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5話目 中編 魔族の力

「ではまず最初に肝に銘じておいてほしいのが、魔族が技を放つ根源となる力は『生命力』だ」

「生命力って……まさか寿命か?」

「言っただろう、危険はないと。そうだな……言い換えるなら気力や根性、心といったものだ」


 マジで?友情とか努力で勝利をもぎ取っちゃうそんな少年漫画みたいな根性論なの?


「もっとアレかと思ってた……魔力だとかMPだとか」

「なんだそれは?人間の使ってる奇跡も似たようなものだぞ。使用回数が決まってると聞いたことがあるだろうが、それはつまり限界以上を使えば目眩を起こすし吐く奴もいるだろう。そして最終的に精神疲労がピークに達して倒れるということを意味する……そうなったら戦いどころの話ではないから回数制限が設けられているんだ」


 そう言いながらララは大剣を持ってないもう片方の手にも黒い炎を灯す。


「そして人間が扱う奇跡と魔族が使う力の違うところは心の差。人間の奇跡は一定の威力が必ず放たれるが、魔族はその時の感情や疲労感に左右される」

「それじゃあ失敗することもあるってことか?」

「まぁ、本来の力が発揮できないことや、逆に力を出し過ぎることはあるな。我の場合は感情の起伏が少ないから大きくなることはあまりないが」


 隣でレチアとイクナが「ウニャウ……?」と首を傾げていた。

 えっ、大丈夫?イクナはまだしもレチアが理解できてないってどうなの?

 というかその技に関しての説明がまだ始まってすらいないんですけど……


「……そういや人間が奇跡を撃つ時って詠唱してるけど、イクナがやったのと同じってことは魔族のはいらないんだよな?」

「そうだ、それも借り物との大きな違いだ」

「借り物?」

「聞いてないか?奇跡は教会に行って使えるようになると」


 ……そういえばルフィスさんから聞いたことあった気がする。


「そう、人間の奇跡とは元からある加護と違い、何者かから与えられたもの」

「何者か?神様とかそういうんじゃないのか?」

「教会の奴らはそう信じてる。ただ長きに渡って転生し続けてきた我はそんな存在、一度たりとも見たことがないから信憑性が低い。だから『何者か』なのだ」


 あー……まぁ、そんなもんか。

 特別な力を与えてくれる存在って考えたら勝手に神様だとか仮説を立てちまうが、もしかしたら実在する人間の可能性もあるしアナさんのようなこの世界のシステムかもしれない。

 ……って、もしかしたらアナさんが知ってるんじゃないか?


【否定します。奇跡の使用を可能にする存在の情報は皆無】


 アナさんでもわからないのか。ということは逆に言えば、アナさんとは無関係な存在?

 そもそもアナさんがどういう理由で俺をアシストしてくれるのかすら知らないんだがな。


【黙秘します】


 あ、はい……

 いや、別に聞き出そうって気もないし、今まで助けてくれまくってるから信用はしてるし、いいんだけどね。


「まぁ、とにもかくにも魔族の力ってのは俺たちにも使えるってことでいいんだよな?」

「もちろんだ。ただし、人間の与えられてすぐに使える奇跡と違ってイクナのような天恵的なセンスがなければ努力は必要だがな。やってみるか?」

「もちろんにゃ!」


 俺より先にレチアがやる気満々に答える。

 そしてその気合いは数十分で終わることとなった。


「もうダメにゃ……」

「はっや。諦めるの早過ぎない?ララも努力が必要だって言ったじゃねえか」

「そうだけどにゃ~……」


 レチアは納得できずにいる様子で子供のように不貞腐れていた。

 まぁ、気持ちもわからないでもない。なんせ魔族の力を使う条件ってのがなぁ……


「何にゃ、体の内側にあるものを感じて放出する……って曖昧にもほどがあるにゃ!」

「と言われてもなぁ……」


 レチアが憤慨し、ララが難しい顔をして困る。

 そう、魔族の力を使うために説明された内容があまりにも抽象的過ぎて努力のしようがないのだ。

 よくあるだろ?チャクラだとか霊圧だとかを使って戦う漫画とかアニメ。

 あれを現実でやれと言われてるようなもんだ。

 俺からすればこの世界自体がファンタジーでできてるから「頑張ればできるんじゃね?」というモチベーションがあるが、元の世界で言われたらレチアと同じ感じになってたと思う。


「だけどもう少しわかりやすい例えっつーか、コツとかないのかよ?流石に初日とはいえ、何もわからない状態からスタートしたら何年かかるかわからんぞ?」


 年……いや月単位で成果が出なかったらデマだったと疑い出すと思う。

 それに技術というくらいなのだからコツの一つや二つくらいはあるはずだ。

 人によってはコツを聞かれることを嫌がったりする奴もいるが、それは自分が苦労して得た結果を他者が簡単に会得するのが納得できない心情があるからだろう。

 ララがそういう性格でないことを祈ろう。


「方法がないわけでもない。すぐにでも使える方法があるぞ」

「あるんだったら今すぐにそれをするにゃ!」


 レチアが待ってましたとばかりにそう言って急かす。

 ……嫌な予感しかしない。

 先にララは何度も「努力しなければならない」と言っている。なのにそんな簡単に技を習得できる方法があるはずない。


「……わかった。それじゃあまずはヤタで実践しよう」


 ほら来たよ。意味深な間を置いた上に多少のデメリットがあっても問題ない俺に白羽の矢を立てやがったぞ、この魔王様。

 俺は練習用のカカシじゃねえんだが……


「あ、そ……で何するの?」

「ヤタは特別何かするわけでもないからそのままにしててくれ。レチアとイクナは少し下がっててくれるか?」


 ララがそう言うとレチアとイクナはメリーたちのいるアリア一家のところまで下がっていった。

 安全だと判断したタイミングでララが行動を起こす。

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