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忙しい日もある

カイル様が馬車の中で膝の上に乗せて下さり、ずっと抱き締めていてくれたおかげなのか、寒かった震えがいつの間にか止まっていた。


パティさんの邸に戻り、馬車を降りようとした時ハッとした。

靴も服の裾がドロドロのびしょびしょだった。


「これではパティさんのお邸に入れませんね。カイル様どうしましょう…。」

「問題ない。」


そう言うとまたカイル様は私を抱き上げた。


「カイル様っ。皆様が驚きます。」

「これなら汚れを気にする必要もないし、まだ寒いのだろう。」

「カイル様が汚れてしまいます。」

「さっきまで腕の中にいたのに、今さら汚れてもどうもないだろ。」


カイル様は私を抱き上げたままズンズン進んだ。

周りの使用人達の視線は全く気にならないらしい。

ここでも鋼の心臓を発揮していた。


ミラ様の寝ている部屋に行くと、私達の姿に目が点になっていた。

いたたまれなくなり慌てて説明した。


「こ、これはですねっ、パティさんのお邸を汚してはいけないと思いまして。」

「ま、まあ、気にしなくて大丈夫ですわよ。」


パティさんが、笑いをこらえながら言った。


「あの、ミラ様は大丈夫ですか?」

「…実は、まだ大きな声では言えないが、ミラは子を身籠っていた。今日は1日休んで明日王都に帰ることにする。」


グレイ様は嬉しそうに言った。


「ルーナ、ごめんなさいね。私の為に行ってくれたのでしょう。嬉しかったわ。ありがとう。」


ベッドからミラ様は優しく微笑んで下さりホッとした。


「ミラ様、おめでとうございます。」

「本当にありがとうルーナ。」


パティさんが、もう大丈夫だから休ませましょう、と言い私達は部屋を後にした。


部屋を出る時、カイル様の肩から二人を見ると、グレイ様がミラ様の手を握り優しい雰囲気に包まれているのがわかった。


「ルーナ、夜会にはミラは来ないけど私は行きますから、後で会いましょうね。」

「はい、楽しみにしてます。」

「ギリンガム夫人、妻が世話になりました。ありがとうございます。すぐに着替えさせたいので我々はこれで失礼します。」


カイル様と二人で挨拶をすると、パティさんが玄関まで見送り、私達は馬車に戻った。


馬車の中でもやっぱりカイル様は私を膝に乗せていた。


「もう寒くないですよ。」

「離すと震えるかもしれん。」

「じゃあ、もう少しだけこのままでいさせて下さい。」


ミラ様のことで凄く焦っていた気持ちがカイル様の側にいると落ち着いていくのがわかった。


「そう言えば、ヴィンスと話していたのか?」

「お知り合いですか?…まさか、疑っています?ミラ様のおめでたの時なんですから、馬鹿なこと言わないで下さいね。」


まさか、また私が男の方と、と疑っているのかしら、と思った。


「馬鹿とはなんだ。反抗期か?」

「違います!」


カイル様は淡々と私の顔を見て言った。


「まあいいが、ヴィンスは夜会でルーナに紹介しようと思っていたんだ。」


カイル様が私に若い男の方を紹介するなんて珍しいと思ってしまった。


カイル様が言うには、ヴィンス様は第7騎士団からカイル様の第3騎士団に移動するらしい。

そして、カイル様の領地とかの執務を手伝うことになると話してくれた。


「以前領地管理人を辞めさせただろ。今は俺がしているが、忙しい時もある。ルーナとの時間も大事だから、執務官として邸で雇うことにした。」

「ヴィンス様は騎士団の仕事はいいのですか?」

「勿論騎士団の仕事もする。毎日邸の執務官をするわけではないから、あくまでも俺の手伝いだな。」

「いずれヒューバート様にお願いするのかと思いました。」

「ヒューバートは文官よりではないからな。腕もいいし有能だが執務官にするのはおしいな。ヴィンスはヒューバートの反対で執務官に向いている。」


ヴィンス様も、カイル様の騎士団に移動したら、ヒューバート様みたいに邸に部屋を準備することにするらしい。

部屋の準備は私が邸の女主人だから、私が準備することになった。


女主人と言われてもまだピンとこないが帰ったら頑張って準備しようと思った。


「来る前にちゃんと説明したら良かったな。まさか先に会うとは思わなかった。」


眉間にシワが寄ってたので怒ってしまったのかと思いました。


考えてみたら、カイル様はいつも無表情というか、近寄りがたいと思われていた。

私の一緒の時は優しくて、少し笑ってくれるから忘れていました。


「…私がヴィンス様のマントを借りたので怒ってしまったと思いました。」

「あの場合は仕方ない。だが他の時はダメだ。」

「はい。夜会でも、カイル様とだけいますね。」

「そうしてくれ。」


宿に戻り、何だか今日は忙しいと思ってしまった。

でも今夜はまだ夜会がある。

カイル様と並んでも恥ずかしくないように、気合いをいれて支度を始めた。





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