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朝(1)

 新作です!いや、言わなくても分かると思いますが。


 今作は現実世界でのお話です。お砂糖多めの物語にしていこうと思っているので期待していて下さい。

 『わたしね、大きくなったらこうくんのお嫁さんになりたいの!いい?』


 広い空き地、その片隅に少し咲いている花達で草冠を編みながら、少女がこちらに視線を向けて言う。


 少女の容姿は整っており、艶やかな腰まで伸ばされたきれいな黒髪、日本人であるにも関わらず白人のような色白の肌、触れれば壊れてしまいそうな華奢な体躯、整った目鼻立ち、成長すれば絶世の美女になること間違いなしであろう少女だった。


 そんな少女の問い掛けに少年はこう答えた。


 「え、嫌だよ」


 夢の中の少女の問い掛けに現実の体が反応したようだ。夢の中で言う少年、今は青年である新川康貴(あらかわこうき)は、半覚醒状態の脳から送られる信号に従って目を開ける。


 「おはよう、こう君。何が嫌なの?」


 目を開けた康貴の目の前には花畑が広がっていた。・・・というのは比喩で、花のように可憐な笑顔を浮かべた女の子がいた。


 その顔をみて康貴の脳は半覚醒の状態から完全に覚醒した状態に移行する。完全に覚醒した脳は疑問を浮かべたので、その疑問を康貴は寝たまま女の子に問い掛ける。


 「何でまた勝手に俺の部屋に入って来てるんだ?ゆう」


 康貴に『ゆう』と呼ばれた女の子、鈴原夕夏(すずはらゆうか)は首を傾げて康貴の問いに答える。


 「幼馴染だから?」


 「親しき中にも礼儀ありという言葉を知らないのか」


 「そんなこと言って、いつもベランダの窓開けてくれてるじゃん。閉めてたら私は来れないんだよ?」


 今の会話で分かったと思うが、この二人は幼馴染で隣同士の家に住んでおり、ベランダを介すればお互いの部屋を行き来することが出来る。


 康貴は確かにベランダの窓を開けていた(鍵を掛けていなかった)。しかし、それにはちゃんとした理由がある。


 「それは、ゆうが前に一回窓が開いてなかったからとかいう理由で真冬に朝からベランダでずっと待ってたことがあったからだろ。しかもその後風邪ひいて寝込んだから親に『あんたのせいで夕夏ちゃんが風邪ひいた』って怒られて・・・何で俺が怒られなきゃいけないんだよ自業自得だろ!思い出したら腹立って来たわ!」


 康貴が寝ている状態からがばっ、と身を起こして苛立ちを口にする。


 「この間だって・・・」


 康貴が続けて毒を吐こうとした時、康貴の視界が突然闇に覆われた。同時に鼻腔をくすぐる名状し難いが、安心する香りに包まれる。・・・夕夏が康貴を抱きしめたのだ。


 「よしよーし。落ち着いて落ち着いてー。過ぎたことはもういいじゃない」


 夕夏が康貴の頭を撫でながら囁く。


 「・・・はっ!ちょっ、こういのもやめろって。俺達もう高校生だぞ」


 安心する香りと柔らかい感触に包まれ少しぼーっとした康貴だが、直に我に返り、慌てて夕夏を引き剥がす。引き剥がされたのが気に障ったのか、夕夏が少し不機嫌そうな顔になる。


 「もー、そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃん。昔みたいにくっ付いてくれていいんだよ?」


 「俺達もう高校生だぞという言葉が聞こえなかったのか?」


 「高校生だからこそくっ付く必要があると思うのですよ」


 夕夏が何故か決め顔で言う。


 「はあ、意味が分からん。・・・どうせ今日もうちで朝ごはん作って食べるんだろ?」


 夕夏のいつもの朝のルーティーンは朝早く起きて身支度を整えた後ベランダから康貴の部屋に侵入し、康貴を起こして、康貴の家で朝ご飯を作り康貴と一緒に食べ、康貴と一緒に登校する。高校に入学して二か月ほど経つがその間この朝のルーティーンはほとんど変わっていない。ベランダからの不法侵入も共働きで朝から家にいない康貴の両親から康貴の世話を任されているので康貴が何と言おうと問題ない。


 「うん!直に作っちゃうから待っててね!」


 また康貴にハグをして夕夏は康貴の部屋から出ていった。部屋の外から階段を下りる音がする。


 「やめろって言ってるのに・・・」


 夕夏はまるで恥ずかしがる様子を見せない。あの頃から身長も体系も大きく変わったが、夕夏の中身はあまり変わっていないように見える。


 康貴と夕夏は家が隣で親同士の仲もとてもよかったので、よく二人で遊んでいた。そのせいで小学校の中学年くらいまでは、お互いにべったりの関係だった。高学年になると康貴が夕夏の育ってきた体に恥ずかしさを覚え始め、康貴からくっ付くようなことは無くなったが、中学校になっても夕夏は相変わらず康貴にべったり。


 夕夏は可愛いので、康貴は小学校、中学校と嫉妬の視線をを浴び続け、流石に高校もそれはきついので高校に入ってからは学校でくっ付くのは禁止にしたのだが、その代わりに家でのスキンシップが増えてしまった。


 「どうにかしないとな」


 と、呟いたものの、さっき言ったようにスキンシップは多いが家での世話は夕夏がやってくれているのであまり強くは言えないのだ。


 学校の制服に着替えながら、いつものように考えていると下から、


 「朝ご飯できたよー!」


 と夕夏の声が聞こえてきた。


 「すぐ行くー!」


 康貴は脱いだ寝間着を片して、一階に降りていった。

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