ついて来ました
バルコニーで一人しゃがみ込んでいると、私以外にもバルコニーに出ている方がいた。
おそらく恋人同士なのだろうが、何だかケネス様と違い爽やかに見えた。
私に気付くと二人は会場に戻って入った。
何だか邪魔をしてしまったわ。
そう思い私も会場に戻ろうとすると、入れ違いのようにケネス様がバルコニーに出てきた。
「ルーナ様、先ほどはどうも。」
やっぱり私と気付いていましたね。
「あのすみません。お邪魔をしてしまいました。」
「いえ、驚かれたようで。」
「そ、そうですね。あの、私、カイル様がお待ちですので、失礼します。」
ケネス様がバルコニーの会場の出入口に立っている為、思わず反対を向いて行った。
外は雨だから、庭には出られないのにとにかくケネス様から離れようと、反対方向を進んでいた。
ちらっと後ろを向くとついて来ている。
どうしてついて来るのですか!
私にみられたのがそんなに嫌でしたか!?
思わず、スカートを持ち上げ小走りになってしまった。
バルコニーから灯りがついている部屋の窓があったが気にせず、通り過ぎた時、カイル様が私を呼んだ。
「ルーナ!」
振り向くと窓がガラッと開いて、カイル様が窓から飛び出てきた。
私はすぐにカイル様の胸に飛び込むように駆け寄った。
「カイル様!」
「どこに行くんだ!?何故ここにいるのだ!?」
「ケネス様がついて来て…カイル様が近付くなと行ったので、」
そして、ルーベンス様とライナス様も窓から飛び出てきた。
二人は、私とカイル様の前に立ち、ケネス様を止めた。
「ケネス、何故ルーナ様を追う。今日も女遊びが過ぎると注意をしたはずだぞ。」
ライナス様が強い口調でケネス様を制した。
きっと、騎士団長の集まりでケネス様は他の団長達に注意を受けていたのだろう。
「事と次第によっては済まさんぞ!」
カイル様は怒っていた。
顔が怖い。
「…興が覚めた。私も騎士団長だと忘れるな。」
ケネス様は不味そうな顔で去って行った。
「ルーナ、何かされたか?」
「何もされてません。でもついてきて、」
カイル様はとにかく中に入ろう、と言い窓から私を持ち上げて部屋に入れてくれた。
私の後に、皆窓から入った。
「何故ケネスはルーナ様を追うんだ?気に入ったのか?しかし、カイルと来ているのに…」
ライナス様が顎に手を当て、考えていた。
「で、でも、先ほどケネス様は他の女性といました。」
「何故それでルーナについて来るのだ?」
カイル様、私にもわかりません。
「やはり、ルーナが可愛いから気に入ったのか?」
カイル様は私を抱き寄せたまま真剣だった。
ライナス様もルーベンス様も華麗にスルーしていた。
「女といただけでルーナ様を追うのはおかしくないか?ケネス様が女といるのはいつものことだ。他に何かないのですか?」
ルーベンス様も悩んでいた。
「あの、女性と、その、包み紙を胸に突っ込みながらですねっ、キスをしてまして、きっとみられたくなかったのです。」
三人が、一瞬固まってしまった。
私は覗き魔と思われたのかと思った。
「その女性は誰だ?」
カイル様が私を見て聞いてきた。
「わかりません。知らない方ですから。」
「特徴はわかりますか?」
ルーベンス様も聞いてきた。
特徴と言っても、顔はよく見てない。
というか、ケネス様がキスをしていたから顔は見えなかった。
「顔はわかりません。髪はピンクで赤いドレスでした。」
「…その女性を探します。カイル、ルーナ様も一緒に来て欲しいが、かまわないか?」
カイル様は、仕方ない、と無表情ながら嫌そうだった。