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ルーナの持参金

二人で買い物を済ませ、邸に帰った。

紙袋の中にある箱には二人で買った手袋が入っている。

手袋の種類は違うが同じ灰色の手袋を二人で選び買った。

脇には、ルーナの冬用の帽子の箱を抱えていた。

荷物を持ってない手でルーナと手を繋ぎ邸に入ると、オーレンが急ぎ声をかけてきた。


「カイル様、先ほどバーナード公爵様がいらっしゃいました。書斎でお待ちです。」

「バーナード様が?何の用だ?」

「カイル様とお嬢様にご用があると言われまして。」


ルーナと顔を見合わせた。


「何のご用でしょうか?」

「わからん。だがお待たせするわけにはいかん。すぐに行こう。」


ルーナの手を引いたまま書斎に入るとバーナード様はソファーでお茶を飲んでいた。


「バーナード様!お越し頂いたとは知らずすみません。」

「いや、急にきて私の方こそすまないな。」


バーナード様は俺達を見て少し驚いていた。

手を繋いだままのせいか、俺が荷物持ちをしているせいかよくわからんが、笑っていた。


「今日は観劇の日だったな。ルーナ、カイルと楽しめたか?」

「はい、凄く楽しかったです。観劇のチケットありがとうございました。美味しいお茶まで頂いてしまって。」

「それは良かった。それに、カイルと仲良くやっているようで安心したぞ。まさか手を繋いで帰って来るとは思わなかったが。荷物はルーナのプレゼントか?」

「はい、カイル様が手袋と帽子を買って下さいました。」

「カイルはルーナに夢中だな。あの仏頂面が照れている。」

「えっ、本当ですか?」


ルーナが俺を見たが、顔に手を当て下を向いてしまった。


「…今は見ないでくれ。」


こんな姿を見られるのは初めてだ。

どうしたもんか。

とりあえず、オーレンに荷物をルーナの部屋に持って行かせて、話題を変えよう。


ルーナと二人、バーナード様の向かいに座り用件を聞いた。


「本題に入っていただけますか。」


ひきつった顔になっていたと思う。


「話題を無理矢理変えたな。」

「用件をお聞きしたいだけです。」


早く話してくれ、と思った。


「まぁいい。用件はこれだ。」


バーナード様がテーブルに頑丈なスーツケースを俺達の前に出した。


「ディルスと夫人から頼まれた。」

「開けても?」

「構わん。」


開けると、金がぎっしり並べられていた。


「ディルス達から支度金を貰う資格がないのではと相談を受けた。全額もしくは一部返そうと思ったらしい。だが、カイルは受けとらんだろう?」

「当たり前です。あれはルーナの為に準備しました。」


当然だ。ルーナが手に入るならいくらでも金を積むつもりだった。

惜しいとも思わん。


「だから、カイルは出した金を受け取るような男ではないと説明しといた。ならば、ルーナの持参金にと預かった。」

「私に継母と義兄上が?」


驚いた。

随分反省しているのかと思った。

隣のルーナも驚きの表情だった。


「あの親子の事はもう心配要らん。私の団員だからこれからも私が相談にのる。ディルスの結婚も今は難しいだろうがその内、落ち着いたら私が相手を探そう。」

「相変わらず世話がお好きですね。」


バーナード様はこのような方だ。

世話好きで、見合いも趣味なのかと思うほどだ。

…この金もバーナード様からなら俺が受け取ると思ったか、それとも他に頼る者がいなかったか。

仕方ないな…。


「ルーナ、受け取りなさい。俺は必要ないから、ルーナが好きに使いなさい。」

「こんな大金をですか!?」

「ルーナの小遣いにしなさい。」

「お小遣いの金額じゃありません。」

「ルーナも伯爵令嬢だ。持参金があっても不思議ではない。」

「カイル様…」


結局、持参金として金を受け取ることにし、ルーナが好きに使える金とした。

俺の金も好きに使って良かったが、ルーナは気を使っていたから、結果的には良かったと思いたい。

まぁでも、ルーナのものは全て俺が買うから使うことはないだろうが。


バーナード様に一緒に夕食でも、と誘ったが、妻が待っている。と断られた


「バーナード様、色々ありがとうございました。」


バーナード様をお見送りする時、ルーナはしとやかに礼を言った。


「気にするな。あのカイルが惚れ込んだ娘を見たのは初めてだ。幸せになられよ。」


バーナード様はにこやかに帰って行った。


残されたこの空気をどうするんだ。

ルーナは真っ赤になり照れている。

頭を冷やしたい気分だ。


「ルーナ、庭でも散歩するか?」

「は、はい。」


庭の薔薇園に連れて行くと、ルーナがおずおずと持参金のことを聞いてきた。

持参金を持っておくのは不安らしく、とりあえず、いくらか持たし、残りは俺が預かることにした。


「私の為にあんなにお金を使わせてしまってすみません。私の為に色々動いて下さいましたし。ありがとうございます。」

「気にするな。」

「でも、毎日のように贈り物もして下さいますし。」


薔薇園は二人っきりだった。

それでだろうか、ルーナを抱き上げてしまった。

ルーナは小さく、軽々と抱き上げれた。


「ルーナが手に入るなら何でもする。金の話は終わりだ。」

「はい…」

「ルーナが欲しいだけだ…」


抱き上げているせいかルーナは俺の肩に手をおき、頬に口付けをした。


「また、先にしたな。」

「こ、これだけは譲れません。」


ルーナを抱き上げたまま抱き締め、同じように、頬に口付けをした。

まだ、これ以上手はださんが今はこれでいいと思った。


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