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「ベール? ベールってあの、プントだかなんだかを計算するっていう、あれ?」
白砂の大げさな宣言にも、表情ひとつ変えないザクロ。
ザクロと話をする人間は誰でも、多少なりとも、自分の話術に対しての自信を喪失することになる。白砂も、その例外ではない。
「ザクロさん、もっと驚きましょうよー。私、張り合いってものがないですよー」
「別になくても困らないだろ。そんなことよりも、ベールってやつは、現世のやつ、誰か一人を担当するんだろ? おれの担当は誰なんだ?」
「お、お、お、ザクロさん、記憶力いいですねー。それとも、私の説明の仕方がよかったからかな?」
白砂は首を傾けて、お得意の微笑みを浮かべる。恐らく、ザクロが自分の説明を覚えていてくれたことが嬉しかったのだろう。
「基本的に、ベールの担当が途中で代わるということはないんですが、今回は特別で、ザクロさんには、あるベールのピンチヒッターということで、その方が最近まで担当していた人を、引き継いでもらいます。まあ、ちょっと特殊なケースですけど、緊張せずに、リラックスしていきましょう」
「別に緊張とかはしてないけど。で、いつからその仕事は始まるんだ?」
本当に緊張などしておらず、あまり興味のないザクロではあったが、一応は気になることを聞いてみた。
「ああ、それはもちろん、今からですよ」
「え?」
さすがのザクロも、これには少し驚いた。まだこの世界にきてから数時間しか経っていないので、いきなり仕事を始めることになるとは思っていなかったのだ。
「あ、驚いた! ザクロさん、今、びっくりしたでしょー! ようやく、感情ってものを見してくれましたね。白砂は嬉しいのです」
そう言って、涙をぬぐう仕草をする白砂。
ザクロは、また白砂から目をそむけて、窓の方を向いてしまった。
「まあ、おれとしては、別に今からでも問題ないけど。仕事のやり方とか全然知らないが、大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。私が、ちゃんと説明してあげますから。ザクロさんは、どーん、と構えといてください」
白砂が説明するということに対して不安がないわけではないザクロだったが、ここは一応、彼女のことを信頼することにした。
「それじゃあ、さっそくムンドへ出向くとしましょうか。思い立ったが吉日って言いますしね」
「それ、いまは使う場面じゃなくないか?」
こうしてザクロは、自分のことを可愛いと自称する少女と二人、再び見慣れた世界へと戻ることとなった。




