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悪役令嬢にも悩みはある

フィーネル伯爵家はもう没落寸前だ。

リーマス公爵が失墜し、一番大きな取引先を失った。

お父様の商会も信用が下がり、今では借金がある。

お父様はきっと今日も金策に回っているだろう。


カイル様にお願いしては、とお父様に話したが、友人の息子には迷惑をかけられないと、断られた。


そんな時に、グリード商会に結婚を持ち込まれた。

それなりの支度金もある。

私がグリード商会の息子のヘイデンと結婚すれば、一時とはいえお金が入るのだ。


でも、お父様は、ヘイデンをよく思ってなかった。

グリード商会は成金だからかもしれないが、ヘイデンという人間が嫌いだという。

私も嫌いだ。

妬み屋で傲慢だ。

カイル様のことも知っているようで、よく妬んでいた。


お父様は無理に結婚することはないと言っていたが、このままだときっと邸を失うだろう。


私が我慢すればいいはずなのだ。


ヘイデンは私がつまらない女だというわりには、迫ってくる。

何とか初夜までは、何もしないと条件をつけたがどこまで守られるかわからない。


そんな時にカイル様の騎士団に女性騎士の臨時派遣の話がきた。

私は迷わず飛び付いた。


臨時派遣中の住む所もカイル様の邸を手配して下さった。


正直嬉しかった。

ずっと密かにカイル様を慕っていたから。


でも、私には一生伝えることは出来ない。

もうカイル様にはルーナ様がいるから。

結婚式でもルーナ様は本当に綺麗だった。

そしてあのカイル様が愛おしそうに笑っていたのだ。


それに比べ私は、幸せな結婚にはならないだろう。



昼食に私はヘイデンと一緒にとった。

夕食を一緒にするのだから、昼食まで何故顔を見なければならないのか。


「ヘイデン、私は仕事があります。いつまでも昼食に時間はとれませんよ。」

「婚約者が来たのに相変わらず冷たいな。金で買われたのだから、文句はない筈だ。」


こんな時ヘイデンが益々嫌になる。

そして、ルーナ様と比べてしまう自分も余計に嫌になる。


「見ろ、シャロン。向こうを歩いている女は顔は劣るが笑顔がいい。あっちの女もいいな。」


私といるのに、ヘイデンは嫌がらせなのか、他の女と比べてばかりだ。

そもそも、婚約者といるのに、他の女ばかり見るのは失礼だ。


「見ろシャロン。銀髪だ。珍しいな。しかもかなり可愛いぞ。」


銀髪…、まさかルーナ様では…。

見上げると、やはりルーナ様だった。


「…ヘイデン、あれはファリアス公爵夫人です。」

「あれがか?既婚者には見えないぞ。」


そうでしょうね。

ルーナ様は着ている服は派手でなく、かといって地味でもなく品のいい、可愛いらしい令嬢に見えますから。


ヘイデンを見ると、ニヤニヤとルーナ様を見ている。

この婚約者でさえルーナ様を気に入ったのは一目瞭然だった。





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