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3. 森は果てしなく広い

「し、しんどい……」


 ぜいぜいと喘鳴をこぼしながら、和希はよろよろと進んでいた。

 せっかく作り上げた魔術の杖が、すでに老人の杖のごとく使われている。というか、杖がないと足をすすめられない。


 あのあと、どっちに進んでいいかわからなかった和希は、とりあえず南と思しき方向へと向かった。

 だいたい歴史上、「南は肥沃な大地」みたいな感じでよく戦争のターゲットになっている。

 つまり、どうせ進むのなら南に行った方が安心なんじゃない? と思ったわけだ。決して寒さが苦手だからという理由で決めたわけではない。


 しかし、この森、とにかく深い。

 道らしきものはなにひとつなく、当然人間の気配など欠片も感じられない。


「まあ、肉食獣とかが出ないだけいいってことかなぁ……。だいたい、小説の中だと、トリップした直後に魔物に襲われたりするもんねー。これまで動物なんて殺したこともない現代人が初めてぶつかる壁! みたいな感じで」


 皆さんはフラグという言葉をご存じだろうか。

 もちろん、ネット小説を読みあさって和希は知っている。

 ある条件をクリアすると、特定のシチュエーションが起こったりするもの。

 たとえば、「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」とかいうと、そのキャラが死んでしまう、とかいうお約束のやつである。


「なーんて話してたら、魔物が現れたりね。ハハッ……はあ!?」


 こうして和希はフラグを立てたのだった。

 目の前の大きな木の陰から音もなく現れたのは体長5メートルはあるであろう、巨大な鬼。

 二足歩行をしており、手にはぶっとい丸太を持っていた。

 口元からは大きな二本の牙が飛び出しており、さらには涎が滝のように流れている。


「マジで……!?  いや、こういう時のお約束はたいていゴブリンなんですが」


 和希から乾いた声がこぼれる。

 そんな彼女の心情などまったく無視して、鬼が一歩踏み出した。一歩がものすごく大きい。一気に5メートルは詰めてきた。


「…………ぎゃーーーーーーー!!」


 くるりと背を向けて、全力疾走である。

 が、後ろからすぐにずしんっ、ずしんっと地響きのようなものが聞こえてくる。明らかに追いかけられている。テンポは遅いが、歩幅を考えるとすぐに追いつかれるだろう。


「どどど、どうしよう! どーしよー!」


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