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表情豊かな方でした

翌日、いつも通りダンスの練習をし、早めの昼食のあとはオーレンさんとマナーの練習だったがオーレンさんは今日はお休みしましょうと言った。


「お嬢様、バーナード夫人からお茶のお誘いが来ました。」

「私にお誘いが?」

「ええ、ですからこちらにてお茶をとご招待いたしました。」

「来て下さるんですか?嬉しいです。」


バーナード夫人は、なんというか包容力のある感じで好感の持てる方だった。

夫人をお出迎えするのに少し早いと思ったが玄関に行った。

玄関ホールには大きなツリーにあの熊の人形が二つ寄り添いぶら下がっているのを見ると一晩いないだけなのにカイル様が恋しくなった。


オーレンさんに声をかけられバーナード夫人がいらしたので玄関の外に出た。


馬車から降りて来たのは、バーナード夫人となんとメアリー様だった。


「一緒にと言われてどうしようかとも思ったのですけど、ルーナさんと顔見知りと言われたので来たのですけど構わないかしら。」


これは試練かしら。

カイル様は気にするなと言われたり、メアリー様達のことはどうでもいいと言われていたけど。

…私と顔見知りになるのかしら?


「オーレンさん、メアリー様も一緒でいいですか?」

「お嬢様がいいといわれるなら、邸に入れます。」

「ではお願いします。」


オーレンさんも覚えているのかしら?

なんだか迫力があるように見えるわ。


玄関ホールに入ると、夫人はすぐに大きなツリーに目に入ったようで誉めて下さった。


「まあ、立派なツリーですね。」


するとオーレンさんはすかさず、話した。


「カイル様がお嬢様の為に準備しました。」

「まあ、カイル様が?」


夫人はまあ、とニコニコだが、メアリー様は少し驚いていた。


「熊の人形も並んで飾ってますのね。」

「それは、カイル様がお揃いで買って下さり、一緒に飾りました。」

「まあ、微笑ましいですわね。」


カイル様が目立つ所にとあの場所に飾ったからよく見えるのね。と思った。


居間にラウンドテーブルを準備しており、三人で座ると、側にはオーレンさんが立っていた。

お茶を飲みながら、メアリー様は懐かしいわ、と話していた。


「私もここに住んでましたのよ。」

「カイル様から聞きました。」

「あなたもあの部屋は小さいでしょう?」

「あの部屋でも不都合はありませんでしたが…」


部屋が今は違うと言っていいのかと、言葉に詰まった。


「お嬢様の部屋はカイル様が直々に変えました。」


オーレンさんがフォローしてくれた。


「あの部屋じゃないの?」

「可愛い部屋をカイル様やオーレンさんが準備して下さいました。」

「カイル様はルーナさんに夢中ですからね。」


夢中かどうかはわからないけど、特別と思いたい。

大体、メアリー様はどうして来られたのかわからないし、カイル様がいないことはわかっているはずなのに。

うーん、と悩んでいると、夫人がオーレンさんに話しかけた。


「オーレンさんから見て、カイル様とルーナさんはどうですか?」

「私がお話しても?」

「ええ、お願いします。」


夫人に言われてオーレンさんは、では失礼します。と話し出した。


「お二人はお似合いです。お嬢様はカイル様が唯一特別とされる女性です。あのように贈り物をするのもお嬢様だけです。」


オーレンさんの言葉にメアリー様が目を見開きびっくりしていた。

メアリー様の驚きに私もびっくりした。


「カイル様が贈り物を?どうやってお願いしたの?」


お願い?あの熊の人形はお願いになるのかしら。

ニコニコしてるかと思うと急に質問してきたり、驚いたり、メアリー様がよくわからない。

また、言葉に詰まるとオーレンさんがフォローしてくれた。


「お嬢様はお願いはしません。お嬢様のものは全てカイル様が買うことになっていますし、毎日カイル様自身が贈り物を買って帰ります。」

「沢山頂いて申し訳なく思ってはいるのですが…」

「毎日帰って来るの?」

「はい、毎日一緒に食事しますから。いつも部屋の前で待っててくださっています。」


メアリー様はお茶を一口飲んだかと思うと、ゆっくり聞いてきた。


「…あの、ルーナさん?」

「はい、どうされました。」

「それ、カイル様のお話ですよね?」

「はい、カイル様のお話です。」


メアリー様は目が点になり、つられて私も目が点になった。


その時、夫人がクスクスと笑い出した。


「メアリーさん、わかったでしょう。カイル様にはルーナさんがいますのよ。」

「ふ、夫人!」


メアリー様は、慌てて立ち上がった。


「ルーナさん、急にメアリーさんを連れて来てごめんなさいね。」

「いえ、私の方こそ、お茶会は初めてで上手く出来ずすみません。」

「いいえ、急な来客にも嫌な顔せずお出迎えされて立派ですよ。」


二時間ほどのお茶会だったが、もうすっかり夕方だった。


「バーナード夫人、メアリー様お気をつけて下さいませ。」

「ルーナさん、では失礼しますわ。」


メアリー様も何だかんだと、挨拶をして馬車に乗り込んだ。

メアリー様が乗り込んだのを見計らってか、夫人が近付き話しかけて来た。


「メアリーさんはこれできっとカイル様を諦めますわ。ルーナさんがカイル様に大事にされているのがわかったと思いますから。たまには、自慢した方がよろしいですわよ。」

「もしかして、夫人のところにメアリー様はお話を持っていかれたのですか?」


まさか、今頃になりまた結婚の話を持ってきたのかと思った。

夫人はニッコリ笑った。


「カイル様は第2夫人もとられないでしょうし、メアリーさんももう私を頼ることはないでしょう。」


第2夫人!?

まさか、そこまでメアリー様は考えていたの?

思わず、口に手を当てびっくりしてしまった。


その時、邸の敷地内に馬がもの凄い勢いで入って来た。

すぐにわかった。

カイル様だと。


カイル様は、私達の前で馬からおりてきた。


「ルーナ、今帰った。客か?」

「カイル様、おかえりなさいませ。バーナード夫人とメアリー様です。」


カイル様は、馬車に入り込んでいるメアリー様を見た後、私を片手で抱き寄せ額に軽く口付けをした。


「カ、カイル様!?」


びっくりしてしまった。

夫人達も見ているのに、と思った。

思わず、両手で額をおさえてしまった。


「夫人、今日はどんなご用ですか?」

「ルーナさんとお茶をと思い、お邪魔させて頂きました。カイル様私達はこれで失礼します。」

「お気をつけ下さい。」


夫人達の馬車を見送ると、カイル様がいつもの無表情で聞いてきた。


「夫人ならともかく何故メアリーまで?」

「多分、夫人にカイル様との結婚のお話をしたのかと。」

「結婚?馬鹿馬鹿しい。ルーナ以外とするわけない。」

「夫人もそう思って連れてきたような感じでした。」

「嫌なら邸に入れなくていいのだぞ。」

「嫌ではなかったと思います。なんというか、メアリー様は表情の豊かな方でして…。」


目が点になった時は本当にびっくりした。


「お仕事は大丈夫ですか?夜に帰られると思ったのですが…」

「そのことで話がある。」


カイル様は、オーレンさんに早めの夕食と朝は早いと告げ、私の肩を寄せて足早に部屋に帰った。




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