表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

狐火灯莉は作らない NO.1



動かずとも必然的に汗ばまざるおえないほどの強い日差し。気づけば今は、夏休み直前、7月。

まだ学年が変わり、新しいクラスになってから間もないと思っていたのだが、あっという間に一学期が終わろうとしている。

先週にまるで、永遠に続く地獄かと思った期末試験が終わり、勉強から解放された我々、生徒一同は、一応学校に来て授業は受けているものの、後は夏休みを待つばかり、といったところである。

六時限目の体育、サウナのような体育館でバスケットボールをこなした後、ガンガンに冷房をつけておいた教室で着替え、帰宅の準備を進めながら、友人との談笑に花を咲かす。

「ねえねぇ、コンさんコンさん、彼氏くんと最近どうなのさ。進展とかないわけ??」

毎日のようにされているこの質問。

いい加減うんざりしてくるぜ。

進展などあるものか。

あるわけがない。

二年間以上も付き合っていれば行くとこまで行くし、高校生同士の恋愛なんて、そうたいした事が起きるわけでもない。そんな、週刊少年ジャンプのように毎週毎週、熱い展開が訪れると思ったら大間違いである。なんだ、ウチが妊娠でもすればそれは進展と呼べるのか。

いや、高校生での妊娠は、それではもはや後退だろう。

「あ、コン。スマホに通知きてるぞー。」

「なになに、ウワサをすれば、ウワサの彼氏くんか。見せてみ見せてみ。」

「あ、勝手に取るな。勝手に触るな。勝手に見るな。」

全く、なんて非常識なやつらなんだ。

人のスマホを、はたまた、人の彼氏とのトークを勝手に見ようなど常識のある人間からしたら考えられんぞ。

考えが及ばんぞ。

彼女達はコンの必死で決死な反抗を振り切り、スマホのロック画面に表示されているメッセージの内容を見た。

ーーーふと、ふざけていた周りの友人の表情が曇る。

そうして、油断した隙に愛しのスマホを取り返し、一体、誰からどんな連絡が来ていたのかと目を通す。



「差出人:彼氏母>

宛先:コン

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

件名:

14:47

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

学校を終えたら、急いで錦野総合病院に来てください
















それは、彼の母からであった。

一応、中学から二年以上の付き合いともなると両家公認、家族ぐるみの仲にはなっていた。

そんな、仲の良い彼の母からのメール。

いつもの事なら、たくさんの絵文字、顔文字をふんだんに使った、若く見せようと言う魂胆が見え見え丸見えな明るいメールのはずなのに、今来たメールは、どこか、そんな余裕が感じられない素っ気ないものになっていた。

事態はそんなに深刻なのか。

おそらく、彼氏の身に何か問題が起きたのだろう。

どんな大怪我をしたのか。

骨折かな、それとも体育で熱中症。

当然のことながら、とても心配になってくる。

そりゃ、曲がりなりにも大切な彼氏だし。

「ごめん、ちょい急ぎの用事ができたから。お先に帰るね。また明日。」

コンを見送るそれぞれの笑顔は引きつっていた。明るく笑えるはずなどなかった。何せ、不可抗力はいえ、コンに訪れた、確信はないがおそらく不幸の知らせであろうそのメールを見てしまっていたのだから。

「彼氏くん、大事無いといいね……。」

ポツリと吐いたそれは、既に教室を駆けて出て行ったコンには届かなかった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ