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不要な感情

 土曜日、起きるとPM3:00だったので、私そろそろ死ぬ?と不安になった今日この頃です。12時くらいに寝たんですけどね、睡眠時間15時間は流石にまずい気がしました。


 では、本編どうぞ。

 「今日はこのくらいにしておきましょうか」


 バタンッと凛の言葉を聞いた瞬間夕夏が床に倒れた。艶やかな黒髪が扇のように床に広がる。


 「こら、ゆうはしたないわよ」


 女の子としてあまりよろしくない行動をする夕夏を凛が咎める。


 「別にいいでしょ~」


 そう言いながら仰向けの状態から四つん這いになり、康貴に擦り寄る。胡坐をかいている康貴のふとももに頭を乗せ、寝っ転がった。これは、勉強会をすると夕夏が必ず取る行動で、羞恥心が仕事をしなくなる前の康貴も大人しく寝かせていたので皆慣れていた。


 しかし、今日は一味違い、康貴の手が夕夏の頭に伸び、撫で始める。


 「ふみゃあ~」


 夕夏が猫のように、心地よさそうな声を上げる。康貴はそんな夕夏を無表情で見下ろしながら、ただただ無言で撫で続けていた。


 「...帰るか」


 「...そうね」


 完全に二人の世界に入ってしまった。康貴達を見て、蓮と凛は撤収することにした。




 「・・・・・・」


 「・・・・・・」


 蓮と凛の家はお互いそこそこ近い距離にあり、帰り道は同じなため一緒に帰っていた。しかし、二人の時は道中完全に無言だ。


 だが、今日はちょっと違った。


 「...テスト、どうだ?」


 「へっ?」


 突然話しかけられた凛はびっくりして素っ頓狂な声を出してしまう。しかし、すぐに平静を取り戻し、会話のキャッチボールを始める。


 「そこそこの点数は取れると思うわ。貴方は?」


 「俺もそこそこは取れると思う」


 「貴方は普段勉強をしている素振りが一切ないのにどうしてそこそこ点数が取れるのかしら?」


 「はっ、地頭が違うんだよ」


 「普段の貴方を言動を顧みるとそうは思えないけど?」


 「冗談に決まってるだろ。家でちゃんと勉強してるわ」


 「...不毛ね」


 「...そうだな」


 「でも、それでいいのかもしれないわね」


 「そうかもな」


 帰り道を歩く二人の距離は康貴の家を出た時より歩幅一歩分狭まっていた。




 「うん!すっきり!」


 康貴の太ももから頭を離し、起き上がった夕夏は完全復活していた。


 「もういいのか?」


 「うん!もう大丈夫だよ~」


 そう言いながら、夕夏はすかさず康貴を抱きしめる。


 「はぁ~、こう君あったか~い」


 「俺は流石にちょっと暑いんだが」


 今は6月の下旬でジメジメした空気に夏の熱気が少しずつ混ざり始めている。


 「そっか~」


 と、夕夏は大人しく康貴から離れる。


 「まあ、別にいいんだけど」


 「じゃあ、くっ付く~」


 康貴の許可を得て、再び夕夏が康貴に腕を回したところで、


 ガチャッ「ただいま~」


 「ん、母さんが返ってきたな」


 「そうだね~」


 どうやら康貴の母親が帰ってきたようだ。今日は友達と食事に行っていたらしい。


 階段を上がってくる音が聞こえ、足音は康貴の部屋の前まで来ると、


 「ゆうちゃん来てるの?」


 そう質問しながら部屋の扉を開けた。その先には、康貴に抱き着いてすりすりしている夕夏と、されるがままになっている康貴がいた。


 「あら、お邪魔だった?」


 「いや、別に」


 「お邪魔してますおばさん!」


 「相変わらず仲いいわね~」


 康貴の母、新川翠(あらかわみどり)は特に驚きを示すことも無く淡々と感想を述べた。翠は勿論康貴が夕夏のスキンシップを拒否していたのは知っていたが、一時的なものですぐ元に戻るだろうと考えていた結果今の状況に何の疑問も持たなかった。


 「じゃあ、私夕食作ってくるから、康貴、するとしてもちゃんと考えてね?」


 「何をするかは知らないが多分余計なお世話だ」


 「あ、おばさん私も夕食つくるの手伝います」


 「いいの?康貴と遊んでてもいいのよ?」


 「お手伝いします!」


 「だったらお願いしようかしら」


 「はい!」


 そう返事すると、夕夏は立ち上がって翠と一緒に一階に降りていった。


 一人になった康貴は自分のことを少し考えてみることにした。


 まず、


 「何故前までの俺は夕夏のスキンシップを拒否していたんだろうか」


 と、自問してみたもののその答えは既に分かっている。


 「羞恥心」


 正直今の康貴は不要だと思っている感情だ。夕夏に抱き締められるのは心地いい。温かな体温と安心できる優しい香り、柔らかくて気持ちのいい体。これだけいいことがあるのに羞恥心という不要な感情によりこれを拒否するなど損失以外の何物でもなかった。


 「本当に必要なんだろうか?」


 人が普通に生きるには周りと合わせなければならないこともある。協調性というやつだ。ただ、感情が一つ抜け落ちているだけで他人にとっての当たり前が当たり前でなくなることがある。そういう面では必要なのかもしれない。


 「だけど」


 現在、蓮と凛の恋の邪魔をしているものは何だろうか?彼らは確実に好き合っており、片方が告白すればすぐにカップルが成立するだろう。だが、その告白をすることができない。それは何故か?蓮は怖いと言っていた。凛がどうなのかは分からないが、蓮は勇気が無いと言っていた。では、その勇気はどうやったら出るのだろう?その勇気を出すことを邪魔しているものは何だろう?


 康貴はそこでも根本的には羞恥心なのではないかと思った。彼らは恋を暖め過ぎて、今の関係を壊すことを恐れている。だが、もし今の状況になる前に告白出来ていたら?関係を壊すことが怖くなる前に告白出来ていたのなら今彼らはカップルとなっていただろう。この状況になるまで告白出来なかったのは羞恥心があるせいだ。


 「羞恥心は不要だ」


 康貴は最終的にそう結論付け。一日勉強して疲れた頭を休めるため、目を閉じた。

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