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喧嘩と猿顔

ここは何処なんだ?

ふと気がつくと周囲は何も見えず真っ暗だった。


「──っ!?」


周りの闇が眩い光により消し飛ばされた。

と同時に急な光りに瞳の順応がついていける分けなく、瞬時に瞼をおろした。


「・・きみ・・だい・・か・?」


何か・・聞こえる。

人の・・声?

光に慣れ始め、閉ざしていた瞳を少しずつ開いていく。


「君!大丈夫か!?」


え!?

目の前に居たのは紛れもなく荒木先生だった。

先生の表情は真剣さと焦りが入り交じっているように見えた。

──刹那

何処から泣き声が聞こえた。

聞き慣れた泣き声に俺はそれが誰かが直ぐに分かり、立ち上がろうとして・・・立てなかった。

早くアイツの所に行かないと!!

だが、またしても立ち上がることは出来ない。

言うことを聞かない身体に怒りを覚え、足を睨んだ。

そして俺は信じられないモノを見てしまった。右足が・・・ない?

確かにあるはずの足が、

膝から下が無くなっており、血が溢れ出ていた。

やがて俺の中で止まった、時間と言う概念は


「うわあぁぁああぁあ!?」


叫び声と共にまた動き始めた。






第5話《喧嘩と猿顔》




「ハァ・・ハァ・・。」


朝から嫌な汗が身体中から溢れ出る。

──くそ!

取り外していた義足を着けて風呂場に向かう。

やや乱暴に着ていた衣服を脱ぎ捨て、風呂場に入りジャグジーを捻る。すると頭上から温かいシャワーが降り注ぐ。


「何で・・毎日の様に性懲りもなく!」


悪夢。

別に毎日見ているわけではないが、かなりの頻度でみてしまう。

その度にシャワーを浴びて心を落ち着かせるのだ。


「・・・ふぅ。」


ジャグジーをまた捻り、シャワーを止める。

風呂場を出て、全体をタオルで拭き終えると、制服に身を包んだ。

そして、いつも通りに朝食を作っては食べて、片付ける。

あとは鞄を手に持ち


「・・・行ってくるよ。」


家を出る。

しかし覇気はない。

あの悪夢のおかげで朝から鬱だ。


「おはよう!茜君。」


ここでイレギュラーが起きた。

て言うか起こされたんだと思う。

もちろん故意的に・・だ。


「あや・・七海。」


綾瀬と言おうとしたら、一気に彼女の目つきが鋭くなった。

だが言い直すと鋭くなった瞳はノホホンとしたものへと変わった。

・・・危なかった。




「なぁに?」

「なぜ俺の部屋の前にいやがる。」

「一緒に学校に行こうかなぁ〜と思って待ってたの。」

「・・・あっそうかい。」


鍵を閉めて、スタスタ歩き出す俺。

今は夢のせいで七海と楽しく会話できる状態じゃないんだ。


「ちょっと〜、待ってよ!」


俺の後ろをトコトコと付いてくる七海は、すぐに俺の隣に肩を並べた。


「??茜君元気ないね?どうかした?」

「いや・・何でもない。」

「・・・そう。」


一瞬、彼女は悲しい瞳の色を見せた。

だが俺は彼女が悲しむ意味が分からなかった。

だってまだ出会って2日目だ。

理解するには短すぎる。


「あ、あのね!今日は茜君のお弁当作ってきたんだよ。」

「・・・へぇ〜──へ?弁当??」

「えへへ。昨日のお礼とミルクを助けてくれたお礼。それでね──」


とても楽しそうに話す彼女を見ていると・・何故だろう?

心の中のうやむやが驚く程にすぅ〜・・と消えていく。

重かった足取りも今では軽やかに動いてくれる。


「おはよう!」


教室に入ると爽やか少年こと総司が近寄ってきた。


「綾瀬さんと一緒に来たの??」

「そうだけど。」


俺達のやり取りの後に騒がしくなる教室。

徐々に俺へと集中する視線。

・・・なんだ!?


「あの・・須藤が・・!?」


俺が何!?


「なぜ・・綾瀬さんと一緒に!?」




え!?

だって家の前にいたんだもん!!

そう口に出そうとした時に、ポンと俺の肩に手が乗った。

振り向くとやたら良い体格をした猿顔の男が俺を睨んでいた。

「あ?なんだお前。」

「ちょい面貸せや。」


と言い訳で今はトイレにいる俺と猿顔。

そして、まだ睨んでくる猿顔。

なぜに睨む?

・・・まさか・・!?


「俺にそっちの趣味はないぞ?」

「ふざけるな!俺はゲイじゃない!」あ・・違ったのか。

良かった。

内心ホッとしていると奴は俺の胸ぐらを掴み、顔を寄せてくる。

・・さっきの話しは嘘だったのか!?


「二度と綾瀬に近づくな!」

「・・・・へ?」

「だから二度と綾瀬に近づくなと言ってんだよ!」


今になってようやく理解できた事。

コイツは綾瀬に気があり、俺を脅していると言うこと。

さらにコイツはゲイではないと言うことだ。

・・・いつまでゲイを引っ張ってんだろう俺は?


「お前・・ウザイな。」



あ、言っちゃった。

案の定、猿顔の生徒は顔を真っ赤にして睨んでいた。

やべぇ・・・変顔にしか見えない。


「ぷっ・・猿みてぇだぞ。」


あ〜俺ってば正直。

えぇ、もちろん猿はキレていますとも。


「て、てめぇー!」


近距離で殴りかかってきた猿。

それに対して俺は至って冷静だ。


「ほい。」

「な!?」


軽々と避けた俺に、猿は驚愕している。

その隙に俺の胸ぐらを掴んでいる手を振り払い、左足でローキックをする。


「痛っ!?」


痛そうな猿顔で体勢を崩す猿。

すかさず、鳩尾に渾身の右ストレートをめり込ませる。


「がふ!!げほ・・げほ・・。」

「次から相手を見て喧嘩しな。」


未だに咳き込む猿顔に捨て台詞を吐いて教室に戻った。

そして、また騒がしくなる教室。


「茜君!大丈夫だった!?」

「お、おう。」


走って近付いてきた七海にちょっと驚いた。

しかも七海はウルウルな涙目で俺を見てくる。

ったく。

そんな顔するなよな・・。

七海の頭に手をポンと乗せて、撫でる。


《あぁぁあぁあ!!》


あー!外野(主に男)が五月蠅い!!


「心配しなくて大丈夫だったから。」

「うぅ・・。本当に怪我とかない?」

「大丈夫だって言ったろ。」

「うん・・。あとね、はは恥ずかしい・・かな?」


少しだけ頬を紅くしていたので直ぐに手を離した。


「ね?だから茜なら大丈夫だって言ったでしょ?」


何処からともなく姿を見せた総司。

心配している素振りも見せない。

ま、昔からの付き合いだから分かるか。

俺が今まで一度しか喧嘩で負けたことがない事は。


「朝からお疲れ様だね。」

「あぁ。と言うことだ。」

「と言うことだね。」


大事な部分を跳び抜かした会話に七海は可愛らしく首を傾げている。

そんな七海をよそに教室をでる。


「あ、七海。」


下の名前で呼んだからだろうか?

またまた教室が騒がしくなった。

お前等シツコいよ?


「後で上林理沙(かんばやしりさ)って奴に俺が宜しくと言っていたって伝えといて。」

「べつ良いけど・・何処に行くの?」

「俺らの秘密基地さ。」

「・・・え?」


廊下から総司が呼んでいたので急いで教室を出た。

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