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第九話

 子連れの竜人が目の前にいる。目の前といっても少し距離があるが。

 しかし、なぜフェイクスが小さな子どもを連れているのだろうか。暗くてハッキリとは分からないが、あれは人の子だ。この町に来てまだ一度も人の姿は見ていないし、てっきり竜人しかいないのかと思っていたが、どうやら違うらしい。

 その事も含めてフェイクスには訊きたいことが幾つかある。今のところこちらには気付いていないようなので、彼らの元へ向かうとしよう。


 それにしても彼らはこんな場所で何をしているのだろう? 何か話をしているわけでも無さそうだが、まさか、あいつの子どもとか言うオチなのだろうか。それは無いよな。そうであった場合、どうも複雑そうな背景が見え隠れするようになって近寄り難い雰囲気が出来るため、こちらとしては無い方が嬉しい。

 と、言うわけで、今から声を掛けてみよう。ま、別に大丈夫だろうと俺の勘も言っているわけだしね。


 出来るだけ足音を抑えつつ慎重に前へと進む。背後から行けば先ず気付かれまい。強烈なバックスタブをお見舞いしてやるぜ! というのは冗談だ。

 フェイクスの肩を軽く叩く。

 「おい、こんな所でなにをしている。」と、言ったのは俺。

 「やあ、アステル。おやすみ。」と、言ったのはフェイクス……ではなく前の方にいるはずの子どもだ。何故「おやすみ」なのか。どうでも良いが、髪の長さからして女だ。

 と、考えていると、体が痺れた。直ぐにそれが頭まで回り立っていられなくなった俺は地面に倒れる。意識も風前の灯火といった有様で、もう目を開けているのもやっとだ。また子どもがなにか言ったようだが聞き取れない。すると頭に痛みが走り、視界が混濁して、終いには真っ白になった。



 今起きたところだ。今のところ身体に異常は見当たらない。周りを見る限り室内の様ではあるが、寒い。外よりも寒い。そして、裸は一段と寒いので堪らない。

 この状況を把握しておきたいものの、何せ情報が少ない。特に視界からの情報が少ないというのは致命的だ。部屋の広さはおよそ四畳半で窓も扉の無い。ただ中心にベッドがひとつ有るだけ。生前の自分の部屋を彷彿させる殺風景だが、俺の部屋には窓も扉もある。凄いだろう?

 まあ、それは置いておくとする。結論から言うと、これは夢だ。勝手に動けるところからすると、明晰夢とか言うやつだと思う。ただ、好き勝手に動けるといっても物理的に厳しい事はさすがに出来ないらしい。ちょうど今壁を破壊出来ないか試みたが、俺のタックル程度ではびくともしない。夢という割には体の感覚もハッキリしていて、痛みも当然のように感じる。そういえばぶつけた右肩に強い違和感を覚えたけど、一体どういうことだろう。

 一応、関節がくっついている事を確認したし、とりあえず、もうやる事が無いという状況だ。夢の中でこれはどうかと思うが、寝るか。


 そそくさと横になると、さっきの子どもがいた。「わっ!」思わず叫ぶ。すると――

 「耳元で大声を出さないでもらいたいんですけど。」

 喋った。てっきりマネキンか何かかと思ってたが違うようだ。眉間に皺を寄せた顔をこちらに向けて話しかけてきた。

 「また会いましたね。」

 「あれは会った内に入るのか?」

 一瞬視界に入ってすぐ気を失いました。俺はその意味で言ったつもりだった。

 「そういう意味じゃ無いよ。もう少し前に会ったはず。」

 と、言われ、記憶を洗ってみる。あれより前となると、宿の店主と死体と盗賊とフェイクスさんぐらいだと思うが。

 「惜しいところまでいったけど、もっと前。」

 と、言われる。どこが惜しいのか分からないが、突っ込まずに思索する。もっと前か。ふと、ベッドの横に何もせずこちらに背を向けて立っている幼女を見る。こんな子ども近所にいたかなあ、とか考えてみる。出来る限り生前(とは言っても今も生きているが)の事は忘れるように努めているが、仕方が無いので今例外という事にした。だが、そもそも記憶は、主に脳に詰め込まれている筈だから、思い出すというのも可笑しな話かもしれない。そうなると幾ら頑張ろうと思い出せないというのは自明の理、実際に今思い出せないわけで、諦めて、ベッドに腰掛けて足をぷらぷらさせている長髪ロリっ娘に話す。

 「違う。」と言われる。何がだよと言ったが何も応えない。ぷらぷらは飽きたのか、今度は足をくるくると回し始めた。

 何をしようと思い出せないものは思い出せない。もうそれは諦めたし、また暇だ。チビっ子は足を回すのに夢中で、話しかけても無駄だろう。と、なると、寝るしかないと思います。

 そして、今回は無事に横になれた。仰向けになる。すると、本来は天井が有るはずの場所に、何も無いことに気がついた。道理で寒い筈だ。見ると、空も何も無い、ただ黒いだけの空間があった。夢だからなのか、不思議と違和感は感じない。痛みは過剰に感じるのに、こういう部分だけ夢らしく振舞う。そんな事を考えていると、体が重くなってきた。

 横にいるチビっ子が立ち上がって奥に行くのが見えた。その体はすぐに見えなくなったが、音は聞こえる。

 何か重いものを動かす音。そして、チビッ子のものであろう足音がこちらに近づいてくる。戻ってくるのか。

 予想通り、チビッ子は戻ってきた。ただ、行く前と違うのは、体の横に抱えているモノである。

 それは、チビッ子の身の丈よりも長く、傍から見るとかなり不釣合いに思える。しかしチビッ子は重そうな表情ひとつ浮かべずに、むしろ余裕すら漂わせてこちらに向かってくる。

 目が合った。チビッ子が微笑む。つられてこちらも表情を緩ませるが、背中からは嫌な汗が出そうだ。


 「やあ。」と、俺が言う。


 「面倒くさい。」と、彼女が言う。


 全く会話になっていない。ならば――


 「それ、何に使うの?」無視に屈してはならない。


 「自分で起きられないのなら、私が起こす。」

 今度はそう言って、チビッ子は、バレットM82――対物狙撃銃です――を、俺の眉間に突きつける。

いつの間にか二年目突入してました。しかし、まだ導入部という神憑り的な執筆の遅さですので少しテンポ上げましょうか。

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