出陣
部屋に連れて行かれ、カイル様は真剣な顔で話された。
「明日から、戦に出る。」
緊急召集はこの為かと、言葉が出なかった。
カイル様が言うには、どこの国にも属してないある辺境の村が、不作の為、領主が国の保護と定期的な援助を貰う為、国に属すことを決めたが、反対派と争っているらしい。
領主は城に捕らわれ、今回は領主の救出と反対派の鎮圧に向かうらしい。
第1騎士団が先に向かっているが、カイル様の騎士団は物資の補給部隊を連れて行くとなったらしい。
「カイル様は前線に出るのですか?」
「俺とヒューバートと数名の騎士は第1騎士と合流次第、戦に加わる。残りの者達は補給部隊として連れて行く。明日の朝には積み荷が完了するから、完了でき次第出発する。」
「無事に帰って来ますよね?」
「ルーナの誕生日までには必ず帰る。」
「誕生日はいいんです。無事に帰ってきて下されば、それだけで…」
本当に誕生日なんかどうでもいい気持ちだった。
無事なら、いいと思っていた。
カイル様の腕の中に包まれるように入り、カイル様の体温を感じていた。
「…翌朝は早いから一緒に朝食は取れないが、見送りに来てくれるか?」
「必ず行きます。」
その日は早めに夕食をとり、二人で一緒にベッドに入った。
翌朝、朝日が昇りきる前に、カイル様は騎士団に行く時間になった。。
「オーレンに必要なことは話しているから、心配は要らないからな。」
「私は大丈夫です。カイル様が帰って来るのを待ってます。」
「出かける時はオーレンかハンナと出かけなさい。一人はダメだぞ。」
「わかりました。」
「…心配するな。長い戦ではない。すぐに帰って来る。」
不安そうな気持ちが顔に出ていたのか、カイル様が優しく抱き締めてくれた。
「体に気をつけて下さい。無事をお祈りします。」
そのまま、カイル様は優しくキスをして下さった。
玄関まで見送り、カイル様はオーレンさん達に、私のことを頼むぞ。と言っていた。
こんな時まで私のことを考えてくれるのが申し訳なかった。
朝食は一人でとったが、カイル様が心配でほとんど食べられなかった。
「お嬢様、少し早いですが、カイル様のお見送りに行きましょうか。」
「早めに行ってお邪魔になりませんか?」
「大丈夫ですよ。」
オーレンさんに連れられて、邸の使用人皆で、街外れの騎士団集合場所に行った。
集合場所につくと、カイル様が積み荷の確認など真剣な顔で仕事をしていた。
カイル様は私に気付き少し優しい顔になった。
カイル様はヒューバート様に声をかけ、ヒューバート様が私のところにきた。
「ルーナさん、こちらで団長を待って下さい。」
「ヒューバート様もカイル様と前線に出るんですよね。」
「まあそうですね。」
ヒューバート様は、いつもと同じ話し方だが、なんとなく雰囲気が違った。
マントの下が黒い服だったからかもしれない。
「ヒューバート様、お気をつけ下さい。」
「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。」
ヒューバート様に言われた場所に立ち、騎士団を見ていると、本当に行ってしまうんだと実感した。
気がつくと、騎士達のそれぞれの家族達もきており、近くではないがお互いに会釈してみた。
「ルーナ、こっちに来なさい。」
準備が整ったようで、カイル様が呼びながらお互いに近付いた。
「ルーナ、一人残してすまないが、待っててくれ。誕生日までには必ず帰る。」
「お待ちしています。」
皆が見ている前だがカイル様は堂々と抱き締めてくれた。
カイル様が頬に口付けをし、私も同じようにカイル様にした。
「ご武運をお祈りしています。」
カイル様は私を抱き寄せたまま、オーレンさん達に、ルーナを頼むぞ。と言った。
カイル様やヒューバート様達が、颯爽と馬に乗りカイル様が出発の合図をした。
「第3騎士団出陣!!」
「「「オオオオオオー!!」」」
カイル様を先頭に、一斉に駆け出し、土煙と共に見えなくなった。




