妻となった年下令嬢は見ています!
翌朝から、カイル様は二人と出勤して行った。
ヴィンス様もシャロン様もいるから、行ってきますのキスはしないと思っていたけど甘かった。
カイル様は人目を気にすることなく、いつもの無表情でキスをしてきた。
「…カイル様、皆様いますから、」
「問題ない。妻を大事にしているだけだ。」
そう言いながら、カイル様は少し微笑んで行ってしまった。
お昼は持ってきと欲しいと言われたので、沢山サンドウィッチを作った。
いつも通り、騎士団に行くとカイル様は入り口に仁王立ちで待っていた。
「カイル様、お待たせしましたか。」
「大丈夫だ。」
カイル様の執務室に行く途中シャロン様がいたが、こっちを見ていた。
睨まれている気もしなくもない。
軽く会釈をして、見なかったことにした。
サンドウィッチを食べながら少しシャロン様のことを聞いてみた。
「シャロン様とは、仲良しなのですか?」
「父の友人の子だから時々、邸に来た時に遊んだぐらいだ。ルーナとの結婚式でも挨拶ぐらいだったからな。もう何年も会ってなかった。」
じゃあ、さっきの視線は何なのでしょう。
「ルーナ、今日は早く帰れそうだ。一緒に帰るか。二時間ほど待つことにはなるが。」
「待ちたいですけど、ご迷惑では?」
「構わない。」
「その間、買い物に行ってもいいですか?」
「待てないのか?」
「ご迷惑でしょうし、少し買い物するだけですから。」
今日の午後は、料理長さんが、シャンパンゼリーの作り方を教えてくれる。
カイル様にバレずに、こっそりお菓子を作りたいから、少しだけ一人で行きたい。
料理長さんから、ゼリーの型も色々あると聞いたから自分で選んで、今夜カイル様に出したいのだ。
カイル様との待ち合わせ場所を決めて、お店に一人できた。
お菓子作りの棚には、クッキーの型やゼリーの型と色々あった。
カイル様に差し上げたいから、絶対可愛い型にしようと決めていた。
迷うことなく購入するが、待ち合わせまではまだ時間がある。
うろうろすると、カイル様が心配するから、今日は大人しく喫茶店で時間が過ぎるのを待つことにした。
カイルとの待ち合わせ場所が見える喫茶店でミルクティーを飲んでいた。
待ち遠しいけど、カイル様を待つのは楽しかった。
きっとニヤけていたと思う。
そして見てしまった。
カイル様がきた。
二杯目のミルクティーの最後の一口を、グイッと飲んでしまった。
もう一度、カイル様を見た。
何故、シャロン様と一緒に来るのでしょう!
まるで恋人のようです!
シャロン様はお綺麗で、背も高い。
カイル様と並ぶとお似合いに見えます!
身長差がバッチリです!
でも、一緒に来るとは聞いてません!
幼なじみのようなものでしょうか。
でも、何年も会ってないと言っていましたが。
取り乱さないように、深呼吸をして、喫茶店を出た。
カイル様、私は一緒に帰るか、と言って下さって、嬉しかったのですよ。
まさか、シャロン様も一緒とは思いませんでした。
まあ、今は同じ邸に帰りますけど…。
挨拶だけして帰りましょうか。
二人に近寄る為に、ゆっくり歩いていると、カイル様が気付いた。
「ルーナ、どこか行っていたのか?」
「そんな気もします。」
「待たせたか?」
「いえ、全く。では帰りますので。」
一礼し、クルッと振り向き、帰ろうとするとカイル様が止めた。
「待ちなさい。一人でどこに行くのだ。」
カイル様はそう言いながら、私を抱き寄せた。
私はカイル様の腕の中にはまっていた。
「遅くなって悪かった。怒っているのか?」
「シャロン様と遅くなっていたんですね。」
「そうだ。一緒にいたからな。」
そうですね。
遅くなったのは正直忘れていました。
でも、シャロン様は笑顔でカイル様と歩いていました。
するとシャロン様が、カイル様の腕に触れ話しかけた。
「カイル様、茶葉の店は?」
ムムッ、と思ってしまった。
「店なら目の前にあるだろう。俺はルーナと買い物をして帰るから、先に帰るんだ。」
「私はもう買い物はありませんよ。」
私は、もう買い物は終わってますよ。
「せっかく待ち合わせしたのだから、一緒に出掛けないか。」
「…二人でですか?」
「当たり前だ。」
カイル様を見上げると、いつもの優しい顔に見えた。
シャロン様は一瞬私を睨んだかと思うと、カイル様には笑顔でお礼を言った。
「カイル様、一緒に来てくださりありがとうございます。お帰りは?」
「少しルーナと出掛けてから帰る。」
カイル様はさぁ、行くぞ。と私を連れて歩いた。
もし、一緒にと言われたらどうしようか、と思ったが、カイル様はシャロン様を置いて、私と二人でその場を離れた。




