24限目 西園寺さんとシークレット・アイ
2ヶ月ぶりの更新です。キャラブレてなきゃいいけど・・・
「じゃあ失礼します・・・」
音無先生からの西園寺さん情報を聞き終え、僕は職員室を出ようとする。やれやれ、それにしても随分と職員室を荒らしてしまった(まぁ僕が叫んだのが悪いんだけどさ)。絶対ブラックリスト入りしたよねこれ。教育委員会で議題に出されるやつだよねこれ。
「あ、そうだ久遠。今の話くれぐれも他に漏らすなよ」
ふと思い出したかのように、音無先生が警告する。まぁ別に僕は自分しか知り得ない情報を周りに言いふらして人気者になってやろうとか、そういうアバンギャルドな思考を持ち合わせる人間ではないから、そんなことをするつもりは毛頭ないのだが、一応のため他言無用であるその理由を問う。
「西園寺のこと、人には言わない約束だったからな」
「え、その約束って冗談だったんじゃないんですか」
「誰も冗談だなんて言ってないだろう」
いや、まぁ言ってないけど、言ってないけどさぁ、あの流れだとどう考えても冗談の流れじゃん。ほんっとつくづく理解できない人だ、音無先生は。
「でも、結果的に約束破っちゃってますけど、大丈夫なんですか?」
僕はここで一抹の不安を口にした。金持ちの娘だから、約束を破ったら多大な損害賠償請求をしてくるようなことがあってもおかしくはない。しかし、決して臆することない音無先生は人差し指を口元に添えて静かにこう言った。
「口約束は、約束じゃねぇんだぜ・・・?」
いや~あなたが言うとホント説得力ありますわ。約束すら自分のルールで無きものにしてしまう、これが音無先生の流儀なのだ。そんな先生をつくづく理解できないと思うとともに、つくづくカッコイイ先生だなぁ、と僕は内心惹かれてしまっている。
「長かったですね久遠さん、先生と何かお話でもされていたんですか?」
教室に戻ると、安藤さんが僕に尋ねてきた。遅刻を咎めるだけにしては少々長すぎる。そんなまっとうな質問に、僕は「虚」で返す。
「ちょっと、死海文書についてね」
「・・・はい?」
理解できないという表情を浮かべる安藤さん。それもそうだ、僕だって分かっていないのだから。なんだよ死海文書って。
では何故そんな嘘をついたのか。簡単だ、音無先生の侠気を無下にしないためだ。真実は僕の口から紡ぐべきではない。
その日の放課後、僕はいつも通り安藤さんの体験入部が終わるのを教室で待っていた。教室には僕以外に誰もおらず、綺麗な夕日が室内を彩る。春の日の夕暮れ、教室に1人、僕は日常アニメの主人公のような気持ちで黄昏れていた。
世界を大いに盛り上げるワガママ少女とか、些細な謎も気になってしまう豪農の家のお嬢さんとか、そういうJKが現れるようなワクワクした気分だった。まぁそんなものはあくまで妄想であって、現実は平凡だ。グラウンドを見れば県大会に向けて励んでらっしゃる運動部の面々が発声よろしく汗を流しているし、中庭を見れば男女が2人きりで楽しそうにおしゃべりをしている。あぁ~後半の奴ら殺してぇ。
で、裏路地の方を見れば、数名の男たちが1人の少女を無理矢理ハイエースに乗せようとしている。ほらね、現実なんてこんなもんだ。友達が少ないとか言っておきながらハーレム結成したり、組の娘と恋人のフリをすることになったりとか、いつまでもアニメみたいなことが現実に起きることを期待してちゃあダメなんだ。僕はもう高校生なんだから・・・
うん、おかしいね。
もう1度、裏路地に目を向ける。間違いない、3名の男が少女をハイエースに無理矢理乗せようとしている。しかも、その登場人物すべてに見覚えがある。まず、3名の男とは、今朝僕を追いかけてきたヤンキー3人組だ。そして問題の拉致られようとしている少女・・・紛れもなく、西園寺さんだ。
僕は1つの過程を立てた。あのヤンキー3人は西園寺さんに対し、今朝の落とし前をつけようとしているのだ。散々コケにされたことにより彼らのプライドが傷つき、それを払拭するために西園寺さんを誘拐しようとしている最中なのだろう。過程を整理すると、僕はすかさず走り出す。無論、裏路地にだ。
僕が介入したところで何も解決はしないかもしれない。西園寺さんの拉致を止めようとしたところで返り討ちに遭うのが関の山だ。だが、だからといって黙認することなどできない。いま、複数いるヤンキーに対し、西園寺さんは1人。頼れる者も味方もいない、孤独な状況だ。だから、僕が少しでも彼女の力になりたいと思ったのだ。好感度上げとかヒーローを気取りたいとか、そういうんじゃない。やらぬ善より、やる偽善だ。
「おい君、廊下を走るな!!」
1階まで走り降りたところで、僕は男教師に怒鳴られてしまった。だが僕は完全無視。今はそれどころじゃない。緊急事態なのだ、それくらいの逸脱でいちいち咎められていたらきりがない。犯人を追跡する時、律儀に赤信号で停止するパトカーがいるか、いやめったにないはずだ。それと同じなんだ。
「おい!走るなと言っているのが聞こえないのか!?」
しつこい。しつこい男教師だ。パッと見、熱血の体育教師だと予想する。理由は、いかにもといった具合の赤ジャージを纏っているからだ。その赤はジャージの柄なのか、それとも返り血が染みついたものなのかは分からないが、非常に鮮やかな赤色だった。未だに怒鳴ってきているが、僕は引き続き完全無視を続ける。
やがて僕は下駄箱に辿り着いた。内履きを脱ぎ、外履きに履き替えようとしていた時だ。誰かが僕の肩を掴んだのだ。ビクっとして、僕は振り返る。
「はぁ・・・はぁ・・・やっと捕まえたぞ・・・」
その正体は、先ほどから怒鳴り散らしてきた男教師だった。しつけぇなこいつ!!!熱血具合もここまで来ると心底気持ちが悪い。もはやパワハラだよこれ。てかお前息切らしてるってことはお前も廊下を走ってきたんじゃねぇか、この二律背反教師が!!!
「ちょっと職員室まで来い・・・!」
出ました、熱血教師特有の職員室連行。この時代にもまだ存在していたのか、こういう鬱陶しい方々。
「すみません、後で行きますから・・・いま急いでるんで!」
僕は強行突破しようとする。しかし回り込まれてしまった、逃げられない!くっそ何だこの異様に分厚い胸板は!ボディビルダーみたいな胸板しやがって!こんな私立高校で燻ってねぇで世界ボディビル選手権で活躍してろバカ!
と、ここで僕は思いついた。この男教師が僕に付きまとってくるというのなら、ついてきてもらおうじゃないか、と。こんな屈強な男がいれば怖いものなんてない。あのヤンキーどもなんて一瞬のうちに塵芥にしてくれるに違いない!
「すみません、一緒についてきてくれませんか!裏路地で女の子がヤンキーたちに誘拐されそうになっているんです!」
僕はありのままの事実を男教師に伝えた。女の子がヤンキーに誘拐されそうになっていること、それに伴いついてきてほしいこと。それらを正直に伝えたところ、返ってきた言葉がこれだ。
「何をワケのわからんことを言っているんだ!そんなこと言って逃げる気だろうお前!」
残念、信じてもらえなかった。裏路地で起こっている大きな事件よりも、目の前の小さな逸脱者を咎めようとするんだな、教師ってやつらは。まぁ、今の僕が「誘拐」とか言っても苦し紛れのワードにしか聞こえないのも仕方がないかもしれない。くそう、なんという屈辱!これじゃあ狼少年みたいじゃないか!大して嘘をついてきた人生じゃなかったのに!
僕がこの状況から抜け出すには、大人しくこの男教師の言うままに職員室に連行されるしかないのだろうか。10分程度の説教を食らうしかないのだろうか。いいや、それじゃあ意味が無い。今すぐに裏路地に行かなければならないのだ。そうでないと誘拐が成立してしまうのだ。
どうすればいい。どうすれば今すぐに、この屈強な男教師の妨害を切り抜けることができるのか。文字数が多くなってきたので次回まで持ち越すしかない・・・
いきなりのメタ発言は許してヒヤシンス




