Dの廃墟 あなたのすぐそばに
ある廃墟に魅入られた人そして混乱迫る現実と虚構の日々
怪しい歌声と旋律の恐怖
また一人また一人闇の中に引きずり込まれる
もう二度と出れない闇の中へと魅入られた人たちと開放されぬ魂
恐怖の夜がまた訪れる
ある静かな街に閑静な団地あり子どもたちが公園で遊びまわり、人々の楽しそうな声が聞こえていた。
時は流れ十数年後、ある子どもたちの謎の失踪事件が起こり未解決のまま時は過ぎ
また一人また一人とその団地から人々声がだんだんと消て行った。
それから時は流れ、数年が過ぎた頃、閑静な住宅街のそばにあるごく普通のどこにでもある団地である。
ただ他と違うところは子どもたちにも忘れられた寂れた公園があるというだけのありふれた佇まいの何の変哲もない団地である。
そこの団地に住む男、30過ぎのサラリーマン。
男の名前は加藤 和也、背も高くスラっとした体格で女性受けのいいイケメンであり面倒見もよく家庭を大事にする男だ。
5年前ほど前、結婚を気に妻の祐子とともにこの団地に引っ越してきた。
妻の祐子は言葉遣いも丁寧で物腰も柔らかく近所でも評判のスタイル抜群な美人だ。
妻とは、大学時代に知り合いすぐ意気投合して2人の交際が始まり大恋愛の末、まわりにに祝福されて結婚し、順風満帆な幸せいっぱいの家族だ。
そんな世間が羨むような美男美女の夫婦でその二人の間に4年前息子の祐人が生まれ
今は妻と子共との家族の3人暮らしで妻は専業主婦という一般的な家庭である
「おはよう」和也さん起きてといつもの様に妻の祐子が僕をベットへと起こしに来る
いつもの様にテーブルには、温かい朝食が用意されている。
温かいご飯とお味噌汁、アジの干物に野菜サラダとコップには新鮮な牛乳がある 妻にはいつも感謝する
僕は、妻の祐子と子どもとテーブルを囲み朝食をとりながら妻と他愛もない話をしながら至福の時を過ごし、僕は仕事に行く支度を整え 妻の祐子が用意してくれた愛妻弁当を持ち 「いってきます」と妻と子供に言って家を後にした。
妻は「和也さん行ってらっしゃい」玄関先までいつものように妻が見送ってくれる。
僕は、寂れたような公園のそばの道を通り駅へと急いだ
駅に着くと通勤通学のラッシュで人が溢れかえっている 駅の売店で新聞を買い人混みに押されながら駅の改札を抜けホームへと急ぐ
満員電車に揺られ会社へと向かういつもの日常だ 和也はこの通勤電車の混雑さえなければ本当に良いなと思いながらさっき売店で購入した新聞を片手で持ちそれに目を通しながら満員電車に揺られ降車駅へと向かう 「次はまもなく、北海橋、北海橋。お出口は、右側です。
北海橋の次は、ミナミ大川に止まります」とアナウンスが車内に流れる そのアナウンスを聞き 僕はすいません降りますので通してくださいと周囲に声をかけ電車のドアの近くへとやっとの思いで移動する 電車が駅に着くと人々が一斉にホームへと降りていく。
やっとの思いで駅のホームに降り立つと会社に急ぐ人や学生でごった返している
駅の雑踏を抜け暫く歩いて行くと一際目立つ大きなビルがそこに立っている
和也は、東和貿易と書かれたのビル中へと入っていく外資系貿易会社の東和貿易の社員だ。
同期入社の中ではエリートと呼ばれるほどの出世頭でなかなかの切れ者との評判で部下や同僚たちからも非常に信頼が高い。
会社に着くと「加藤部長おはようございます」社員のみんなが挨拶してくれる
僕は「おはようみんな元気かい」とにこやかに答えるのだった。
始業時間を迎えいつもの様に朝礼が終わり自分の席へ着くと女子社員がいつものように部長はホットコーヒーで良いですね
と聞いてきたので僕はそれでお願いしますと答えた。部長お待たせしましたと女子社員がホットコーヒーを淹れてくれた。
毎朝のことだが、これはありがたい通勤電車での窮屈さから開放される感じがした。
僕は、淹れたての温かいコーヒーを飲み、部下たちからの報告書に目を通している
しばらくするとある女子社員が、「部長大変申し訳無いのですがクライアントからの要望が変わってしまったので対処してもらえませんか」とのことだ
僕は、直ぐ様プロジェクトのメンバーを会議室へと集めた なかなかよい提案もなくただ時間だけが刻々と過ぎていく 会議も白熱する中、昼休みの休憩を挟むこととなり、
僕は自分の机から会議室へ妻の作ってくれた愛妻弁当を持ちこみ、そこで昼食を取ることとした。他の社員たちも資料に目を通しながらそこで昼食をとるも居る
女子社員が気を利かせてお茶をいれてくれたありがたいホット一息付ける
「部長、愛妻弁当ですか羨ましいですね」と他の社員たちからも言われ嬉しくもあり少し照れくさかった。
昼の穏やかな時間が過ぎ、また白熱した会議が始まった。
和也の怒鳴り声や他の社員たちの大きい声が会議室に響き渡っていた。
その夜、 和也がその白熱した会議をまとめあげた時は、いつもの退社時間よりだいぶ時が過ぎていた。
僕は、妻の祐子に仕事で遅くなったが家で食事をするからと妻に電話で伝え家路へと急ぐ駅へとたどり着いたがラッシュ時間からだいぶ時間が過ぎており人もまばらにしか居ない
悠々と駅の改札を抜けホームへと急ぐ 暫くするとアナウンスが流れホームヘと電車がやってきた
朝のラッシュが嘘のようにガランとした車内で開いている席へと 座る
電車に揺られながら暫くするとアナウンスが流れ「次はまもなく、南海橋、南海橋。お出口は、左側です。
南海橋の次は、ミナミ大谷に止まります」いつものようにドアの方へ移動し電車が駅へと到着してドアが開くとホームへと降り立ち
そして階段を降り改札へと足早に進む
改札を抜け、人通りの少なくなった駅前を過ぎ、人通りの少ない道を進むといつもの様に団地のそばの公園を通りかかった時、風もないのにブランコがきぃきぃと嫌な音を立てて揺れている
なにか嫌な感じがするなと思ったその時、どこからともなく子供の笑い声や歌声かすかにが聞こえてきた。
和也は、突然の出来事に驚き、和也は声にならないような小さな悲鳴を上げてしまった。
恐る恐る周囲を見回すと 一瞬公園で遊ぶ子どもたちの姿が見えた。
一瞬の出来事だったので和也は、物凄く驚いたようだったが、もう一度あたりを見回すとそこには誰も居ない静かな公園だけが広がっている
きっと何かの見間違いなのかと自分に言い聞かせ恐怖を紛らわせた。
和也は、今日の仕事の疲れがたまってるのかと思いながら恐怖と不安な気持ちに押しつぶされそうになりそうな自分にあれは何かの見間違いだと言い聞かせながら自宅へ帰っていった。
和也は、自宅のドアの前に立ち妻の祐子に心配させてはいけないと深呼吸をして気を取り直した。
僕は、自宅のドアを開け「ただいま」玄関先から声をかけると妻が「和也さんお帰りなさいお仕事お疲れ様」と玄関まで優しく出迎えてくれた。
僕は、部屋に入って開いたお弁当箱を「ありがとう美味しかったよ」と言って妻に渡し
寝室へ行きスーツを脱ぎシャワーを浴びるため僕は、浴室へと向かった
シャワーを浴び部屋着に着替えると、妻が用意してくれた温かい夕食を妻と一緒に食べる ほんとうにありがたいと思う テーブルを囲み夕食を摂りながら今日あった不思議な出来事を妻に話していると妻は「ここ最近いつも遅くまで頑張っているから疲れてるのよ 休みにみんなでどこか遊びに行きましょうね」と明るく返した。
祐人は、遅くなることがわかっていたので先に食事を済ませ今は寝ているという 僕は子供の寝顔を見て安心して妻とベットへと行きその日はぐっすりと眠った。
それから数日後、またあの日と同じように仕事の会議で夜遅くなり朝のラッシュが嘘のようにガランとした車内で開いている席へと座る
仕事の疲れからか、電車に揺られながら席でうとうとしているとアナウンスが流れ「次はまもなく、南海橋、南海橋。お出口は、左側です。
南海橋の次は、ミナミ大谷に止まります」
そのアナウンスに起こされ慌ててドアの方へ移動し電車が駅へと到着してドアが開くと僕は、ホームへと降りた。
人通りの少なくなった駅前を過ぎ、いつものように団地のそばの公園を通りかかる
和也は、少し不安な心境だった あの夜とおなじような不気味な雰囲気が周囲を包んでいる
きぃきぃと不気味な音を立ててまたあのブランコが揺れているではないか
和也は怖いと思いつつもきっと風で揺れてるんだろうと自分に言い聞かせた
奥の茂みがガサガサと音を立てている 和也は、恐怖のあまり体が震えるそして「にゃあーん」と鳴き声が聞こえた瞬間何だ猫か 拍子抜けのような気もするがホッとしている自分がいると和也はおもった。
その安心もほんの束の間のことだった
あの日と同じようにまた一瞬子供の姿が見えたのだ
恐怖におののきながらも周囲を見回す「誰か居るんですか」と和也は、震える声で声をかけるが誰もいない、ただそこに静かな夜の公園が広がっているだけだった。
和也は怖くない怖くないと自分自身に言い聞かせながらやっと落ち着きを取り戻した
最近は仕事が忙しく子どもと遊んでやれる時間が少なかったから気のせいだろうきっと疲れてるんだと思ってそこから立ち去ろうとすると、どこからともなく子どもたちの歌声が聞こえてくる 悲しそうな声でカゴメカゴメと・・・
夜の公園で遊ぶ幽霊のような生気のない顔をした子どもたちの姿が見えたのだ
男の子と女の子が和也の横に現れ「ねぇ僕達とあそぼうよ」「ねぇ遊んでよ」と和也の手を引くのだ 怖い、悲鳴も上げれぬ程の旋律の恐怖に和也は必死にその手を振りほどきそこから逃げ出した。
突然の出来事に和也は、、震える身体をやっとの思いで動かし足早に自宅へと急いで帰った
和也は、自宅のドアの前に立ち妻の祐子に心配させてはいけないと深呼吸をして気を取り直した。
平然を装い自宅のドアを開けいつもの様に「ただいま」玄関先から声をかけると妻が「和也さんお帰りなさい、お仕事お疲れ様」と優しく玄関まで出迎えてくれた。
部屋に入って開いたお弁当箱を「ありがとう美味しかったよ」と言って妻に渡し
僕は、寝室へ行きスーツを脱ぎシャワーを浴びるため浴室へと向かった。
いつもの様にシャワーを浴び部屋着に着替えるいつもの様に先に祐人は食事を終え眠っている。
妻とテーブルを囲み遅い夕食をとり、リビングで妻にに先ほどあった不思議な体験を妻に話していると 突然カチャと軽い音が響きリビングのドアが開いた
見知らぬ男の子と女の子の二人がすたすたとリビングに入ってきて、和也のズボンを引っ張って「ねぇ僕たちと遊ぼうよ」と言った 祐子に聞いてもどこの子供なのか知らないと言う
もしかしたら祐人の保育園の友達なのかなと僕は思った。
夜も遅いのにどこの家の子供だろう無責任な親もいるものだと思い「じゃあ家まで送ってあげるからおじさんと行こう」と言って男の子と女の子の手をひきながらリビングのドアを開けると
突然和也の体は闇に吸い込まれるように空中に放り出された暫くの静寂後ドサッ
和也の身体に今まで味わったことのない衝撃と痛みが全身を駆け巡った
「うううっ」と声にもならないようなうめき声を上げ、そのまま和也の意識は冷たい黒きまどろみの中へと沈んでいった。
和也の体は団地の屋上から地上へとたたきつけられたのだ
屋上から落ちた和也の身体の上には、季節外れの桜の花びらが舞い散っている。
カゴメカゴメとあの物悲しい歌声と子供の遊ぶ声と男の子と女の子の笑い声だけが辺りに静かに響いていた。
そして夜が明け、いつもの様に管理人が鼻歌まじりで自転車に乗り無人の団地内を巡回している。
コンクリートに叩き付けられ血の海に沈んだ男の身体を見つけ、すぐさま管理人は自転車を降り「どうしました、大丈夫ですか」と声をかけたが全く反応はない
「ひぃい、しっ死んでる」と悲鳴を上げ管理人は腰を抜かすほど驚きうろたえた。
管理人は、震える手で携帯をポケットから取り出し震える声で「人が死んでいます場所は・・」
すぐさま警察が呼ばれた
警察が現場検証に来ている団地内をあちこち調べ非常線もはられた
警察の調べによると男の名前は加藤和也、32歳、独身 団地より数キロ離れた、不動産調査会社の独身寮に住んでおり数日前、この団地の解体調査に向かったあと連絡が一切取れず行方不明になっていたのだ。
和也の荷物は屋上に丁寧においてあり、和也の荷物からはサラ金や貸金業者の督促状が見つかり、警察の調査により自殺と判断された。
その団地は誰も住まなくなってから飛び降り自殺が多く立入禁止となっており近々解体されることが決まっていた。
そして団地で家族と暮らしていたはずの和也の部屋には、誰の姿もなくただ乱雑に荒れ果てた廃墟がそこにあっただけだった。
また夜の帳があの団地を妖しく包み込んだ
ある夜、和也が倒れていたその場所から何事もなかったように和也が立ち上がると、僕は何をやっていたんだろうかと困惑しながらも和也は、自分の住む部屋へと戻って行った。
そこには打ち捨てられた人形と乱雑に散らかった廃墟の部屋だけであり、ただ静けさがひろがる薄暗い廃墟がひろがっているだけだ
僕は、祐子、祐人どこだ、妻と子供名前を呼ぶが、ただそれは虚しく薄暗い部屋の中で響き渡るだけだった。
和也は必死にいろんなことを考えたが、何故か曖昧な記憶しかない
妻と子供の顔も記憶も曖昧な感じだ 必死に僕は考えた 何故ここに、たしか僕はここに建物の解体のための調査に来たはずじゃぁなかったのか 全てはつながった。
僕には妻も子供も居ない 結婚だってしていないどうなっているんだ
耐え難い恐怖と絶望感に襲われただ子供のように泣き叫ぶ和也の声だけが周囲にが響き渡るだけだった。
もちろん団地の周りにも、他の部屋にも人の気配はない
ただ無人の静けさに包まれた廃墟のみである
少し落ち着きを取り戻した和也は、誰か事情が聞けないかとあたりを探すが誰もいない。
「誰かいませんか」「誰かいませんか」「いたら返事して下さい」震える声で、和也は叫ぶのだったがただ虚しくその声だけが無人の団地に響いているだけだった。
和也は、人の姿を求めあちこちと団地の中をさまよったのだが人の気配は全くなかった。何時間経ったのだろうか途方に暮れあの公園へとふらふらとやってきた ブランコに座って憔悴しきった和也が途方に暮れている。
その公園そばを2人組の女子高生が「ヤダ怖いよ早く行こう」という声とともに足早に通りすぎて行ったが、和也の目には、何も写らない、その耳には全く聞こえないようだった。
しばらくすると、どこからともなく子どもたちの遊ぶ声がどこからともなく聞こえてきた 和也は、どうしてなのか解らないが以前のような恐怖は感じない
あの公園で見た男の子と女の子が和也のもとへとやってきたのだ 男の子は和也に「ねぇなにしてるの」女の子は「どうしたの」と優しく声をかけてきた 和也はポツリと誰もいない居なくなってしまったと一言生気のない声で言っただけだった。
男の子と女の子は、和也の手を引き「ねぇいいから僕たちと遊ぼうよ」と言った
和也は、前に感じた恐怖を男の子と女の子に恐怖を全く感じず、とても嬉しい気持ちになり男の子と女の子に手を引かれながらたくさんの子供たちが遊んでいる輪の中へと歩いて行った。
男の子と女の子に手を引かれながら連れられて行った和也の姿は、いつの間にか子供の姿へと変わってしまった。
また朝が訪れ朝日が団地を夜の帳から解き放ち静かに佇んでいる
また暗く冷たい夜が訪れあの公園から子どもたちの遊ぶ声と子どもたちの歌声が聞こえてくる
誰もいない廃墟となった団地のあの公園から聞こえてきているのだ
カゴメカゴメと歌いながらたくさんの子供達が遊んでいる 子供に変わってしまった和也の姿も見える 子どもたちはとても楽しそうに遊んでいるように見える
和也を連れて行った男の子と女の子の二人の姿が見える
∩( ` ▽ ´ )∩ オバケだぞ~
数年前に書いていたものです
あと少し続きますがお付き合いください