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帰りたくない騎士団長
騎士団の執務室で、仕事をしていると副団長のヒューバートがやってきた。
「団長、今日は早く帰る日じゃなかったのですか?」
「そうだったか?」
「また、婚約者候補の方が来る日だとぼやいていたじゃないですか。」
「あぁ、だがどうせすぐに嫌になり実家に帰るだろう。」
「…団長、顔はいいのにもったいないですよ。」
「だが、好きにもなれない女とは結婚なんてできないな。」
「もっと愛想よくしてくださいよ。」
ヒューバートの言うとおり、俺は愛想がないのだろう。
だが、今まできた婚約者候補の女は高慢で、うるさいと思うだけで穏やかな気持ちになれなかった。
一生をこの女達と共に生きることが想像できなかった。
今度の娘も、伯爵令嬢だといっていた。
今までと同じだろう。
今日は帰るのが憂鬱だった。
そんなことを考えていながら仕事をしていると、いつの間にか、遅くなってしまった。
今日終わらせないといけない仕事もないが、自分の邸に帰るのが憂鬱だ。