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狙う女はたくましい

私はハーシーズ侯爵の娘、メアリー・ハーシーズ。

未だに、私ほどのものと釣り合う方がおらずまだ独身のまま。

唯一素敵だと思ったのは、カイル・ファリアス様だけ。

あの子供は誰かしら。

(※ルーナのことです。)

お父様にもう一度、カイル様との結婚をお願いしなくちゃいけないわ!

カイル様に似合うのは、あんな子供ではなく、私だけだわ。


そう考えながら、カイル様との思い出を思い出していた。



9年前


「やったぞ!メアリーのデビュタントでカイル・ファリアスが社交界にデビューする!」

「まあ、本当ですの!お父様、すぐにカイル様に私のエスコートをお願いして下さい!」

「すでに手紙を出している。これでメアリーのデビューは安泰だ!」


カイル様は昔から有名だった。

整った顔に何より、あの莫大な財産と地位のあるファリアス公爵の一人息子だった。

許嫁がいてもおかしくないが、全くいなかった。

カイル様が社交界に初めて出席するのに私をエスコートして下さるなら、必ず私も注目を浴びるはず。

ゆくゆくは結婚もしてみせる!

そう意気込んでいたが、お父様の出した手紙の返事は思っていたのと違った。


「そんな、エスコートを断られるなんて!?お父様、もっとお願いして下さい!」

「お父上のファリアス公爵からも断られた。カイル様は誰も誘わないと。主催者側が割り振るのに従うそうだ。」

「なら、私となるように主催者にお願いして下さい!」


お父様は私が美しく生まれたことを喜び、何でも聞いてくれる。

いい家の方と結婚して欲しいから聞いて下さる。

私のお願い通り、主催者にお金を払いカイル様が私に割り振られた。

こんなことをしなくても、私の身分ならカイル様になったかもしれないが念には念をいれなくては!


デビュダント当日、中々来なかったが入場間近にやっと来た。


「キャバリエを務めさせて頂くカイル・ファリアスです。」


私はスッと手を差し出したが、カイル様は手をとるだけで手に口付けはしなかった。

でも周りがざわついているのが聞こえる。

あのカイル様だと。


二人でホールに入りダンスをする。

ニコリともしないカイル様は愛想がないと思ったが皆が見惚れているのはわかった。


自由な時間になり、皆が歓談やダンスとしているのに、カイル様は入場した時の最初のダンスだけで誘いにも来ない。

他の令嬢が寄って来ても断っている。


「カイル様、私のキャバリエを務めて下さりありがとうございます。良ければもう一曲どうですか?」


あまりに来ない為、私からしょうがなくいった。


「誰も誘う気はありません。務めをしただけです。」


カイル様は冷たかった。


「これからも社交界に?」

「騎士で身を立てたいので、すぐにでも騎士団に戻ります。」

「でも結婚相手はお探しになられるのでしょう?」

「まだ先のことです。では。」


このあと、気がつけば、どこにもカイル様はおらず私と踊っただけで誰とも踊らなかった。


カイル様の言った通り、騎士団に戻ったらしく、社交界で見かけることはなかった。


その後、ファリアス公爵夫妻が流行り病でなくなり、正式にファリアス公爵を継ぎ、戦で武功を立て24歳には騎士団長として、今の邸に戻ってきた。

それでも、騎士は止めず、公爵騎士として有名だった。


邸に戻り、すぐにカイル様に結婚の話をしにお父様がいった。

あの唯一の社交界でダンスをし、お話したのは私だけ。

お父様の頼みにカイル様はすぐには結婚しないが、お付き合いをしてくれることになった。

カイル様は結婚をしてくれると思った。


「やっぱり、メアリーが一番美人だものね。」

「カイル様のお邸に住めるなんて素敵だわ。」


周りからは羨ましがられ、私はカイル様のお邸に住むことになった。



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