プロローグ2
彼は色々なことに対して興味が持てなかった。
学校のテストの点だとか、ファッションだとか、友情だとか、スポーツだとか。
とにかく、色々なことがどうでもよかった。
なんとなく、高校までの学生生活を終え、そして、就職したくないという理由から大学に進学した。幸いにも、彼の両親は経済的にある程度の余裕があった。そのため、大学に行きたいという彼の申し出に対して反対する理由もなかった。むしろ、このご時世である。大学ぐらいは出ていてほしいという思いがあった。
そうして大学に入ったはいいが、やはり大学での講義内容にも関心が持てなかった。
いったい、いつからこうなったのか。時折、彼は考える。
たしか、小さい頃は世界中のあらゆるものに興味があったような気がする。
何故、この目は視えるのだろう。
何故、この色を赤色と呼ぶのだろう。
何故、住む場所によって話す言葉が違うのだろう。
何故、チョコレートはこんなに美味しいのだろう。
何故、何故、何故、何故……。
この世界には何故がたくさんある。いつかは、それを全て理解したい。でも、自分にできるのだろうか。
そんな悩みを持っていたような気もする。否、確実に持っていた。
しかし、今はそんなことはどうでもよくなった。
もはや、そこらじゅうにある「何故」に興味はない。ただなんとなく、大学に行き、人と話し、バイトに行き、飯を食べ、眠る。惰性で生きているだけだ。
彼は、そんなふうに考えるようになっていた。
そんな彼だったが、不思議と自殺をしようと考えたことは一度もなかった。
だが、もし、目の前に通り魔が現れ、ナイフを持って自分に向かってきたらどうするだろう?
おそらくは、特に抵抗することも、向かってくるナイフを避けようとすることもなく、ナイフの刃が自らの体に侵入してくることを許すだろう。
その結果、死ぬことになったとしても、どうということはない。
痛いのは少し嫌だが、それもまあいいだろう。
そんな考えだった。
そういうわけで、大学に入学してから三ヶ月後の、ある暑い日の夜。バイトからの帰り道、彼は通り魔にあい、そして、死んだのだった。




