シュリケンのような乗り物に乗って軍隊と戦う女の子の物語
少女の人生を変えたのは、幼き頃の体験。
それは正義ではなく、寧ろ悪かもしれないが、少女にはそんなことは関係ない。
戦うことに意味がある。戦わなくてはいけない、全世界の敵になろうとも、私の心は変わることはない。
建ち並ぶ高層ビルの最上階のさらに上で、激しい銃撃戦が繰り広げられていた。軍用ヘリコプター3機が小さな何かと戦っている。侵略者だろうか。それともテロ組織か。ヘリコプター3機の浴びせる機関銃は少しも当たらず、宙返りをしたり複雑な動きをして見事に交わされている。
「何なんだあの乗り物は、シュリケンのような形をしている。乗っているのは少女か。」
シュリケンのように高速で回転しているが、刃物は付いていないらしい。少女の乗っている部分も回っていない。しかし、コックピットなど無く、少女はむき出しの状態でしがみついている。操縦桿のような物もなく、体重移動だけで器用に機体制御をしているらしい。
激しい銃撃の嵐から逃げるようにビルの間を縫っていく。軍隊は少女を見失ったらしく、一時撤退する部隊と上空から索敵する部隊に分かれた。瞬時に上空で散開し、間もなく上空部隊は少女を発見し、後を追う。
少女はシュリケンを乗り捨て、ビルの中に駆け込む。そこは地下街に繋がっていて、ようやく繁華街を抜けることができた。しかし、敵との距離はまだ近いので油断はできない。はやく故郷に帰らなければ。故郷に向かうための駅は、かなり遠い。シュリケンを呼び戻す他ない。場合によっては敵を引き連れてきてしまうことになるが、迷っている暇はない。無事にシュリケンは戻ってきた。この森を抜ければ駅に着く。
シュリケンに乗って森を越える。涼しい風が吹き、ようやく落ち着いて心を取り戻した。森は静かで真っ暗だ。遠くに駅が見えてきた。速度を上げ、高度を下げていく。着陸を試みようとしたその瞬間。静かな森に銃声が鳴り響いた。銃声とともにシュリケンは反動を受け、失速していき森に突っ込んだ。その僅か直前にシュリケンから人影が離れていくのが見えた。
少女は木の枝がクッションになったりする事もなく、地面に打ちつけられた。しかし、地面すれすれのところで振り落とされたことと、戦闘服を着ていたおかげで、意識が飛ぶことはなかった。銃弾は少女の足に命中していたため、歩くことは困難になっていた。なんとか駅の近くまでたどり着いた。そこにはひとりの少年がいた。
「ひどい傷だ。大丈夫かい。」「駅に行かなければならない。運んでくれぬか。」「よし、痛んだら言ってくれ」「すまない、ありがとう。」
力に自信のある少年は、軽々と少女を担ぎ駅まで続く階段を駆け下りていった。
少年は、心配そうな表情で少女を見送った。
これは一人の少女の葛藤です。
通常、この少女の気持ちを理解できるものはいません。
現代において、彼女のような体験をした人は国内にはいないはずですから、なぜこうなったのか。という事を楽しむ作品です。感情移入は難しいと思います。