていたのが、実はあったのかと気付きました。」
「そうか、良かったな。」
「はい。」
ルーナを見つめると、ハンナは気をきかしたのか、そっと部屋から出て行った。
ルーナの隣に椅子を引き座ると、ルーナはじっと見た。
「色々すみません。カイル様に不愉快な気持ちにさせてしまいました。」
「いや、俺が大人げなかったのだ。」
「大人げ…ですか。怒っていませんか?」
「怒ってはいない。」
怒る理由がなかった。
それに、ミランダ王女から話さなければ、俺もルーナも信じなかったかも知れん。
あの髪飾りが、アルベルト殿下がずっと持っていたと俺達は知らなかったから。
「あの、カイル様少しだけ目をつむって下さい。」
ルーナは、呆れたのだろうかと思うと、キスをしてきた。
「あの、私、カイル様しか好きになりませんから…」
目を開けると、恥ずかしがるルーナの顔が目の前にあった。
「まだ、目を開けちゃダメですよ。」
「もう、遅い。」
ルーナの首に腕を回し、抱き寄せるように顔を寄せた。
夕食の着替えは、もう皆終わらせていると思うが、アルベルト殿下を少し待たせても構わないと思いルーナを抱き締めていた。




