頭の中はルーナで一杯
俺は頬に手をあて呆然と立ってルーナが走り去るのを見ていた。
今何をした?
おやすみなさい、と言ってくれた。
いや、その前だ。
大好きと言ってくれた。
いやいや、その前だ!
ルーナが俺の頬に…。
今やっと顔が赤くなった。
何故俺は赤くなっているんだ!
今さら女を知らんわけじゃない。
だが、こんな気持ちになるのは初めてだ。
いやいや、あれは可愛い過ぎるだろ!
頭の中がルーナで一杯になりそうだ。
「寝よう…。」
胸が高まったまま、寝ようとしたが眠れずそのまま朝をむかえた。
今日の朝もルーナの部屋の前の壁にもたれて待っていると、ハンナがルーナの支度にやって来た。
「おはようございます、カイル様。今朝もお嬢様をお待ちですか?」
含みのある笑顔でハンナが言った。
「早く目が覚めたからな。」
「はいはい、そういうことにしますね。」
オーレンとハンナは俺が幼い時からいるからか、見透かされている気がする。
「ハンナ、今日は夕方には帰るから夕方に仕立て屋が来るようにオーレンに伝えておいてくれ。ルーナに買ってやりたい。」
「まあ、きっとお喜びになりますわ。」
ハンナは笑顔のまま、ルーナの部屋に入った。
ルーナのサイズを測らせ、ドレスを沢山買ってやろう。
もう冬になるからコートもいるか。
ルーナに買ってやりたいものが一杯だった。
考えているとドアがガチャガチャと開き、ルーナが出てきた。
「お、おはようございます、カイル様。」
「おはよう、ルーナ。」
ルーナが頬を染めている。
夕べのことを思い出していたのだろうか。
「さぁ、行くぞ。」
「はい。」
朝食につき、今日の予定をルーナに話した。
ドレスの話より、今日一緒に昼食をとれることの方が嬉しそうに見えたのは俺の気のせいか。
そうであってほしいという俺の思い込みなのだろうか。




