手紙
「カイル様、今朝オーレンさんから時間のある時に渡すように言われたのですが。」
ヴィンスが今朝来た二通の手紙を出してきた。
同じ人物から、俺とルーナ宛ての手紙だ。
差出人は、フォード公爵の嫡男ジュード様だ。
思わず眉間にシワが寄ってしまう。
またきたのかと。
封も開けると、いつも通り食事の誘いだった。
ルーナ宛てのを見ると、やはりいつも通りお茶の誘いだった。
「カイル様、それはルーナ様宛てですよね。お渡ししなくてよかったのでしょうか?」
「ジュード様からのはルーナに見せなくていい。これからも渡さないでくれ。」
最初は俺宛てだけだったが、忙しくいつまでも食事に呼べなかったら、ルーナ宛てに手紙がくるようになった。
ルーナ宛てに手紙がくるようになり、食事の誘いはおそらくルーナ目当てだったのだろう。
今回も、街に来ているから、ぜひ一緒に食事を、と誘っている。
ルーナ目当てと気付いた以上そう簡単には会わせられん。
手紙はいつも通り片付けることにした。
そしてバタバタと人がやって来た。
来たのは、邸の御者だ。
馬を走らせて来たらしい。
「カイル様、ルーナ様が大変です。」
「ルーナがどうしたんだ!?」
「シャロン様!?ルーナ様と一緒だったのでは!?」
御者は執務室に書類を持ってきたシャロンに驚くと同時に不審な目で見た。
話を簡単に聞くと、ルーナが男と一緒に貴族専用の客室に行ったらしいが、御者が問い合わせてもファリアス公爵夫人の予約はないと、客室に入れてもらえないと言われたと。
一緒にいたボーイが説明するも客室担当が見てない為、入れてもらえないと不審がられたと話した。
シャロンを部下に見張らせ、ホテルに急ぐと、貴族専用の客室の廊下に割れた花瓶の所に男がうずくまっており、それを見張るように、ジュード様が壁にもたれ立っていた。




