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第八話丙

 フェイクスがどこかへ行ってしまって30分はたっただろうか。部屋の中は、彼の壊した窓の破片が辺り一面に拡散し、少なくとも人が寝れるような状況では無い。だからこうして起きているのだ。一応、超硬質の鱗のお陰でガラス片ぐらいなら上に寝ても何でもないのだが、何故かすぐに背中がこそばゆくなって堪らない。だからこうして窓の縁に腰掛けている。

 背中の翼に当たる風が心地よい。翼は、いつの間にか身体の一部となっていた。初めから自分の身体に付いていたモノだが――いや、人間だったころは勿論、翼など付いてなどいなかった――思うように扱えなくてもどかしかったし、正直なところ邪魔だった。しかし、この30分で全て変わった。とにかくこの翼を動かせないものかと思い、あれこれ試して30分。多少挙動に不安が残るものの、何とか実用に堪えうるだろう俺の翼が出来上がった。少なくとも暑いときの団扇の代用を任せる事はできるはず。

 率直なところ、身体の一部になったかと言えば疑問が残るのだが、それでも、動かせるようになったことは事実なので、飛ぶための訓練も兼ねて実際に動かしてみよう。


 無理だ。いや、部屋が狭すぎるのだ。どう考えてもこの、人間が普通に宿泊するのがやっとの広さの部屋でこの翼は動かせまい。それこそ取り返しのつかない事になりそうである。

 ならば下に降りる他無い。ということで、窓枠に手を掛ける。身を乗り出す。


「(ガッ)ふぐっ……」


引っ掛かった。おかしい、フェイクスはすんなり(窓を割って)出れたというのに。何かコツがあるのだろうか。それとも体格? どちらにしろ、とりあえず窓は諦めようと思う。

 そうなるともう出口はひとつしかないワケで……正攻法が悪いとは誰も言ってないだろう? ということで、ドアへ向かう。眠い。


「くそっ、抜けない……」


向かえない。眠い。視界のぼやけ具合もそろそろ佳境へ入ろうとしている。もうまぶたなんて閉じてしまえ。

 諦めると途端に睡魔が襲ってきて、体の動きも緩慢になるわ、思考もろくに出来ないわでもう大変。この体勢のまま寝るのは避けたいところだがそろそろ限界だった。身体に力が入らない。もう、意識も朦朧としてきました。あっちとこっちを行ったり来たり……していると、体が抜けた。外側に。重力加速度はどこに行っても同じだな。


「ふぐっ……」


一回転して頭から落ちた。首から変な音が聞こえたが気にしない。と言っても、とてもとても痛いので否でも意識してしまうか。ここは平屋だが何故か高床式で、平屋ではないか。2階建ての一般住宅程度の高さがあるのだが、今ほどここの設計者を呪うことはこの先無いだろう。他の家屋は真面目に地べたに建っているがここだけ何故か高床式。絶対に設計者は捻くれている。

 このまま寝るのもどうかと思うので、立ち上がる。いくら人間よりも強靭な竜人といえど、2階(相当)の高さから(頭から)落ちれば只では済まない。実際に落ちた俺が証明しているのだ。身体に障害が出たりしたら冗談にもならないが、どうやらそれは大丈夫らしい。今度医者に見てもらおうかな。

 上を見ると俺の落ちた窓がある。飛べば届くと思うが、団扇で飛べるはずもない。しかしここは高床式だ。下を潜れば入り口に行くことなどたやすい。早速行くとしよう。


「お、あれは……」


歩き出したその時、見つけた。あれはフェイクスだろう。どうやら子連れのようだ。


恐らくこれで八話は終わりです。分けた意味は特に無いです。

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