名残惜しい気持ちもある
「取り乱して、すみません。」
「落ち着いて良かった。」
「カイル様の好みが何となくわかりました。」
「何の好みだ。何の。」
前言撤回。
どうもまだ落ち着いてないな。
「別に下着にこだわりなんてない。」
「わかりました。」
何だ。
その可愛い顔でじっと見るんじゃない。
大体、この歳で未経験だとおかしいだろ。
もうすぐ、27歳だぞ。
やっとルーナをベッドに連れてきて、キスをしている。
ナイトドレスに手をかけ、今からという時に、ドアのノックの音がした。
「…っ、カイル様、誰か来ました。」
「ほっとけ。」
コンコン!
「カイル!起きろ!いるのだろ!」
コンコン!
「カ、カイル様!人がっ!」
どうして邪魔が入るんだ!
やっとベッドに連れてきたのに!
コンコン!コンコン!
「カイル!起きろ!」
「カイル様…」
「…今出るから、そのままで待っていなさい。」
くっ、生殺しか!
ルーナにシーツを被せたまま、俺はドアに向かって行った。
「取り込み中だ。」
俺を呼んでいる途中に、勢いよく俺がドアを開けるとルーベンスがいた。
まあ、呼ぶ声でルーベンスだとは思ったが。
「夜中に何なんだ。」
部屋のドアを閉め、はぁ、とため息をつきながら廊下に出た。
「…機嫌が悪いな。」
「悪いと思うなら来ないでくれ。…やっとベッドに連れて来たんだぞ。逃げられたらどうしてくれるんだ。」
「お前が拒否されているのか?」
「…ルーナは今までと違うというか、とにかく嫌われたくないんだ。逃げられては困る。」
ルーベンスは片手を壁について笑いを堪えていた。
「とにかく、用件を早く言ってくれ。」
ルーベンスは、笑いを抑え話し出した。
「ゴドウィン男爵の妻のルイス様をやっと保護した。」
「あのピンクの髪のか?時間がかかったな。」
「男爵が中々出さないからな。だが、薬の使い過ぎで、明日保護施設に送る。だから、今すぐにルーナ様にケネスといたのがルイス様で間違いないか確認して欲しいんだ。」
嫌だ。
はっきり言って嫌だ。
行きたくない。
だが保護施設はここから遠い。
明日になれば、もっと時間をとられる。
「…却下したい。」
「したいということは来てくれるな。馬車乗り場で待っているから、来てくれ。」
ルーベンスはそう言うと、少し笑いを堪えながら行った。
部屋に戻るとルーナはベッドサイドに座っていた。
「…お仕事ですか?」
「行きたくないがルーナを連れて、いかねばならん。」
「私ですか?」
ルーナの隣に座り、抱き寄せ話を続けた。
「ケネスと一緒にいたのがゴドウィン男爵の妻ルイス夫人だと確認して欲しいそうだ。明日にはルイス夫人は保護施設に送るからすぐに来て欲しいとルーベンスが言っていた。」
「来ていたのはルーベンス様だったんですね。わかりました。行きます。」
ルーナはあっさり承諾した。
名残惜しくないのか?
「どうしました?」
ルーナを見てると、気付いたのかこちらを見た。
「…いや、少しは名残惜しんでくれないのかと。」
「お、思ってますよっ、でも、恥ずかしくて言えません。」
恥ずかしくなるとルーナはすぐに顔を隠す。
今も俺の胸に顔を埋めている。
ルーナの顎を上げ、顔を近付けるとルーナは目をつむった。
少しの間、ルーナとキスをしてから、お互い着替えを始めた。