家政婦長は見た
お嬢様はもうお部屋にお戻りかしら。
オーレンさんもお気に召したようだし、本当に良かった。
お嬢様の部屋の前で胸を撫で下ろしていると、カイル様とお嬢様が戻ってきた。
まぁ、お似合いの二人ですわね。
「お帰りなさいませ。カイル様、ドレスの支度がありますから、そろそろお嬢様をお離し下さいませ。」
「…着替えたら迎えに行く。」
「はい、急いで支度しますね。」
お嬢様がカイル様の顔を見ながら言い、私に寄ってきた。
この仏頂面にこんなに可愛いらしく言うなんて、お嬢様は本当に可愛いらしいわ。
ドレスを着ながらお嬢様は今日のデートが楽しかったらしく、ニコニコで話されていた。
「さぁ、綺麗にできましたよ。」
「ハンナさん、ありがとうございます。」
「お夕食の後はすぐにお風呂に入れるように準備しておきますからね。」
「はい。」
お嬢様はベッドにかけてあるネグリジェをじっと見ていた。
「ハンナさん、このネグリジェ可愛いですよね。」
「ええ、お嬢様にお似合いですよ。」
「子供っぽいかしら?カイル様はお気に召しているでしょうか?もっと大人っぽいナイトドレスの方がお好きではないかしら?」
………。
まさか、まだ一線は越えてませんよね。
それともカイル様に追い付こうと背伸びされているだけかしら?
カイル様の趣味…。
あの方に女性の趣味がおありだったかしら?
お嬢様以外に興味が無さそうですけど。
「ハンナさん、明日お買い物に行ってもいいですか?」
「ええ、一緒にいきましょうね。」
「お願いします。」
まさか、お嬢様に限ってハレンチなものは選びませんよね。
部屋を出るとやはりカイル様はお嬢様をお待ちしていた。
仏頂面で涼しい顔で待っているけど、端整なお姿には誰もが目を引く感じでしょう。
お嬢様にさりげなく肩を抱き、寄り添って歩こうとし、愛おしそうに見つめている。
少し釘をさすべきかしら、と思った。
「カイル様、まだお嬢様は15歳ですよ。」
「知っている。」
「お嬢様を大事になさいませ。」
「わかっている。」
二人で寄り添って歩く後ろ姿はやっぱりお似合いの二人と思うほど素敵に思った。




