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ドワイス家の葛藤の終わり

翌朝、朝食のあと馬車に乗り込みドワイス家へ向かった。

カイル様と隣に座り向かいにはヒューバート様が座り、ヒューバート様の隣と足元には頑丈なスーツケースが何個も積んであった。


「カイル様、このお荷物は?」


私の荷物ではないと思いたいけど…。


「支度金だ。」

「…これ全部お金ですか!?」

「びっくりしますよねー。通常の倍以上ですよ!いくら、金持ちでも多いですよ!」


私の為においくら使うのかしら!?


「カイル様、こんなにいいのですか?」

「構わない。」


こんな大金と一緒なんて来る時とは大違いだわ。

それに、カイル様も一緒だし…。




ドワイス家につき、居間で継母と義兄上と向かい合って座った。

私はカイル様の横に座り、少しくっついて座った。

少しだけ、まだ不安があったからだ。

ヒューバート様も後ろに立って下さっているし、ちゃんと前を見てしようと思った。


「今回は、正式に婚約を申し入れる為にきた。16歳になればすぐに婚約をする。」


カイル様は真っ直ぐな顔で継母と義兄上に話した。


「ヒューバート!」

「はっ、」


カイル様がヒューバート様の名前を呼ぶと、ヒューバート様が支度金のスーツケースを並べた。

ヒューバート様はいつもの笑顔な顔と違い、キリッと騎士様の顔をしていた。


「支度金だ。受け取りなさい。」


カイル様が支度金を出すも、継母も義兄上も、受け取らなかった。


「…私達にこのように出していいのですか?」


継母が申し訳なさそうに言った。


「…正直、何故ルーナに辛くあたったのかは聞きたい。話せるなら話してもらおう。」


継母も義兄上も、私達がきた時から観念しているような表情だった。

カイル様に会う前の私なら下を向いたままできっと気付かなかったのでは、と思った。


「…辛くあたったのは嫉妬していたのかもしれません…。」


嫉妬?何故継母が私に嫉妬をするのかわからない。


「ルーナの父親のドワイス伯爵は、ルーナの母親が流産と共に亡くなったことにショックを受け、それからは子を望みませんでした。

そこで、親戚から養子を取ることを決め、息子のいる未亡人だった私に話がきました。

でも、もう子を望まないドワイス伯爵と、また子をもうけたい私にすれ違いがありました。

伯爵は前妻と同じ銀髪のルーナを見たくなくなり、ルーナと関わりませんでした。

見たくないのも、前妻を思い出すのが辛かったのでしょう。

気付いた時にはルーナに苛立ちを感じ、あのような仕打ちをしてしまいました。」


私がお母様と同じ銀髪だから?

思い出すのが辛くて?

知らなかった…。

ただ、興味がないだけだと…。


「ドワイス伯爵が亡くなり、ディルスが継ぎましたが、結婚の話は上手くいきませんでした。

理由はルーナを見た令嬢が断り、破談になったからです。」


「わ、私ですか?」


驚いた、義兄上の結婚の話も知らない。

ましてや、相手に会ったこともない。


「初めにきた令嬢がたまたまルーナを見たのです。

何故、妹があのような古いドレスをきているのか、不審に思い調べたそうです。

恐らく、使用人の誰かが話したのでしょう。

理由を知ると、令嬢は破談を申し入れてきました。

次の令嬢も、最初にきた方から聞いて断りを入れてきました。

だから、このままこの邸にルーナがいるとディルスは結婚できないと思い、邸から出しました。

結婚の為なら誰も不審に思わないと思いましたから。

ルーナが結婚できず、追い出されても帰って来ると思っていました。」


きっと継母は私が泣きついて帰って来ると思われたんだわ。

でも、私はもう帰れないと思い込んでいた。


「俺がルーナを婚約者にしなくても、建前がそろうと思ったんだな。俺の噂を知っていたのか。」


カイル様、厳しい目で話した。


「申し訳ありません!」


継母と義兄上は頭を下げ謝った。


「…義兄上、今は結婚はどうされたのですか?」

「…出来なかった。ルーナに街で会った前日に断られた。」


義兄上は下を向いて小さな声で言った。


「では、あの街での事は八つ当たりか?」


義兄上は、もう返事も出来なかったのだろう。

無言だった。


「貴殿らにも思う所もあったのだろうが、二度とルーナに手を出すことは許さない。ルーナと俺の温情で、何の咎もせんが、ルーナは俺の妻となるのだから、貴殿らより位が上になる。そのことを忘れるな。」


カイル様は、ハッキリと言われた。

俺の妻と。

それに立派な威厳がおありだった。

これが公爵騎士様の威厳なのだろうか、と思った。


「申し訳ありませんでした。」


二人は声を揃えて、また頭を下げた。



長い話が終わり、馬車まで、継母と義兄上が見送りにきた。


「…ルーナ、すまなかった。」


義兄上が謝った。

あのいつも自信たっぷりの義兄上とは別人のようだった。


「義兄上、もういいのです。私が知らなかったことばかりですが、私と父のせいで継母や義兄上も辛かったのがわかりました。私も謝ります。申し訳ありませんでした。」


継母と義兄上に私も謝った。

その私をカイル様は、肩に手をおき抱き寄せてくれた。


「義兄上、カイル様と会わせていただきありがとうございます。」

「夫人、ディルス、俺にルーナを会わせてくれたことは感謝する。」


私とカイル様は二人で同じことを伝えた。カイル様を見上げるとカイル様も私を見てくれた。


カイル様が私の手を引き馬車に乗ると、馬車は走り出した。

窓から二人を見ると、ずっと頭を下げたままだった。


もう、実家での葛藤はない。

実家でのことを忘れることはないが、気持ちが違う気がした。




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