優しい夫
カイル様達と会場に戻り、ピンクの髪の女性を探すが全くいない。
「いませんね。」
ルーベンス様が静かに言った。
「すみません、私何か不味かったのでしょうか。」
「ルーナは悪くないが、側にいなさい。」
わけがわからないまま、探しているとヒューバート様とヴィンス様が来た。
「二人とも来たのか。ルーナ、ヴィンスだ。」
「はい、よろしくお願いします。」
裾を持ち、挨拶をすると、ヴィンス様は一礼をした。
「ルーナ様、ヴィンスです。これからよろしくお願いいたします。」
挨拶をするとカイル様は二人にピンクの髪の赤いドレスの女性を探すように頼んだ。
二人はすぐに探しに回り始めた。
「カイル様、すみません。せっかく紹介下さったのに。」
落ち込んでしまい下を向くと、カイル様は私の頬にそっと口付けをした。
「ど、どうして、このタイミングでするんですか?」
「元気が出ると思ったのだが。」
頬を押さえカイル様を見上げるとカイル様は真剣だった。
「…頑張って探します。」
「元気が出ればそれでいい。」
端からみたら、人探しをしているようには見えないだろう。
きっと、いちゃついている夫婦に見えると思った。
そう思っているとパティさんが見えた。
「カイル様、パティさんに聞いてみましょうか?知っているかもしれません。」
「なら行くか?」
二人で、パティさんの所に行き、聞いてみると、案の定知っていた。
「ええ、知っていますよ。それはきっと、ゴドウィン男爵の妻のルイスさんですわ。先ほど気分が悪いと医務室に行かれましたから、もうお帰りじゃないかしら?」
パティさんは夫のギリンガム伯爵に、ねぇあなた。と言っていた。
ギリンガム伯爵は空気のような方だった。
「ルーナ、プレゼントは見ました?」
「すみません、まだ見てないのです。」
「その方がいいわ。夜にゆっくり見てくださいな。」
一体何を下さったのかしら。
パティさんに聞いた話をルーベンス様達に伝えに行くと、ライナス様が行くことになった。
「後はライナス様に任せれば大丈夫だ。」
カイル様が言うとルーベンス様がダンスが始まるから、行くか。と言ってきた。
「一緒に踊って下さるのですか?」
「あまり好きではないがルーナとは嫌ではない。」
カイル様はダンスが好きではないのは知っているけど、私とはしてくださる。
「特別ですね。」
こういう時は、結婚してからでも、嬉しくなる。
「おいで。」
カイル様に連れられて移動すると音楽が落ち着いた感じのものに変わった。
二人で体を合わせゆっくり踊った。
「ヒューバート様達はいいのですか?」
「ヒューバートはルーベンスと女性を誘い踊っている。」
いつの間にと思った。
「ヴィンスはまだ第7騎士団だから、この後召集がかかるはずだ。」
「お忙しいのですね。」
「詳しくは言えんが明日朝食の時にでも話す。」
ケネス様のことで何だかスッキリしなかったが、カイル様が優しくて、一瞬でも忘れてしまいそうな気持ちで夜会は終わった。