執事は見た 2
カイル様が戦に行かれ、お嬢様は邸でデビュタントに向け、いつもの練習をしているがどこか元気がない。
我々にとっては初めてではないがお嬢様にとったらカイル様が戦に行くことが心配なのだろう。
勿論我々もカイル様の心配はしているが…。
しかし、少し驚いた。
お嬢様はカイル様に行かないで、と止めるかと思ったが止めなかった。
毅然とした態度にはまだ遠いが、人前で泣くこともなくきちんと見送った。
やはり、カイル様にはお嬢様で間違いないと確信した。
「お嬢様、今日の午後はお休みにしましょうか。我々がお供いたしますので、息抜きにお茶でも行きましょうか。」
「お茶ですか…。オーレンさん、私にもカイル様みたいに筋肉があったら一緒に戦に行けたかしら?」
何を言っているんですか!何を!
元気がないと思いきや、何を考えているんですか!
お嬢様がカイル様みたいにゴツくなって誰が喜びますか!
「お嬢様には必要ありません。カイル様みたいに筋肉質になっても誰も喜びません。」
「そうでしょうか。カイル様やヒューバート様みたいに筋肉があれば騎士になれたかもしれません。」
「カイル様達のは訓練の賜物です。お嬢様が騎士を目指す必要はありません。」
カイル様やヒューバート様みたいな戦闘タイプを目指す気ですか!
「お嬢様、息抜きをしましょう!」
まさかこんなことを考えていたなんて。
カイル様がお気に召しただけはあるというか、なんというか。
とにかく、息抜きに連れていかねば!
お嬢様の支度をし、悪い虫がつかないように高級レストランの個室にハンナさんと三人で向かった。
レストランでお茶をしながらもお嬢様はまだ筋肉の話をしていた。
「カイル様みたいにたくましければ、お役に立てましたでしょうか。ダンスの練習でたくましくなりますでしょうか。」
「ダンスは戦闘訓練ではありません。優雅にです。」
「そうでしょうか。」
「そうです!」
ハンナさん、何か言って下さい!
お嬢様が筋肉ダルマを目指そうとしています!
ハンナさんは、私の視線に気付きニッコリした。
「お嬢様は可愛いらしいので筋肉は必要ありませんよ。むしろ痩せていますのでもう少し食べられた方がよろしいですわ。」
さすがです、ハンナさん。
私のアイコンタクトに気付きましたね。
「そうですか。少しお花を摘みに行って来ます。」
そう言うとお嬢様は席を立たれた。
「どう思いますか?ハンナさん」
「そうですね、やはりカイル様がいないと不安なのでしょう。しかも、戦ですからね。」
ご友人でもいれば、気晴らしができるかもしれませんがお嬢様には誰もいない。
やはりカイル様の存在は大きいですね。
「それと、メイドが少し話していたのですが…」
「何か問題でも?」
「二回ほど、お嬢様のベッドの下シーツが乱れてない時があったようで…。」
「寝相が良いのでは?」
「…実はカイル様のベッドが乱れてない時もありまして…。」
…我慢出来なかったのでしょうか。
きっとその日はお嬢様の部屋で寝たのでしょう。
「…カイル様もお年頃です。見なかったことにしましょう。」
「そうですね。」
どのみち、邸内のことを口外する者はいない。
問題ありません!
カイル様の無事を確認したいですし、明日には騎士団に確認に参りましょうか。
情報があればいいのですが。
ハンナさんと話しながらお茶を飲んでいたのですが、お嬢様が遅い為、心配になりハンナさんと少し様子を見に行くことにした。




