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冬祭り

バーナード様のお邸に行った時は、凄く為になった。

お客様を迎える所作も綺麗だったが、一番心に響いたのは、騎士団長と言う立場の妻であることだった。

騎士は、街のことだけでなく、戦に行くこともある。

その時、妻であるバーナード夫人は人の前では毅然と待っていたらしい。

バーナード様が騎士団長となってからは特にそうしたと話された。

自分もそうしなければならない時がくるのだろうか。


「お嬢様、冬祭りに行く時間ですよ。」


冬祭りに行くため、ハンナさんが呼びに来てくれ、オーレンさんと三人でカイル様との待ち合わせ場所に向かった。





冬祭りの前半の警備が終わり後半の者と交代の時間になった。

もうそろそろルーナが来るだろうと思っていると、ルーナの声がした。


「カイル様。」


雪がちらほらと降る中、ルーナは走り寄って来た。


「ルーナ、転ぶぞ。」

「カイル様が見えたので走っちゃいました。」


俺に向かって走って来るルーナは可愛いかった。

ルーナの後ろからは、オーレンとハンナが歩きながら来た。

ハンナはあらあら、お嬢様ったら、と微笑ましそうに見ていた。


オーレンがコートを持って来たので、騎士のマントからコートにかえ、やっと仕事が終わったと思った。


ルーナは、騎士団員達に人気なのか皆がルーナを可愛いと誉める声が聞こえた。

大人げないと思うがジロリと睨むと、団員達は苦笑いになった。


「皆様、お勤めご苦労様です。頑張って下さい。」


ルーナが挨拶をすると、また皆の顔が和らいだ。

それに贔屓目に見てもルーナの挨拶は前よりどこか優雅になった気がする。

マナー講師にも誉められた位だ。

ダンスはまだまだらしいが、不満一つ言わずに頑張っているらしい。


「ヒューバート、あとは頼むぞ。」


ヒューバートにあとを任せ、ルーナとやっと祭りに行った。



「凄く賑わってますね。」

「夜だから、酒を飲む者が多いからな。」

「カイル様も飲まれますか?」

「ツリーがよく見えるレストランを予約しているから後で飲む。それまでは二人で祭りをまわろう。」


通りにもお店が並び、ランタンの灯りで夜とは思えないほど明るく賑わっていた。


「人が多いから、側に寄ってなさい。」


カイル様は肩を抱いて歩いてくれた。

時々、背の低い私に話かけるのに少しかがみ顔を近付けて話してくれたりしてくれた。

しばらく歩き、キャンドルを買って下さったりしたあとは、ミルクティーを買って下さり、店先のベンチで二人で座り飲んだ。

カイル様は紅茶にブランデーを入れてもらっていた。


その時、店先の前で酔っぱらいがケンカを始めた。

酔っぱらいのケンカを見たのは初めてでびっくりした。

よくあることなのか、カイル様はしょうがないな、とため息をついた。


「ルーナ、ここにいなさい。止めて来るから。」


カイル様はあっという間にケンカをしている酔っぱらい達を抑えて、その間に騒ぎを聞き付けた騎士団達がやってきた。

やってきた騎士団員達に、カイル様は、遅いぞ、とか、さっさと連れて行け、とか言っているのが微かに聞こえた。

あっという間に酔っぱらい達を抑えたカイル様は凄く強かった。

周りの見ていた方々も、見惚れていたと思う。

そのまま、私の所に戻って来るかと思うと少し違った。

身なりの良い綺麗な女性がカイル様に近付き話しかけていた。

お知り合いなのだろうかよくわからない。

何を話しているかも聞こえない。

カイル様達を見ていると気がつけば、私の両隣には知らない男の方々が座っていた。

びっくりした。

いつの間にと思った。

声をかけられていることさえ気付かないほどカイル様達を見ていたんだと思った。

慌てて立ち上がると、男の一人が、腕を掴んだ。

思わず、ミルクティーを落としてしまっていた。


「は、離して下さい!」


男の方々が、可愛いね、とか遊ぼうとか言っているが、ほとんど耳に入らず、必死で離れようとしたが、腕を強く掴まれていた。

嫌、と思った瞬間私と男の方々の間にカイル様が入って来ていた。


「俺の連れに勝手に触れるな!」


カイル様が私を隠すように抱き締め、男の方々に怒鳴りつけた。

カイル様の顔を見上げると、凄く男の方々に怒っているのか睨んでいた。

男の方々は酔っぱらっているのか、カイル様が怖かったのかあっという間にいなくなった。


「ルーナ、大丈夫か?」

「はい…」

「目を離して悪かった。」

「大丈夫です。何もされてません。」

「腕を掴まれていたぞ。」

「もう、大丈夫です。」


カイル様が私の掴まれた腕を触れていると、カイル様と話していた身なりの良い綺麗な女性がやってきた。


「カイル様が祭りに来るなんて、と思いましたが、親戚の娘とご一緒でしたの。」


私は親戚の娘じゃない。

カイル様は私のことをなんというのか、不安になった。


「ルーナは親戚の娘ではない。俺と結婚する娘だ。」


ちゃんと言って下さった。


「メアリー、俺達はこれで失礼する。」

「お待ち下さいカイル様。明日伺おうと思いましたの。」

「用があるなら事前に連絡をするんだ。」


そう言うとカイル様は私を連れて振り向きもせずにレストランへ行った。



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