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勉強会

 気付いたら一ヶ月経っているこの現象に名前を付けてください。


 では、本編どうぞ。

 「もうやだぁ...」


 背中に艶やかな黒髪を広げて、夕夏が机に突っ伏している。


 「早いわね...まだ30分も経ってないわよ?」


 今日、休日に康貴の家では勉強会が開かれていた。主に夕夏のための。


 「だぁってやる気でないんだもぉん」


 夕夏はだらしのない、本当にやる気がなさそうな声を上げる。


 「そもそもこんな図形社会に出てからいつ使うの~」


 ほとんどの学生が直面することがあるであろう疑問を夕夏が呈する。実際この疑問にどこでどうなどという返答が返ってくることは無いだろう。


 しかし、その疑問に隣で同じテキストを開いていた康貴が反応した。


 「社会に出て役に立つものだったらやる気が出るのか?」


 「そりゃあ勿論!百点だって取っちゃうよ!大前提としてそんなものがあればだけど」


 「言ったな?」


 そう言うと康貴は立ち上がり、一冊のテキストを持って来た。


 「だったらこの教科で百点を取ってもらおうか」


 「英語?」


 「ああ、英語だったら社会に出れば必ず役に立つ。街に繰り出せば外国人はかなりいるし、近年はグローバル化が進んでいて英語でコミュニケーションを取ることは多々あるだろう。そういった時に英語が話せる人材は重宝される」


 「え、あ、え」


 「IT系の会社に進めば専門用語はほとんどが英語だろう。そういった場面でも意味を知っていれば覚えやすい」


 「あう」


 ド正論すぎて夕夏はぐうの音も出ない。


 「うわー、こう鬼畜だなー」


 「でも、全くもってその通りね」


 康貴のド正論に蓮は若干引き気味で、凛は肯定的だ。


 「社会に出て役に立つことだったらやる気出るんだよな?」


 「ええと...」


 「百点取れるんだよな?」


 「...ごめんなさい。ちゃんと勉強するから許してください...」


 康貴は別に高圧的に言っている訳でも何でもないのだが、夕夏からするといつもは可愛い康貴が鬼のように見えた。




 「ふあー、んっ」


 お昼時、切りのいい所まで問題を解き終わった夕夏が伸びをして、脱力する。その行動を皮切りに他の三人も一度勉強を切り上げた。


 「疲れた~」


 「まあ、ゆうにしてはかなり集中してたわね」


 「そうだよ~」


 そう気の抜けた言葉を発しながら夕夏は隣の康貴に向かってぐでーっと倒れる。


 「よしよし」


 倒れてきた夕夏の頭を康貴が優しく撫でる。いつもとは逆の構図だが二人とも満足のようだ。


 「癒される~」


 『にへら~』という音が聞こえてきそうなほど夕夏は頬を緩ませ、康貴に身をゆだねている。


 「もう1時か結構やってたな」


 蓮が壁掛けの時計に目を向け、呟く。


 「そうだな、そろそろお腹が減ってきた」


 夕夏の頭を撫でながら康貴が空腹を訴えた。


 「そうね、そろそろお昼ご飯作りましょうか」


 「そうだね~、よ~し頑張るよ~」


 今日の昼ご飯は女子たちが手作りするようだ。二人ともそうと決まればというようにサッと立ち上がって一階に降りていった。


 「良かったな、凛の手料理が食べられるぞ?」


 女子二人が部屋から出ていったのを見送ってから康貴がからかうように言う。


 「はあ?何でだよ、別に食べたいとか思ったことねえし」


 「凛の前でならまだしも俺の前で嘘ついたって意味無いだろう」


 康貴は若干呆れ声だ。


 「...それはそうなんだがな...」


 「いっその事思い切って告白してみたらどうだ?」


 「そんな簡単に言うなよ。...怖いだろ」


 「怖い?」


 「小学校の頃からの付き合いだぞ?いままでずっと友達としての関係をお互い築いた来たそれなのに一つの告白でその関係が壊れるかもしれない。下手をすればこの4人で集まることさえなくなるかもしれない。それが、怖いんだ...」


 いつもはへらへらしているのに蓮は恋愛の事となるとすぐにセンチメンタルになってしまう。


 「側にいるだけでいいと?」


 「そこまで殊勝なことは言わないが...」


 「他の男に凛を取られてもいいと?」


 この質問は意地が悪かっただろう。正直康貴は凛が蓮以外の男に靡くとは思っていない。だけど、今のままではこの二人の恋が動くことは無いだろう。本当は自分たちで動かすものだ。しかし、この二人は9年間という時間の中で恋に積極的になるための動力がさび付いてしまい、動きが完全に止まってしまったのだ。


 「...嫌だ。嫌に決まってる」


 だから、誰かがさび付いた動力に油を注さなければならない。


 「だったら...」


 「けど、まだ無理だ。今の俺にそんな勇気はまだない」


 「...そうか」


 ただ油が馴染むにはまだ時間が必要なようだ。




 「蓮君に食べた貰うんだから頑張って作らなきゃね凛ちゃん!」


 「どうしてあんなのに食べさせるものを頑張って作らなきゃいけないのかしら?」


 「も~、そんなこと言ってると他の子に取られちゃうよ?蓮君イケメンだし、スタイル良いし、性格も悪くないんだから。実際入学してから何人か告白されてるらしいし」


 「...この前も言ったでしょ、皆が皆貴方達の様に素直になれるわけでは無いの」


 「でもいつまでもそんなこと言ってたらホントに他の子に取られちゃうかもよ?いいの?」


 「...良いわけないでしょ。絶対に嫌よ」


 「だったら...」


 「でも今は無理。私には告白する勇気なんてない」


 「そっか~、まあいいや!早くお昼ご飯作っちゃお!」


 「そうね」


 似通った思想を持った男女の恋愛はまだ進展しそうにないようだ。

 最近家の低スペックPCがブーーーーっていうノイズを発することがあって断末魔?と不安になっています。

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