ルーナの心配
カイル様に言われて、ハンナさんと風呂にきた。
ハンナさんはマントの下のボロボロの服を見て、呆れると思ったが優しく撫でてくれた。
「お可哀想に、怖い思いをされたんですね。」
我慢していた涙がまたでて来た。
「ルーナ様、ゆっくり温まりましょうね。」
服を脱ぎ、体を洗うと、手足に擦り傷があり、押し倒された時にできたものだと気付いた。
本当に怖かった。
当てもなく雨の中歩き、自分がバカだと思った。
カイル様が助けて下さらなければどうなっていたか。
また震えてしまった。
風呂を出ると綺麗なネグリジェをハンナさんが出してくれていた。
「カイル様のお母様のものでサイズは大きいですが、これしかなくて…。」
「私が着てもいいのでしょうか?」
「構いませんよ。ほとんど袖を通していませんから。」
「すみません、ハンナさん。ありがとうございます。」
ネグリジェを握りしめまた泣いてしまった。
部屋に帰る途中、カイル様とオーレンさんが話していた。
カイル様は少しくしゃみをしていて、私のせいで風邪を引いたのではと罪悪感がでて来た。
「…ハンナさん、カイル様にお茶を持って行きたいのですがダメでしょうか?もし、お風邪でも引いたら、私のせいです…」
「…では、一緒に準備しましょうね。」
ハンナさんは優しく微笑んでくれた。
ジンジャーティーをハンナさんと作り、カイル様の部屋に行くとカイル様はもう寝ていた。
お顔を見ると少し赤い気がしたが、ハンナさんは大丈夫ですよ。と言った。
「少しだけここにいてもいいですか?少ししたら部屋に戻りますから。」
「ええ、わかりました。」
ハンナさんがでていき、カイル様のナイトテーブルにある洗面器でタオルを濡らし額にかけた。
やっぱり少し熱い気がする。
「カイル様、すみません。」
そのまま、カイル様のタオルを何度もかえ、気がつけばカイル様のベッドに凭れるように眠っていた。
目が覚めると、ダルかった体が軽くなっていた。
疲れていたのか、夕べの雨のせいかわからないが、一晩で楽になるとは我ながら頑丈だと思った。
体を起こすと額のタオルが目の前に落ち、ベッドにはもたれ掛かるようにうつ伏せで寝ているルーナに驚いた。
何故ここにいるんだ!?
まさかこのタオルはルーナがしたのか?
一晩中看病でもしていたのか?
あんなに怖い目にあっておきながら俺の心配をしていたのか、と思うとやはり今までの令嬢とは違うと思った。