デビュタント当日
デビュタント当日。
俺はルーナの支度を待っていた。
今日のルーナはきっと綺麗だろう。
しかし、ルーナが心の準備が出来ていないとは、気付かなかった。
あの時の雰囲気はなんだったのかよくわからん。
まさか、酒まで飲むとは予想してなかった。
あの日から、ルーナには酒を禁止している。
俺がいない時は、筋肉の話をオーレンにしていたらしいし、よくわからん時がある。
それに、ルーナは少しだけ社交的になった気がする。
良いことだと思うが、ルーナは可愛いからやはり心配になる。
他の男が近寄らないようにしなければならん。
「カイル様、お待たせしました。」
扉から出てきたルーナは、言葉に出来ないほど綺麗だった。
「ルーナ、綺麗だぞ。」
「ありがとうございます。カイル様のおかげです。」
ルーナをエスコートし、城のホールに行くとルーナは緊張していた。
「カイル様、デビュタントではずっと一緒にいて下さいね。」
「ダンスが終われば、ホールの庭に行くか?」
「庭があるんですか?」
「俺が社交界に初めて出た時は、面倒くさいから庭に逃げた。」
「じゃあ、今度は一緒に逃げましょうね。」
「そうだな。」
可愛いことを言ってくれる。
裾の長いドレスは歩きにくいかと思ったがルーナは優雅に歩いているように見え、この日の為に頑張ったのだろうと感心した。
先ずは、陛下に挨拶に行くことになり、名前を呼ばれるのを待っていた。
呼ばれる順番も決まっており、ルーナと俺は一番先頭で並んだ。
「ルーナ・ドワイス令嬢。付き添い人カイル・ファリアス公爵様です。」
名前を呼ばれ、ルーナをエスコートし陛下の前に行くと、中心に陛下が座り左右に王妃とアルベルト殿下。王妃の隣には一段下にミランダ王女とグレイが立っていた。
ルーナは緊張を隠し、ドレスの裾を少し持ち優雅にお辞儀した。
これで陛下へのお目通しは終わるはずだが、アルベルト殿下がルーナに声をかけた。
いや、入って来てからずっとルーナを見ているのに気付いていた。
「ルーナ、今日は一段と美しいですね。」
当然だ。
俺のルーナだ、と言いたい気持ちだった。
「ありがとうございます。」
ルーナはもう一度、お辞儀をして言った。
「陛下、では次の者が入りますので。」
そう言って、ルーナを連れて挨拶を後にした。
皆の挨拶が終わり次は、陛下の前でホールでダンスが始まる。
ここでも、ルーナと俺が一番最初に始める。
「カイル様、私上手くできますでしょうか?」
「ルーナは上達したから大丈夫だ。」
「…皆様がカイル様を見てますね。失敗したらどうしましょうか。」
「皆が見ているのは、ルーナが綺麗だからだ。」
確かに、俺が社交界に来ているのは少なからず噂になるとルーベンス達も言っていた。
一緒にいるルーナも注目しているのだろう。
だが、キャバリエ達がルーナに注目しているようで、不愉快になりそうだった。
「ルーナ…」
ルーナを呼び、振り向くと同時に、ルーナの額に軽くキスをした。
「カ、カイル様…?」
これで、他の男が近付かなければいいのだが。
「ルーナ、扉が開くぞ。一緒に来なさい。」
一斉に音楽が流れ始める。
頬を染めているルーナを見つめながら、ダンスホールの中心にエスコートをした。




